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全勝のヘビー級対決ワイルダーとフューリーはドロー 同級は大混戦に!

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
パンチを打ち込むワイルダー(写真:ロイター/アフロ)

 全勝同士のヘビー級対決がついに実現した。KO率98%を誇るWBC王者デオンテイ・ワイルダー(米)と元3団体統一王者タイソン・フューリー(英)のWBC世界ヘビー級タイトルマッチが、12月1日に(日本時間2日)アメリカのロサンゼルスにあるステープルズ・センターで行われた。今回は試合前から両者がトラッシュトークで罵り合いファンの期待を大いに盛り上げていた。ワイルダーは来年に統一王者のアンソニー・ジョシュア(現WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級統一王者)との対戦の交渉が進んでいる。このカードが現在のボクシング界で最も待望されている試合であるだけにこの試合の結果に大きな注目が集まった。

体重が関係ない無差別級の戦い

 ボクシングは階級制に分かれている。ひとつ階級が違うだけで、パンチ力やパワーが大きく変わってくる。しかし、ボクシングで唯一体重が関係しないのが、無差別級のヘビー級だ。ヘビー級は一時期ウクライナ出身のクリチコ兄弟が王座を独占していた。2m近くの体格を活かし、地味だが負けないボクシングを展開し誰もがその牙城を崩せなかった。ボクシングの本場であるアメリカ人にタイトル保持者がいないので、どうしてもヘビー級の盛り上がりに欠けていた。しかし、クリチコ兄弟が引退してヘビー級に新たなスターが出てきた。ロンドンオリンピック金メダリストで現在統一チャンピオンのアンソニー・ジョシュア(英)と、今回試合が行われたWBC王者のワイルダーだ。タイプは違うが、どちらも非常にKO率が高く好戦的でファンの人気も高い。共に無敗でスター候補となり対戦の実現に大きな注目を集めている。しかし、今回のワイルダーの相手もあなどれない。イギリス人のタイソン・フューリーである。フューリーも戦績は26戦26勝(19KO)無敗だ。フューリーは長らくへビー級王者に君臨してきたクリチコを判定で下し、WBAスーパー、IBF、WBOの3団体統一王座を獲得した。しかし、その後にドーピング問題や私生活のトラブルでブランクがあった。ここ最近復帰を果たし、このトップ戦線に加わってきた。現在ヘビー級では無敗の3人が君臨しており、その中の三つ巴の戦いの一つが今回実現した。

ボクシングと階級

 ヘビー級は無差別級のため200ポンド以上(90.72kg~以上)体重制限がない。今回の前日計量ではワイルダーが96.3kgに対してフューリーは116.3kgである。前日の計量で20キロの差がある。無差別級のヘビー級になると、必ずしも重い方が有利とはいえない。体重が重くなればパンチは重くなるがスピードが落ちる。また重い体を動かすためには、その分エネルギーを使う。そのため体重制限がなくても、自分のベストウェイトに仕上げることが望まれる。現在のヘビー級のチャンピオンである、ジョシュアとワイルダーもスピードを活かしたボクシングでヘビー級でありながら、スピーディーなボクシングを展開する。ヘビー級になると体格やパワー重視で技術とスピードが乏しい選手もいるがこの2人は違う。パワー系のワイルダーに対し、技術が高いジョシュア。どちらもKO率が高くスリリングな試合をする。一方今回のワイルダーの対戦相手であるフューリーは一時期体重が170kgもあったようだが、復帰して連勝を重ね今回の試合に向けてシェイプアップしてきた。フューリーは技術力が高い選手でボクシングがうまい。また特徴として、口撃がうまく試合前から相手をののしってその場を盛り上げる。今回もお互いに会見の時からKO宣言が飛び出したり、あわや乱闘に発展する騒動となるなど試合前から注目を集めていた。事前のオッズでは3-2でワイルダーが有利だったが、オッズも接近しており、どちらが勝つか読めない好ファイトが期待されていた。

パワーのワイルダーか巧みな試合運びのフューリーか

 試合の方は激闘となった。前半はワイルダーの攻勢が目立ちペースを握っていった。しかし、途中からフューリーのジャブが活きてきてワイルダーの空振りが目立つ。フューリーがポイントを挽回していって中盤からペースを握り試合が進んでいった。しかし、フューリーにペースが傾きかけてきた9ラウンドにワイルダーの右が炸裂。ワイルダーが得意の右でダウンを奪う。チャンスとばかりにワイルダーも強打を振り回すが、フューリーが巧みなボディワークでパンチを殺していく。次のラウンドではワイルダーが少し打ち疲れ、フューリーがまたペースを挽回していった。そして試合は最終ラウンドへ。それまでのポイントも非常に競っていたので、このラウンドがキーポイントとなった。ラウンド中盤でワイルダーの右と返しの左フックが決まりフューリーがダウン。これはもう決まったといえるベストショットだった。しかしフューリーは立ってきて、その後に見せ場も作った。ダウンを奪ったのはワイルダーだが、後半の試合運びはフューリーがペースを握っていて非常に微妙なラウンドとなった。判定は三者三様のドロー。(115-111ワイルダー、114-110フューリー、113-113ドロー)非常に勝敗をつけるのが難しいジャッジ泣かせの試合となった。

混戦となったヘビー級戦線

 今回の試合の結果次第で統一王者のジョシュアとワイルダーとのヘビー級4団体統一戦の実現が期待されていた。そのためファンにはもどかしい結果となった。しかし、ボクシングはライバルがいるからこそ盛り上がる。今回の試合ではフューリーが予想以上に頑張りを見せ評価を上げた試合だった。この三者の対決がますますヘビー級を盛り上げていくだろう。モハメド・アリ、マイク・タイソンしかり最重量級のヘビー級の人気は高い。ヘビー級が盛り上がれば、ボクシング界全体にも注目が集まる。ジョシュアはイギリスで非常に人気が高く10万人近くの会場を満員にする集客力がある。ジョシュアとワイルダーは来年の4月に対戦するとの報道もあるが、今回の試合結果がどのように作用するかに注目だ。両者がベストの時に試合が実現することを期待したい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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