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トランプ大統領復活ならヘンリー王子は米国追放の恐れも どうするメーガン夫人

木村正人在英国際ジャーナリスト
大統領復活の可能性が強まるドナルド・トランプ氏(写真:ロイター/アフロ)

■回想録で薬物使用の過去を告白

[ロンドン発]11月の米大統領選で返り咲く可能性が強まっているドナルド・トランプ前米大統領が英大衆紙デーリー・エクスプレス(2月25日付)の単独インタビューに応じ、元女優の妻メーガン夫人ら家族とともに英王室を離脱し、今は米国で暮らすヘンリー公爵(王位継承順位5位)について入国の際、薬物使用歴を隠していたとして国外追放をちらつかせた。

ヘンリー公爵は自らの回想録『スペア』の中でコカイン、マリファナ、マジックマッシュルームなど過去の薬物使用について率直に吐露している。米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団は米国土安全保障省を相手取り、ヘンリー公爵の入国を認める際、ルール違反がなかったかどうかを明らかにするためビザ申請書の公開を求める訴訟を起こしている。

入国資格が問われているヘンリー公爵(右)
入国資格が問われているヘンリー公爵(右)写真:REX/アフロ

過去の薬物使用が本当なら、ヘンリー公爵は米国への入国資格を取り消される可能性がある。ヘリテージ財団がヘンリー公爵のビザ申請書を公開することは「計り知れない公共の利益だ」と訴えた裁判で、国土安全保障省側の弁護士は2月23日、法廷で「回想録はヘンリー公爵が薬物を使用した証拠ではなく、本を売るために脚色された可能性がある」と弁解した。

■カテゴリーAの外交ビザで入国か

米大統領選では不法移民をどう取り締まるかが大きな争点になっている。薬物使用を回想録で告白したヘンリー公爵の入国を黙認すれば、移民が入国の際、薬物使用歴をビザ申請書に記入しないことを助長し、不法移民を増やしてしまう。ヘリテージ財団がこの問題に固執するのは大統領選に向けて移民問題を改めてクローズアップする狙いがあるとみられる。

ヘンリー公爵が米国に入国した方法は(1)薬物使用についてビザ申請書に「ない」とウソを記入(2)外交ビザを使用(3)手続きの免除を申請―の3つが考えられる。国土安全保障省側の弁護士は「ヘンリー公爵はまだ英王室のメンバーで称号を保持しており、外交上の役割も残っている」としてカテゴリーAの外交ビザでの入国をほのめかした。

英王室の公務を放棄したヘンリー公爵が祖国の公務で渡米する場合に発給されるカテゴリーAの外交ビザで入国したとしたら、ヘリテージ財団側の弁護士は「不合理でとんでもないことだ」と指摘する。2014年、英国の女性セレブシェフ、ナイジェラ・ローソンさんは過去にコカインとマリファナを使用したことがあったため一時、米国への渡航を禁止された。

■トランプ氏「私はヘンリー公爵を守らない」

トランプ氏はデーリー・エクスプレス紙のインタビューに、再選されれば「私はヘンリー公爵を守らない。彼は女王を裏切った。許しがたいことだ。私が大統領に復活すれば(バイデン氏のように)手を貸さない。ヘンリー公爵がしたことに対して、バイデン政権はあまりにも寛大だと思う」と突き放した。

保守系の英紙デーリー・テレグラフ(2月26日付電子版)は「トランプ大統領がヘンリー公爵のアメリカンドリームを“アメリカンナイトメア(悪夢)”に変える恐れ」「ヘンリー公爵夫妻がホワイトハウスに戻る可能性のある人物を無視することは米カリフォルニアでの生活を突然、終わらせることになるかもしれない」と報じている。

ヘンリー公爵は米テレビ局に「優先順位は高くないが、米国の市民権を取得する考えが頭をよぎったことはある」と語っている。16年、メーガン夫人は「トランプ大統領が誕生すればカナダに留まるかもしれない」と語っている。その後、メーガン夫人はヘンリー公爵と出会い、トランプ氏はヒラリー・クリントン民主党候補を破り、大統領選に勝利した。

■ヘンリー公爵国外追放なら英米特別関係にヒビ

トランプ氏はすでにヘンリー公爵夫妻の警護費用は負担しないと述べている。ヘンリー公爵夫妻は代理人を通じ、米国に負担を求めるつもりはないと表明している。トランプ氏が大統領に返り咲き、ヘンリー公爵が国外追放の憂き目にあえば第二次大戦以来の英米特別関係に大きなヒビが入る。

アフリカ系移民の血を引くリベラル派のメーガン夫人が大統領選で人種差別・女性差別的なトランプ氏を支持するとは考えにくい。ヘンリー公爵もスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんになりすましたコメディアンのいたずら電話に引っかかり、石炭産業を支援するトランプ氏は「血で手を染めた」と発言したことがある。

トランプ氏は大統領選に勝つためなら、ヘンリー公爵の入国資格問題をフル活用する可能性はある。しかし故エリザベス女王を敬愛するトランプ氏が実際にヘンリー公爵を国外追放し、英王室に弓を引いたり、英国との外交関係を無用に悪化させたりすることは想像しにくい。ただメーガン夫人とヘンリー公爵が自主的にカナダに引っ越す選択肢はあると筆者はみる。

それともカリフォルニアでの家族の生活を守るためメーガン夫人はトランプ大統領阻止に動くのか。

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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