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キャサリン妃の病院スタッフがカルテに不正アクセスか 33億円罰金も

木村正人在英国際ジャーナリスト
キャサリン妃のデータ漏洩疑惑が浮上したロンドン・クリニック(写真:ロイター/アフロ)

■データ漏洩の疑いでスタッフ3人を調査

[ロンドン発]英大衆紙デーリー・ミラー(3月19日付)は、1月の腹部手術から公務を離れているキャサリン英皇太子妃(42)について入院していたロンドン・クリニックのスタッフが個人的な医療記録に不正アクセスしようとした疑いでクリニックが調査を始めたと報じた。

デーリー・ミラー紙によると、少なくともスタッフ1人がキャサリン妃のカルテを閲覧しようとした。別の英大衆紙デーリー・メール(3月21日付)は3人がデータ漏洩の疑いで調査を受け、不正アクセスが証明されれば停職処分や刑事処分を受ける可能性があるという。

キャサリン妃は1月16日に腹部手術のため入院、14日後に退院したが、データ漏洩疑惑はその後に起きた。キャサリン妃は昨年のクリスマス以降、公の場から姿を消したため、ソーシャルメディア上ではキャサリン妃の健康状態を巡るひどい陰謀論が渦巻いていた。

■データ保護機関への報告は4日以上遅れる

英国データ保護機関(ICO)への報告は本来なら72時間以内に行わなければならないが、1週間以上経過していた。ICOは3月20日「違反報告を受け、提供された情報を評価している」ことを認めた。クリニックは1700万ポンド(約32億8200万円)の罰金を科せられる恐れもある。

ロンドン・クリニックはロイヤルファミリーや元大統領、元首相、セレブ御用達で有名。チャールズ国王もがん治療を受けているため、ロンドン警視庁は政府から捜査を要請されている。データ漏洩疑惑に王室、政府、医療関係者に衝撃が走った。

クリニック関係者の1人はデーリー・ミラー紙に「クリニック上層部はこの事件が発覚した直後にケンジントン宮殿に連絡し、完全な調査が行われることを約束した。信頼と倫理を揺るがす疑惑に医療スタッフ全員が大きなショックを受けている」と話している。

■データ管理者の同意なしに医療記録にアクセスするのは犯罪

NHS(国民保健サービス)や民間医療機関のスタッフが組織のデータ管理者の同意なしに患者の医療記録にアクセスするのは犯罪行為だ。ロンドン・クリニックのアル・ラッセル最高経営責任者(CEO)は英メディアへの声明でプライバシー侵害について徹底的に調査することを誓った。

「スタッフ全員が患者の守秘義務に関して個人的・専門的・倫理的・法的な義務を痛感している。日々信頼を寄せてくださるすべての患者に対して卓越したケアと思慮深さを提供することを目標としていることに誇りを持っている」

「当院では患者情報の管理を監視するシステムを導入しており、違反があった場合には適切な調査、規制、懲戒処分がとられる。当院には患者や同僚の信頼を故意に裏切るような者の居場所はない」とラッセル氏は断言した。

■「患者の世話をしていない限りカルテを見るべきではない」

一方、英保健省のマリア・コールフィールド政務次官はラジオ放送LBCに「患者の世話をしていない限り、あるいは患者の同意がない限り、患者のカルテを見るべきではない」と述べ、スタッフが起訴される可能性についても言及した。

キャサリン妃は陰謀論を一掃するためジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子の3人と一緒に写った家族写真を「母の日」の3月10日に公開したが、写真が「加工」されていることを理由に6つの通信社が配信を撤回する騒ぎに発展した。

キャサリン妃はその後、ウィリアム皇太子とともに公の場に姿を現し、健康状態への疑念払拭に努めた。しかしセンシティブな健康問題とは言え、世界的に注目度の高い王族の「情報の空白」は逆に陰謀論や騒動を引き起こすことを改めて浮き彫りにしている。

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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