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「脱走兵」ヘンリー公爵 チャールズ国王と関係修復図るもウィリアム皇太子との不和は氷河期

木村正人在英国際ジャーナリスト
世界メンタルヘルスデーのイベントに出席するヘンリー公爵とメーガン夫人(写真:ロイター/アフロ)

■『エンドゲーム 王室の生き残りをかけた闘争の内幕』の波紋

[ロンドン発]共著『自由を求めて』で英王位継承順位5位のヘンリー公爵とメーガン夫人の王室離脱劇を描いた王室ジャーナリスト、オミッド・スコビー氏が新著『エンドゲーム 王室の生き残りをかけた闘争の内幕』を出版することになり、新たな波紋を広げている。

英国メディアではスコビー氏はヘンリー公爵とメーガン夫人の「応援団長」「代弁者」とのレッテルを貼られている。

エンドゲームとは駒が数個しか残っていないチェスの終盤戦を指し、物事の「終局」や「大詰め」を意味する。スコビー氏の新著でメーガン夫人が2021年に米人気司会者オプラ・ウィンフリー氏のインタビューで告発した王室の人種差別疑惑が再燃する恐れもある。

英大衆紙サンやデーリー・メールによると、スコビー氏の新著では、メーガン夫人がチャールズ国王に長男アーチーくん(4歳、同6位)の「肌の色」について語った2人を名指しして手紙で伝えたことが明らかにされている。

■「人種差別」ではなく「無意識の偏見」と軌道修正

アーチーくんの肌の色が「どれぐらい黒くなるのか」と口にした2人の名前をスコビー氏は知っているが「英国の法律により、彼らが誰であるか明かすことができない」と説明している。

王室の人種差別疑惑について、ヘンリー公爵は今年1月、回顧録『スペア』を出版した際、「人種差別」ではなく「無意識の偏見」と軌道修正している。スコビー氏の新著によると、メーガン夫人は王室内の「無意識の偏見と無知」に取り組む必要があると考えている。

チャールズ国王はメーガン夫人に返事を書き、「悪意」はなく「さりげない偏見」が関与していることを伝えようとした。「恨み」は残っていないものの、多くの懸念が未解決のままだという。

メーガン夫人が5月6日に行われたチャールズ国王の戴冠式に出席しないことを決めたのは「王室のソープオペラに再び飛び込む」ことを拒否したためだという。

公務を拒否したヘンリー公爵はウィンザーのフロッグモア・コテージを追い出された際、チャールズ国王に「もう孫に会いたくないのか」と詰め寄ったという。

■国王の誕生日にアーチーとリリベットのビデオメッセージ

フランスの雑誌パリ・マッチによると、『スペア』が出版された後、ヘンリー公爵を一切信用するなという伝達が王族に流されたこともを明らかにされている。

ヘンリー公爵とメーガン夫人はチャールズ国王の75歳の誕生日にアーチーくんとリリベットちゃん(2歳)のビデオメッセージを送ったとされる。スコビー氏の新著からもヘンリー公爵とメーガン夫人がチャールズ国王との関係を修復しようとしていることがうかがえる。

スコビー氏はX(旧ツイッター)にこう投稿した。「『エンドゲーム』は英国王室の現状を描いている。ヘンリー公爵とメーガン夫人の本でもないし、私は『メーガン夫人の友人』でもない。ヘンリー公爵夫妻は関係ないし、彼らの物語は12日間で読めるもっと大きな物語のほんの一部だ」

「私の作品が好きでも嫌いでも、私がお願いしたいのは『エンドゲーム』の中身に関する報道を読むのであれば、著書も読んでほしいということだ。不正確で悪い翻訳、文脈のない断片、リークは完全で正確なストーリーを伝えるものではない」

■兄弟の傷と怒りは無関心へと固まってしまった

米雑誌ピープルに対し、スコビー氏は「ウィリアム皇太子とヘンリー公爵の間にある傷と怒りは今や、より冷たく不動のもの、つまり無関心へと固まってしまった」と語っている。

おそらく歴史のどの時点よりも王室は自らの内部分裂を無視しているといい、「ウィリアム皇太子は君主制への忠誠を優先させ、ヘンリー公爵を貶めるために英国メディアと水面下で協力しさえしている」とスコビー氏は指摘する。

「ヘンリー公爵は王室にとって脅威だ。組織の枠にとらわれず自分の考えを主張する自由な精神がヘンリー公爵を王室の敵にしてしまった」

ウィリアム皇太子はヘンリー公爵を「脱走兵」とみなす。しかし、旧植民地国で大英帝国の帝国主義に対する批判が噴出する中、数十年後に守るべき王冠は残っているのだろうか。

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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