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ヘンリー公爵が戴冠式出席の条件として王室に突き付けた7カ条の要求とは

木村正人在英国際ジャーナリスト
ヘンリー公爵が戴冠式出席の条件として突き付けた7カ条の要求とは(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

[ロンドン発]メーガン夫人とアーチー王子(英王位継承順位6位)、リリベット王女(同7位)は米国に残り、ヘンリー公爵(同5位)だけが出席することになったチャールズ国王の戴冠式(5月6日)。ヘンリー公爵は出席の条件として7カ条の要求を突き付けたものの、満たされたのは今のところ3つだけという。英大衆紙デーリー・ミラーがまとめている。

ヘンリー公爵は回想録『スペア』発売を間近に控えた今年1月、英ITVのインタビューで父親の戴冠式に出席するかと尋ねられ「今からその時までにはいろいろなことが起こりうる。でもドアはいつでも開いている。ボールは彼らのコートにある。話し合うべきことはたくさんあるし、彼らが喜んで座って話してくれることを本当に願っている」と感情的に答えた。

「まだ君主制を信じているか」と質問されたヘンリー公爵は「イエス」と頷いたものの、「その未来に一役買うか」と続けて尋ねられると「分からない」と言葉を濁した。将来の国王である兄ウィリアム皇太子に万一の事が起きた時の「スペア(控え)」として生きる葛藤に苛まれるヘンリー公爵が王室に突き付けた「7カ条の要求」とはいったい何だったのか。

(1)チャールズ国王との対話 イエス

ヘンリー公爵は戴冠式出席を承諾する前にチャールズ国王とウィリアム皇太子と直接会うことを望んでいた。ヘンリー公爵はチャールズ国王と膝を交えて話し、戴冠式に出席して「父へのサポート」を示したいと考えていると報じられている。英大衆紙サンによると「ヘンリー公爵、チャールズ国王の双方に修復の意志と希望があった」という。

ウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃の間にジョージ王子(王位継承順位2位)、シャーロット王女(同3位)、ルイ王子(同4位)というお世継ぎ3人が生まれたため、ヘンリー公爵の「スペア」としての役割はほぼ終了した。ヘンリー公爵としては父チャールズ国王と話し合うことで王室内と家族内での居場所を確保したい狙いがあると筆者はみる。

チャールズ国王は戴冠式で親子の不和やヘンリー公爵とメーガン夫人の王室離脱に改めてスポットライトが当たることだけは避けたかったに違いない。

(2)ウィリアム皇太子との対話 ノー

デーリー・ミラー紙によると、ウィリアム皇太子とヘンリー公爵の仲は最悪で、戴冠式という大事な日に雑音が混じらないよう王室は気を使っている。英大衆紙デイリー・エクスプレスによると、兄弟は離れた席に座らされるため、カメラが2人を直接撮影することはない。気まずい対立を避けるため、ヘンリー公爵は現役王族の数列後ろに配置されたとされる。

ウィリアム皇太子はヘンリー公爵の戴冠式出席を容認したものの、兄弟の「温かい交流」は全く期待できない状況で、ウィリアム皇太子と戴冠式の前に会いたいというヘンリー公爵の要求は拒否された。

(3)毒々しい空気に終止符を打つ ノー

『スペア』やネットフリックス(Netflix)ドキュメントシリーズで一方的な主張を繰り広げ、王室に波風を立てたヘンリー公爵だが、父や兄との間にエリザベス女王のプラチナ・ジュビリー(在位70年記念式典)や葬儀の時と同じような毒々しい空気が流れるようなら、出席するつもりはなかったとされる。

ヘンリー公爵と交流を続けるアンドルー王子の娘、ベアトリス王女とユージェニー王女を除いて王族はヘンリー公爵と「あいさつ以上のことを話す気はない」とされる。

(4)メーガン夫人への招待状 イエス

メーガン夫人は戴冠式の招待状を受け取ったものの、アーチー王子とリリベット王女と一緒に米カリフォルニアの自宅に滞在することを決めた。戴冠式の5月6日がアーチー王子の誕生日と重なったことが出席を見送った主な理由と報じられている。アーチー王子とリリベット王女も招待されているという説と幼いから招待されなかったという説がある。

(5)アーチー王子の誕生日への祝福 不明

英セレブ雑誌「OK!」によると「アーチー王子の誕生日は戴冠式と同じ5月6日に当たり、ヘンリー公爵とメーガン夫人は家族としてそれを認識してもらいたいと考えている。4歳のアーチー王子の誕生日が記念すべき戴冠式に埋没しないよう、何らかのお祝いを当日の計画に組み込むよう求めている」とされる。

ヘンリー公爵とメーガン夫人が、戴冠式が行われる前にアーチー王子に関するメッセージを投稿し、チャールズ国王を出し抜くのではないかという懸念も伝えられる。昨年は王室や他の王族がアーチー王子の誕生日メッセージを投稿したが、今回も同じことが起こるかどうかは分からないという。

(6)警備体制 イエス

ヘンリー公爵は昨年、女王のプラチナ・ジュビリーや葬儀に戻った時と同様、戴冠式のイベントに参加する時はSPの警護がつくと報道されている。しかし王室の公式行事以外の社交活動に参加する場合は私費でボディーガードをつけなければならない。

(7)バッキンガム宮殿のバルコニーへの参加 ノー

チャールズ国王とカミラ王妃はバッキンガム宮殿のバルコニーで市民の祝福に応える。そこに加わるのは公務を担う現役王族に限られる。チャールズ国王は王室の「スリム化」を望んでいる。バルコニーに参加する最終的な15人にはウィリアム皇太子夫妻と3人のお世継ぎが含まれているが、引退王族のヘンリー公爵やアンドルー王子の居場所はない。

そもそもヘンリー公爵がバルコニーへの参加を要求しているというウワサは「的外れだ」(王室関係者)と否定されている。ヘンリー公爵は戴冠式のパレードにも参加しないとみられている。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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