■突然バランスを崩し、飛行甲板に激突

[ロンドン発]沖縄にも配備されている米海兵隊の輸送機MV22オスプレイが2017年8月、オーストラリア沖で米海軍ドック型揚陸艦グリーン・ベイの飛行甲板に衝突する映像が7月2日、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開され、衝撃を広げている。先月8日にも米カリフォルニア州南部の砂漠でMV22オスプレイが墜落し、4人が死亡している。

ユーチューブに投稿された衝撃的な映像をご覧いただきたい。グリーン・ベイにMV22オスプレイが着艦しようと接近し、垂直に降下してきたところ、突然バランスを崩し、左翼をグリーン・ベイの甲板にぶつけて、そのまま海面に激突、同機の乗組員3人が死亡した。グリーン・ベイの乗組員が撮影したとみられる。

英大衆紙デーリー・メールによると、オスプレイは1989年の最初のテスト飛行以来、事故で51人の兵士を死亡させていると報じている。オスプレイには米海兵隊向けのMV22と米空軍向けのCV22がある。

1989年  3月に試作1号機、9月に試作2号機が飛行。

1991年 試作4号機が墜落。

1992年7月 試作5号機がポトマック川に墜落し、5人が死亡。その結果機体が改修される。

2000年4月 米アリゾナ州の地方空港で夜間訓練中に墜落し、搭乗していた海兵隊員19人全員が死亡。最悪の事故となる。

2000年12月 米ノースカロライナ州で訓練中に墜落し、海兵隊員4人が死亡。

2005年12月 米海兵隊に戦闘可能なオスプレイが配備され、2007年に正式に就役。

2010年4月 アフガニスタン南部で墜落し、4人が死亡。

2012年4月 モロッコで墜落し、海兵隊員2人が死亡。

2014年10月 アラビア湾で墜落し1人死亡。

2015年5月 米ハワイで事故が発生し、2人が死亡。

2017年8月 オーストラリアのクイーンズランド州沖でグリーン・ベイの甲板に衝突し、海兵隊員3人が死亡。このうち2人は沖縄・普天間基地に駐屯する第265海兵中型ティルトローター(ローターを機体に対して傾ける)飛行隊に所属していた。

2022年3月 ノルウェーで訓練中に墜落し、4人が死亡。

2022年6月 米カリフォルニア州の砂漠で墜落し、海兵隊員5人が死亡。

■防衛省「機械的・構造的・システム上の欠陥はないと米軍認識」

事故直後にアップされた防衛省ホームページでは、2017年8月のオーストラリア沖での事故についてこう説明されている。日本時間8月5日午後4時10分ごろ、第31海兵機動展開隊に所属するMV22オスプレイが豪クイーンズランド州ショールウォーター・ベイ訓練場の沖合約18マイルを飛行中に事故が発生し、海に落下した。

同機は強襲揚陸艦ボノム・リシャールを発艦し、ドック型輸送揚陸艦グリーン・ベイへの最終進入中に飛行甲板に衝突した。乗員26人中23人は救助されたが、3人は死亡した。事故原因については「調査中」と記されているが、「米軍はMV22オスプレイに安全な飛行を妨げるような機械的、構造的及びシステム上の欠陥はないと認識している」と強調している。

防衛省は「事故は陸上への着陸よりはるかに複雑な、海上を移動中の艦船への着艦の最中に発生した▽米軍が飛行は安全であると結論付けている▽安全な飛行を妨げるような機械的、構造的及びシステム上の欠陥はないと米軍が認識していることなどを踏まえると、引き続き安全に最大限の配慮をした飛行を求めていくことが妥当と考える」と結論付けている。

一方、非営利で独立系の会員制組織USNI(米海軍研究所)ニュースは2018年5月、MV22Bオスプレイが2015年12月、水陸両用輸送ドックの飛行甲板の駐機位置の手前に着地するトラブルがあったと伝えている。乗員は全員、無事避難できた。機体は艦から半分ほど垂れ下がったままの格好で帰港した。

■ローターの周囲で空気が屈折する「ダウンウォッシュ」

これに対し、2017年8月の事故でも同様に、ローターの周囲で空気が屈折する激しい「ダウンウォッシュ」に直面し、飛行甲板の手前でバランスを崩して墜落した。海兵隊が事故原因を調査した結果、機体がダウンウォッシュに直面し、ホバリングを維持するための推力がなかったために墜落したと判断した。

操縦士は推力制御レバーを使用して出力を加え、毎分200~300フィート(60~90メートル)の降下速度を認識して修正しようとしたが、降下を止めることができず、ローターのついたエンジンナセルを動かすなどいくつかの行動を取ったものの、左側のナセルが飛行甲板に激突した。その衝撃でコックピットがつぶれ、機体は海中に落下し、機首から沈んでいった。

米国防総省関係者はUSNIニュースに「機体に過度の重量があった可能性もある」との見方を示している。調査報告書は「複雑で困難な任務だったが、乗組員には任務遂行能力があり、十分な訓練を受けていた」と指摘。ダウンウォッシュを克服して安全に着陸するために必要なパワーを調べ、海上艦への接近時に搭載できる重量の調整を行ったという。

事故機は飛行時間203時間の新しい機体で、まだ大規模な点検を受けるほど古くなかった。防衛省によると、MV22オスプレイはヘリコプターのような垂直離着陸機能と、固定翼機の長所である速さや長い航続距離という両者の利点を持ち合わせた航空機。回転翼を上へ向けた状態ではホバリングが可能となり、前方へ傾けた状態では高速で飛行することができる。

MV22オスプレイになると陸自の大型輸送ヘリコプター、CH47JAと比較して最大速度は約2倍、航続距離、飛行高度は約4倍になる。しかし、オスプレイは開発段階からトラブルが相次ぎ、安全性を懸念する声は根強い。在日米軍はMV22を沖縄に、5機のCV22を横田飛行場に配備している。

■日米合意「オスプレイの訓練活動を沖縄県外に移転」

日米両政府は2016年、沖縄県外での訓練の一層の推進を図り、訓練活動に伴う沖縄の負担を軽減するため、MV22オスプレイなど現在、普天間飛行場に所在する回転翼機及びティルトローター機などの訓練活動を沖縄県外に移転することについて合意している。

陸自にも17機のオスプレイが導入される計画で、2020年7月、木更津駐屯地に暫定配備され、一つ一つの部品を丁寧に点検・整備するとともに日本独自仕様の搭載装備品の機能・特性試験や飛行訓練を重ねるなど、乗組員の技量向上に取り組んでいる。南西方面への隊員や物資の輸送能力強化に向け、2025年までの佐賀空港(佐賀市)への配備を目指している。

ロシア軍のウクライナ侵攻で、中国による台湾侵攻シナリオへの懸念が強まっている。オスプレイは「台湾有事」に不可欠な装備であるだけに徹底した安全性の確認と点検・訓練が求められるのは言うまでもない。

(おわり)