工学、製造、建築を専攻する女子入学生はOECD加盟国で最低

[ロンドン発]経済協力開発機構(OECD)の「図表でみる教育2021年版」が16日発表されました。大学や大学院など日本の高等教育修了率は男性59%に対し女性64%でしたが、高等教育の新規入学者で工学、製造、建築を専攻した女性は16%でOECD加盟国の中で最低でした。伝統的に女性が多い教育分野では新規入学者の71%が女性でした。

OECD加盟国平均では男性より女性の方が学校教育や学校以外での成人教育に参加する傾向がやや強かったにもかかわらず、日本は男性48%、女性35%。学習活動への参加を阻む要因について女性の30%と男性の5%が「家事や育児への責任」を挙げました。日本では子供の頃から男女の役割分担を刷り込む伝統や文化が根強くあります。

OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は16日の記者会見でこう解説しました。「日本でも男女格差解消の進捗はありましたが、他の国の方がさらに速く格差を埋めており、OECD加盟国平均との差は縮まっていません。工学、製造、建築、コンピューターサイエンスに進む女子学生の割合や女性の大学教授の割合でも差は埋まっていません」

「PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の科学的リテラシー分野で日本の女子は非常に良い成績を収めています。日本の女子は科学分野の知識もスキルも持っています。でも、どんな夢や希望を持っているの、将来、何になりたいのと尋ねると15歳の段階ですでに科学に進みたいと答える女の子はとても少なくなっているのが現状です」

「女の子は科学に将来の可能性がたくさんあるとは思っていない」

「日本の女子は科学分野に自分の将来の可能性がたくさんあるとは思っていないのです。学校における学習の問題ではありません。科学や技術の学習という面では上手くいっています。しかし女の子に対して夢を十分に与えていない、科学分野には将来の機会がたくさんあるということを教えていないのが問題なのです」

「例えば子供の頃に女性の科学者に会ったことがない。親も息子には大きくなったらエンジニアになろうねと勧めても、娘にはそうは言わない。将来の夢として女性の科学者やエンジニアを描いていないのです。これは教育の問題ではなく、人々の姿勢、女子に期待するイメージを変えていかなければなりません。子供が小さい頃から環境や文化を変えていく必要があります」

「将来、何になろうかというのは大学を卒業する時に決めるのではありません。実際には小学校の時に子供たちはもう決めているのです。どういったところに関心があるのか、大人になったら何になりたいかということを頭に描いて勉強はこれをやろうと決めるんです。その段階で先生が子供たちにインスピレーションを与えてやらなければいけません」

大人たちが主導したイタリアの改革

「日本が本当に男女格差のパターンを変えたいのであれば、知識を与えるのではなくて、子供が小さい頃から周囲の人々の考え方や姿勢、見ている夢を変えていく必要があります。一つ例を挙げましょう。イタリアは以前、日本と非常に似ていました。コンピューターサイエンスやエンジニアリング、建築分野に女性が入っていく割合が非常に少なかったのです」

「それが今ではすっかり変わりました。なぜかと言えば、まず学校に女性科学者を連れてきて子供たちに見せたのです。科学をやっている親たちも学校に行って科学分野の仕事とはこういうものだと教えました。女性が科学分野で仕事をするということがどういうことか学校の子供たちに見せました」

「この大きな変化は先生たちがイニシアチブを取ってやったのではなく、周りの大人たちが始めたのです。科学分野で仕事をするということがどういうことかを男の子にも女の子にも見せた結果、変化が生まれたのです」

OECD加盟国の大部分で女性よりも男性の方が職業訓練コースに進む傾向が強く見られます。この傾向は日本も同様で、2019年の時点で後期中等教育職業課程修了者の57%が男性(OECD加盟国平均は55%)。

女性は一般的に後期中等教育普通課程を修了する傾向にありますが、日本も例外ではなく、OECD加盟国平均55%に対し、51%を女性が占めました。

日本の高等教育修了率は男性59%、女性64%

高等教育は拡大を続けており、20年の時点で25~34歳人口ではOECD加盟国全体を通して男性よりも女性が高等教育を修了する傾向が強かったそうです。日本の場合、19年時点の25~34歳人口における高等教育修了率は男性59%に対し女性は64%。OECD加盟国平均は男性39%、女性52%でした。

OECD加盟国の大部分で自然科学、技術、工学、数学(STEM)領域を専攻する女性は多くありません。日本は19年時点で、高等教育新規入学者で工学、製造、建築を専攻する者のうち女性が占める割合は16%とOECD加盟国の中で最低でした。教員の男女比について日本は僅差ではあるものの男性教員が女性教員よりも多い唯一の国でした。

19年時点でOECD加盟国平均30%に対し男性教員の割合は52%。最も男性が優勢なのは高等教育段階で全教員の72%を男性が占め、OECD加盟国の中で最も高い割合になりました。これに対して就学前教育の教員の大部分は女性でした。

日本の教育は効率的、それとも投資不足

少子高齢化が加速する日本ではますます社会の保守化が進み、初等から高等教育機関への教育支出の国内総生産(GDP)比はOECD加盟国とパートナー諸国の下位25%に入っています。

16年時点で日本の教育支出の対GDP比は4%で、OECD加盟国平均を0.9%ポイントも下回っており、高等教育以外の教育機関への支出の対GDP比はOECD加盟国平均を下回っていました。

日本で学ぶ外国人学生及び留学生の数は着実に増加し、19年には20万2900人に達しました。これは高等教育に在籍する全学生の5%に当たります。日本の高等教育機関で学ぶ留学生では中国が45%と最も大きな割合を占めています。

19年時点でOECD加盟国で学ぶ留学生の29%が低所得・下位中所得国出身であったのに対し、日本は37%と高くなっていました。それだけ日本の大学は世界に門戸を開いていると言えるでしょう。しかしシュライヒャー教育・スキル局長はこう付け加えました。

「日本から海外に行く大学生の割合はわずか1%に過ぎません。日本にとっても大きな損失であり、日本の教育課程の設計が海外で学んだ部分を評価に入れてくれないという問題の反映でもあり、改善が求められています」

(おわり)