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竹内結子さんも、有名人の自殺相次ぐ 最後のひと押しになりかねない「コロナうつ」対策が急務

木村正人在英国際ジャーナリスト
自殺したとみられる竹内結子さん(中央)(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

8月、日本の自殺者は前年同月比で15.3%増

[ロンドン発]NHK連続テレビ小説「あすか」で主役を務めた俳優の竹内結子さん(40)が9月27日未明、都内の自宅で亡くなっているのが見つかりました。現場の状況から自殺とみられるそうです。

自殺の原因は健康、経済・生活、家族問題などさまざまですが、新型コロナウイルスの大流行で今年8月の自殺者は昨年同月より240人も増えて1849人(15.3%増)になっています。

自殺対策や生活困窮者自立支援制度が整備され、人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)は最悪だった2003年の27人(男性は40人)から昨年は16人(同22.9人)にまで減りました。しかしコロナが日本国内で流行し始めてから有名人の自殺が相次いでいます。

・5月23日未明、ネットフリックスで世界中に配信されたフジテレビの人気リアリティ番組「テラスハウス」に出演中の女子プロレスラー、木村花さん(22)が自身のインスタグラムに「愛してる、楽しく長生きしてね。ごめんね」と猫と一緒の写真を投稿したあと自殺。

・7月18日午後、9月から始まるTBS系連続ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」に出演予定だった俳優の三浦春馬さん(30)が東京都港区の自宅マンションで首をつって自殺しているのが見つかる。

・9月14日午前、NHK大河ドラマ「八重の桜」や今年1月に公開された映画「AI崩壊」にも出演した俳優の芦名星さん(36)が東京都新宿区の自宅マンションで亡くなっているのを親族が発見。自殺とみられる。

・9月20日未明、舞台「ロッキー・ホラー・ショー」などの演技で1986年度の菊田一夫演劇賞を受賞した俳優の藤木孝さん(80)が東京都中野区の自宅で死亡しているのを同居する息子が発見。自殺とみられる。

世界中で増える「コロナうつ」

新型コロナウイルスによる健康上の恐怖、都市封鎖(ロックダウン)や外出制限による孤独感の増幅、コロナ経済危機による失業、賃金カット、賃貸住宅からの強制退去、将来への不安から世界中でメンタルヘルス上の問題、いわゆる「コロナうつ」を訴える人が激増しています。

コロナが自殺への「最後のひと押し」になる恐れは十分にあります。英メンタルヘルス財団は3月中旬以降、今回のパンデミックが人間の精神状態に与える影響をイギリス国内で継続して調査しています。

【3月中旬】都市封鎖(3月23日)前

・成人の62%が不安や当惑を感じている(うち学生は74%、女性は71%)

・30%が恐れを感じ、22%がパニックに陥っている

・58%が体調を崩しており、ストレスの原因は友人や家族と会えないが54~55%、不安定が53%

・労働者の権利が十分守られた雇用関係にあるのは22%

【4月初め】都市封鎖1週間

・成人の24%が孤独を感じている。18~24歳の若者では孤独を感じている人の割合は都市封鎖前の16%から44%にハネ上がる

・体調を崩している人は65%に増加。ストレスの原因は友人や家族と会えないが65%。助けが必要な人を心配しているのは47%

・若者の67%が自分のキャリアや学業が中断するのを恐れている

・20%がストレスに対処するため酒を飲む量が増えた

・精神面の対処法は電話やビデオチャットで家族と話すが63%

【4月下旬】都市封鎖1カ月

・希望を感じているのは24%。都市封鎖前の14%から増える一方で、学生の27%、失業者の26%は絶望感を抱いている

・仕事のある人の33%は仕事を失うことを心配。失業者の45%が十分な食事を確保できるのか恐れている。学生の45%が抱えるメンタルヘルスの状態が悪化するのを懸念

・33%が借金生活に陥るなど自分の経済状態を心配。失業者ではこの数字は52%に上昇

・ストレス解消のため食べ過ぎている人は38%。4月初めの30%から上昇

・対処法は散歩60%、趣味44%

【5月下旬】都市封鎖2カ月

・不安を感じている成人は3月中旬の62%から53%に減少

・不安や恐れを感じているのは長期の健康問題を抱えている人で62%、シングルペアレント(独りで子供を育てる親)で59%、25~34歳で63%、女性で62%

・孤独を感じている人は成人全体で26%。うち若者は47%、シングルペアレントは44%

・絶望感を抱いているのは成人全体で18%。うち若者は30%、25~34歳は28%、シングルペアレントは30%

・パニックに陥った人は3月中旬の22%から13%に減少。失業者では4月初めの18%から24%に上昇

・自分の経済状況を心配している人は3月中旬の42%から29%に減少。失業者では4月初めの47%から56%に上昇。シングルペアレントで経済状況を心配している人は45%、5~11歳の子供を持つ親では40%、25~34歳では41%

・精神面で上手く対処できていないと感じているのは全体で14%。長期の健康問題を抱えている人で30%、シングルペアレントで26%、失業者で26%

【6月中旬】都市封鎖から3カ月

・6月1日に学校を一部再開。6人までなら屋外での会合可能に。同月15日には商業店や動物園、礼拝所が再開され、公共交通機関を利用する際はマスク着用が義務付けられる

・不安や恐れを感じているのは3月中旬の62%から5月下旬には53%に、さらに6月中旬には49%まで下がる

・孤独を感じている人は27%

・パニックに陥っている人は12%

・自殺願望や希死念慮(きしねんりょ)がある人は10%

【7月下旬】

・7月4日にパブ、映画館、レストラン、美容室が再開される。同月10日には ホリデーも解禁

・不安や恐れを感じている人は49%

・孤独を感じている人は21%

・絶望感を抱いている人は17%

・パニックに陥っている人は12%

・自殺願望や希死念慮がある人は10%

自殺リスクを抱えているのは若者、失業者、ひとり親…

メンタルヘルス財団の分析では絶望感、孤独感、自殺願望、希死念慮を経験する可能性が最も高いのは若者、失業者、シングルペアレント、長期の健康問題を抱えている人たちです。

6月の調査で自殺願望や希死念慮を報告した18〜24歳の22%。成人全体(10%)の2倍を上回りました。絶望感を抱いているのは18〜24歳の32%(成人は19%)。

自殺願望や希死念慮を報告した失業者は24%。絶望感を抱いているのは27%です。長期の健康問題を抱えている人では26%(成人全体では14%)がパンデミックのストレスに対処するのが困難と答えました。

自分の経済状況に不安を感じているシングルペアレントは半数以上にのぼり、成人全体の約4分の1を大幅に上回っています。自殺願望や希死念慮がある人も成人全体の倍以上でした。

スペインかぜでもSARSでも自殺激増

イギリスの査読付き医学ジャーナル、QJMインターナショナル・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された論文「新型コロナウイルス・パンデミックが自殺率に与える影響」(米マウントサイナイ医科大学のレオ・シェール教授著)は「複数の証拠はパンデミックが心理的・社会的に深い影響を与えていることを示している」と指摘しています。

1918~19年のスペインかぜでは約5億人が感染し、アメリカの67万5000人を含む5000万人以上が世界中で亡くなりましたが、自殺による死亡数の増加も関係していました。香港での2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の最中、65歳以上の自殺が大幅に増加しました。

今回の新型コロナウイルスでは、中国で回答者1210人のうち53.8%が中程度か重度の心理的影響があり、16.5%が抑うつ症状を、28.8%が不安症状を報告しています。また5万2730人を対象とした全国調査では約35%が心理的苦痛を訴えました。

アメリカでも成人の45%が新型コロナウイルスに対する心配やストレスのためメンタルヘルスに悪影響があったと報告されています。アルコール消費量は市場調査会社ニールセンによると、今年3月の第3週は前年同時期と比較して55%増加。オンライン販売も2.4倍になりました。

電話やビデオでつながりを保とう

シェール教授は次のように対策を掲げています。「コロナ下の自殺対策は一般住民のストレス、不安、恐れ、孤独を減らすことが不可欠です。メンタルヘルスを促進し、苦痛を軽減する従来型のキャンペーンとともにソーシャルメディアによるキャンペーンが必要です」

「電話やビデオでつながりを保ち、関係を維持する一方で、十分な睡眠と健康的な食事をとり、運動するよう人々を励ます必要があります。独り暮らしの人々にコミュニティーの支援を提供し、家族や友人に訪問を促すことが重要です」

「透明性があり、タイムリーで責任あるメディア報道が絶対に必要です。自殺防止のヘルプラインが利用できる必要があります。基本的なメンタルヘルスサービスを外来のプライマリケアに統合することでコロナ危機による有害な心理的影響を最小限に抑えることができます」

「政府と非政府組織(NGO)は可能な限り困っている人々に財政的支援を提供するべきです。これには直接の現金支給、ローン返済の延期や税額控除などが含まれます」

【相談窓口】

・こころの健康相談統一ダイヤル 電話番号0570-064-556

・よりそいホットライン 電話番号0120-279-338

・いのちの電話 電話番号0570-783-556、フリーダイヤル0120-783-556

・チャイルドライン(18歳まで) フリーダイヤル0120-99-7777

・子供のSOSの相談窓口 フリーダイヤル0120-0-78310

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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