香港国家安全法 外交でもテクノロジー戦争でも勝利を収める中国の習近平 西側はインド巻き込み結束を

自身のブログで中国の軍拡に警鐘を鳴らした河野太郎防衛相(写真:つのだよしお/アフロ)

[ロンドン発]河野太郎防衛相が自身のブログ「ごまめの歯ぎしり」で「中国の軍事能力の強化」と題して「中国の公表国防費は速いペースで増加。この30年間で44倍、20年間に11倍。日本の防衛関係費はこの20年間ほぼ横ばいでした」と警鐘を鳴らしています。

河野氏のブログから数字を拾ってみました。

河野氏のブログより筆者作成
河野氏のブログより筆者作成

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の国防費データでこの30年間、日中の防衛・国防費を比較すると下のグラフのようになります。河野氏の指摘はもっともですが、なにを今さらというのが正直な実感です。

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中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報英語版(電子版)は6月30日、2021年に新型の空母艦載機が初飛行すると伝えました。空母艦載機としてJ15に続いて第5世代ステルス戦闘機FC31が開発されていますが、新型艦載機はFC31をベースに開発されたとみられています。

新型艦載機は5年程度の試験を経て実戦配備される見通しです。真の実力は未知数とは言うものの、中国兵器の近代化は急ピッチで進んでいます。日本は米ステルス戦闘機F35頼みになっており、航空優勢を確保できるかどうかが空の守りの大きなカギを握ります。

河野氏は続いて「中国の海上法執行機関に所属する公船が尖閣諸島周辺の領海に初めて侵入したのが2008年。日本政府が尖閣諸島の所有権を取得した12年以降、中国公船の尖閣諸島周辺の活動は著しく活発化するとともに、公船の大型化、武装化が進んだ」と強調しています。

海上保安庁のHPより
海上保安庁のHPより

中国は主権と領土の保全を「核心的利益」と位置付けています。南シナ海や東シナ海の海洋権益を巡っては、中国人民解放軍の艦艇だけでなく、漁船から海洋調査船、石油掘削リグなど海上の構造物、海上執行船、人工島までを操り、権益を拡張するのが中国の手口です。

河野氏のブログより筆者作成
河野氏のブログより筆者作成

中国公船は大型化が進み、「海警2901」など1万トン級の公船2隻を保有。軍艦並みの艦砲を備えています。

中国の香港国家安全維持法施行を見ても、昨年の大規模デモで香港の民主派の若者たちが中国本土からの分離・独立を唱えたことを逆手に取って一気に「一国二制度」の一線を越えてきました。尖閣問題でも日本政府による所有権取得を口実に領海侵入を既成事実化しました。

貿易や投資・融資などを通じて途上国との関係も強化しており、香港や新疆ウイグル自治区の問題を巡って日欧27カ国が国連人権理事会に抗議声明を出したのに対し、香港国家安全維持法施行を支持したのはキューバなど53カ国にものぼりました。中国は外交上の勝利を宣言しました。

27カ国は次の通りですが、北朝鮮問題を抱える韓国が参加していないのが気になります。中国のデカップリングに突き進むアメリカは国連人権理事会から離脱しています。中印国境紛争で1975年以来初めて死者が出たインドは「懸念」を表明しました。

【27カ国】

オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ベリーズ、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、アイスランド、アイルランド、ドイツ、日本、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マーシャル諸島、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パラオ、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、スイス、イギリス

米白人警官による黒人暴行死事件を機に欧米の人権問題にスポットライトを当て、旧植民地の途上国との連携を強化しています。

環球時報は「近年、多くの人権問題が西側諸国で浮上している。最近の事件はジョージ・フロイドの死であり、人種問題に関する世界的な大衆抗議を引き起こした。そのような悲劇は世界中の人々に西側諸国の人権の欠陥を確信させた」という識者の声を伝えています。

次世代のモバイル通信規格5Gを巡って、アメリカは中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を締め出そうとしていますが、5Gの技術ではファーウェイが独走。ファーウェイを排除すると西側諸国が大きな後れを取ってしまうのが現状です。

トニー・ブレア元英首相の「グローバル・チェンジ研究所」が発表した報告書「世界における中国の役割」によると、特許出願数で中国はアメリカを追い抜いています。西側諸国はテクノロジー戦争でも中国に押されています。

報告書「世界における中国の役割」より
報告書「世界における中国の役割」より

西側諸国が中国に立ち向かうためには日本、アメリカ、オーストラリア、インドを中心に「インド太平洋」の対抗軸を構築するしかありません。西側諸国の技術や科学的知見は取り放題なのに自分の手の内は見せないという中国の身勝手をいつまでも許すわけにはいきません。

(おわり)