突然、匂いや味がしなくなったらご用心 あなたは新型コロナのスーパースプレッダーかもしれない

鼻詰まりでもないのに突然、匂いがしなくなったらご用心(写真:アフロ)

相次ぐ嗅覚・味覚障害の報告

[ロンドン発]嗅覚や味覚障害の症状があれば新型コロナウイルスの感染を疑って、2週間はできるだけ不要不急の外出を控え、会話時にマスクを着用するよう日本耳鼻咽喉(いんこう)科学会が呼びかけています。

新型コロナウイルスに感染した際、発熱や頭痛、咽頭痛(のどの痛み)、倦怠感(だるさ)以外に嗅覚や味覚障害の症状も報告されているためです。

筆者がイギリスで取材した2つのケースでも嗅覚や味覚障害の症状がありました。ロンドン南西部のNHS(国民医療サービス)病院で新型コロナウイルスに感染した内科担当看護師長は次のように院内報告しています。

「それは勤務中に始まりました。全体的に気分が悪くなり、いつからそうなったのか全く分かりませんでした。味や匂いを感じなくなり、熱もないのに体がぽかぽかしました。病棟が暖かいからと思いました。とてもひどい疲労感がありました」

「翌日、息切れ、発熱、疲労を感じ始めました。集中するのに苦労し、目がくらむように感じました。車を運転しようとしたあと、どこを走ったのか思い出せないのですが、新型コロナウイルスに感染したことに気づきました。それから2、3日のことは本当に思い出せません」

ケアワーカーとして働く友人の日本人女性(55)も「2週間前ぐらいに咳が出て熱はなかったのに突然、味がしなくなったのです。カレーを食べても。3月初め、娘がパリから戻ってきて、帰った後にイギリス人の夫も娘も私もみんな同じような症状が出ました」と証言。

この日本人女性はNHSのサイトで自己診断したところ自己隔離して下さいというアドバイスを受けました。イギリスでは重症化しない限り、PCR検査による確定診断は受けることができないため、陽性かどうかは分からないそうです。

無嗅覚症は他のコロナウイルスでも起きる

嗅覚はさまざまな原因により失われます。最も一般的な原因は頭部外傷、ウイルス感染(風邪)、鼻や副鼻腔の疾患(アレルギー、副鼻腔炎)、薬物の使用などです。てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症の場合もあります。

他の全ての感覚と同様に嗅覚も自然に加齢とともに後退します。まれに一部の腫瘍やがんが無嗅覚症を引き起こします。無嗅覚症の原因が見つからないことも多いそうです。

ENT(耳鼻咽喉科)UKのニーマル・クマール会長らによると、ウイルス感染後の無嗅覚症は大人の嗅覚喪失の主な原因の1つで、最大で40%の無嗅覚症がウイルス感染に関係。中にはコロナウイルスも含まれており、新型コロナウイルスが無嗅覚症を起こしても不思議はありません。

韓国や中国、イタリアでも新型コロナウイルスの患者が無嗅覚症や嗅覚障害を発症したことを示す証拠があります。ドイツでは3例中2例以上が無嗅覚症であることが報告されています。韓国ではPCR検査で陽性と判定された患者の30%が無嗅覚症で、主症状か、さもなくば軽症者だったそうです。

新型コロナウイルスによる死者が3000人を超えたイランでも無嗅覚症だけを訴えるケースが突然、増えました。アメリカやフランス、イタリア北部の耳鼻咽喉科の医師も同じような症例を報告しています。

「ステルス感染」を広げる恐れ

無嗅覚症の患者は新型コロナウイルスに感染しているかもしれないのに多くの国ではPCR検査を実施できません。PCR検査のキャパシティーには限りがあるイギリスや日本では症状がもっと進行しないと検査はしてもらえません。

無嗅覚症以外に他の症状がない人が7日間自己隔離をしたら、無症状病原体保有者のスーパースプレッダーによる「ステルス感染」を防げる可能性があるとクマール会長は指摘します。こうした患者を診る耳鼻咽喉科医もゴーグルやN95マスク、防護具を着用した方が安全です。

新型コロナウイルスの感染を疑わずに無嗅覚症治療のためコルチコステロイドを使用すると、感染症を重症化させる恐れがあるそうです。ENTUKは鼻詰まりでもないのに突然、嗅覚や味覚を失ったら新型コロナウイルス感染を疑うよう注意を促しています。

英キングス・カレッジ・ロンドン双生児研究・遺伝疫学部長ティム・スペクター教授のチームは3月24~29日、150万人のアプリ利用者を対象に調査したところ26%が症状を報告。このうちPCR検査で陽性は579人、陰性は1123人でした。

陽性者のうち59%が嗅覚や味覚の喪失を訴えました。陰性者ではわずか18%。新型コロナウイルスの主な症状とされる発熱よりも多く報告がありました。

スペクター教授は「他の症状と組み合わせると、嗅覚や味覚が失われた人は新型コロナウイルスに感染している疑いが3倍高いようです。感染の拡大を減らすために7日間自己隔離する必要があります」と話しています。

世界保健機関(WHO)やイングランド公衆衛生局(PHE)は今のところ、新型コロナウイルスの症状の中に嗅覚や味覚の喪失を加えていません。

感染のチャールズ皇太子が激励のメッセージ

新型コロナウイルスに感染したチャールズ英皇太子が4月1日、ツイートの動画で高齢者支援団体「エイジUK」へのメッセージを送りました。

チャールズ皇太子は「絶え間ないケアを提供する一方で最も危険にさらされている本当に素晴らしい隣人、個人、ボランティアグループ」に感謝の気持ちを述べました。

「刮目(かつもく)に値するNHSの精神的支柱をなす医師、看護師、全ての重要な補助スタッフが集中治療室(ICU)で命を救うために、可能な限りウイルスの蔓延を封じ込めるために戦っています」

「彼らは次第に増す深刻な負担とリスクにさらされています。私たちの思いと祈りはこうした素晴らしい人々とともにあります。並外れたスキルと完全で見返りを求めない義務と患者の治療と看護への彼らの献身は私たちの誇りです」

「現在の状況は、いつかは終わらなければなりません。より良い時が来るのを楽しみにしましょう。私は新型コロナウイルスに感染しましたが、幸運なことに比較的穏やかな症状です。今、回復に向かっています。しかし依然として社会的距離と一般的な隔離状態にあります」

「私たちが体験しているように、家族や友人と会うのも不可能になり、日常の生活様式が突然、失われました。これは奇妙で苛立たしい、時に悲惨な経験です」

「私たちは人生において前例のない不安に覆われています。妻と私は、非常に困難で異常な状況で愛する人を亡くした全ての人々、病気、孤立、孤独に耐えなければならない人々のことを考えています。私たちの心は大きな困難に直面する国中のお年寄りの皆さんとともにあります」

「私たちは全てのコミュニティーに、絶え間ないケアと世話を提供する本当に素晴らしい隣人、個人、ボランティアグループがいることを知っています。この全てのネットワークは、重圧にさらされている専門的サービスに欠かせないサポートと安心を無私の支援により与えています」

「何十万人もの人々がNHSボランティアとして登録し、最前線で働く人々にサポートを提供するためにできる限りの支援を提供するのを目の当たりにするのは本当に素晴らしいことです。疲れ果てた仕事の帰りに彼らが買い物をしようとする時、特別な配慮が不可欠なのは言うまでもありません」

チャールズ皇太子は3月23日、PCR検査で感染が確認されました。王族といえども特別扱いは許されません。陰性だったカミラ夫人も政府のガイドラインに従ってチャールズ皇太子と一緒に自宅検疫中です。

(おわり)