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メーガン妃とヘンリー王子が英王室を離脱する 年の半分カナダに移住

木村正人在英国際ジャーナリスト
1月7日にロンドンのカナダ・ハウスを訪れたメーガン妃とヘンリー王子(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

「カナダに拠点を移し、英王室の称号を放棄する可能性も」

[ロンドン発]結婚と第一子アーチーちゃんの出産を巡り英メディアとの関係が極度に悪化していた英王位継承順位6位のヘンリー王子(35)と妻の元米人気女優メーガン妃(38)が年の半分ずつをイギリスと北米で過ごすことをインスタグラムで表明しました。

メーガン妃とヘンリー王子はインスタグラムにこう書き込みました。

「何カ月も考えた末、今年、英王室で進歩的な新しい役割を切り開くために新しい一歩を踏み出す選択をしました。王室のシニアメンバーとして退き、財政的に独立するように働きながら、女王陛下を支援していくつもりです。イギリスと北米でバランスを取りながら過ごす計画です」

3人は年間最大6カ月、南アフリカで過ごす計画だと報じられていましたが、メーガン妃が女優時代に拠点を置き、友人も多い英連邦のカナダに移住することにしたようです。このクリスマス、3人は英王室伝統のサンドリンガムではなく、カナダのバンクーバー島で過ごしました。

メーガン妃の友人は英大衆紙サンに「そうはならないことを願っていますが、3人がカナダに拠点を移し、英王室の称号を放棄する可能性もある」と話していました。ヘンリー王子は、家族のプライバシーを第一にするメーガン妃の意向を優先にして英王室から離れる覚悟を決めました。

英王室では、交際した女性は1000人を超えると言われるプレイボーイ、アンドルー英王子(59)=英王位継承順位8位=が昨年11月、勾留中に自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン被告の未成年性的搾取疑惑に関連して公務から事実上“解任”されたばかり。

エリザベス女王(93)が高齢になり、チャールズ皇太子(71)の王位継承がひたひたと近づいています。新年早々、英王室はエリザベス女王、チャールズ皇太子、ウィリアム王子、ジョージ王子が4人で写った写真を公開し、王位継承のラインを明確に示しました。

用済みの「スペア」に過ぎないヘンリー王子

物議を醸す米PR会社と協力してサセックス・ロイヤル財団の設立を計画、独自路線を突き進むメーガン妃と英王室は距離を置きたいと考えています。英王室にとって主役はあくまでウィリアム王子とジョージ王子であって、ヘンリー王子は用済みの「スペア」に過ぎません。

これに対して、メーガン妃は昨年、英民放ITVのドキュメンタリー番組で「何かを生き抜くだけでは十分ではないでしょ? それが人生のポイントではありません。成功しなければなりません。幸せを感じなければなりません」と訴えました。

「感情を抑えるというイギリス流の繊細さに適応しようと本当に努力しましたが、私の内面をおそらく傷つけました」と打ち明けました。

メーガン妃と英国民の関係は完全に冷え切っています。ヘンリー王子が英王室を離れるのを寂しく思う人がいても、メーガン妃とアーチーちゃんのカナダ移住については「あッ、そう」「当然だよね」というのが辛辣な英国民の本音のような気がします。

ヘンリー王子とメーガン妃に王族の特典を手放す覚悟は

しかし、3人がカナダで暮らすと言っても費用がかかります。3人がクリスマスと新年の6週間を過ごしたバンクーバー島の豪邸は1410万ドル(約15億4000万円)相当。バンクーバーはカナダで最も生活費が高い都市です。

英大衆紙デーリー・メールによると、3人には最大6人のボディーガードがついており、警備費は年60万ポンド(約8600万円)とかさみます。

ヘンリー王子の純資産は3000万ポンド(約43億円)にのぼるそうです。チャールズ皇太子からコーンウォール公爵領の収入の一部として年推定196万ポンド(約2億8000万円)を受け取っています。

ウィリアム王子とヘンリー王子はエリザベス女王から王室の活動費として年500万ポンドを受け取っています。このうちヘンリー王子とメーガン妃には約200万ポンド(約2億8600万円)が割り当てられているそうです。

ウィリアム王子とヘンリー王子は年間316万ポンドの非公式支出を請求し、ヘンリー王子はうち126万ポンド(約1億8000万円)を受け取っているとみられています。

ヘンリー王子とメーガン妃はスタッフの人件費として個人秘書に年14万6000ポンド、スーパー乳母に年10万4000ポンドなど年間100万ポンド弱(約1億4300万円)を請求しています。

家族のプライバシーと自由を守るためヘンリー王子とメーガン妃に王族の特典を全て放棄する覚悟があるなら大したものです。

「子宮の中にいる時しかプライバシーは存在しない」

「子宮の中にいる時にしかプライバシーはない」と言われる英王室。世界の注目度も高く、「タブロイド」と呼ばれる英大衆紙は鵜の目鷹の目で王室のスキャンダルをほじくり出します。

アーチーちゃん出産前にメーガン妃とヘンリー王子がロンドン郊外のウィンザーにあるフロッグモア・コテージを300万ポンド(約4億2900万円)かけて改装し、転居したことをきっかけに、メーガン妃とキャサリン妃の不仲説は一気に火を吹きます。

英大衆紙サンが、キャサリン妃がメーガン妃に「ケンジントン宮殿の私のスタッフにガミガミ言うのは止めて」と苦情を言ったと報道。

結婚式でもシャーロット王女の着るブライズメイドドレスを巡ってメーガン妃の要求がきつく、キャサリン妃が泣いたという話もまことしやかに伝えられました。

メーガン妃はアメリカ人で離婚経験者、アフリカ系、キャリアウーマン、フェミニストでアクティビスト。キャリアがないまま英王室に嫁いできたキャサリン妃とは全く違うタイプの女性。英大衆紙はメーガン妃を「奴隷の子孫」と散々叩いてきました。

セレブぶりが際立っていたメーガン妃

エリザベス女王はストッキングが伝線するとハロッズに繕いに出していました。ハリウッド女優だったメーガン妃は派手で華があり、英国伝統の倹約精神からはかけ離れています。

米ニューヨーク市にある五つ星ホテルのペントハウスで行われたベビーシャワーには、女子プロ・テニス選手のセリーナ・ウィリアムズさんや米人気俳優ジョージ・クルーニーの妻で人権弁護士アマルさんら著名人が参列。費用は20万ドル(約2200万円)と報じられました。

メーガン妃は友人である米人気女性司会者オプラ・ウィンフリーさんとの共同プロジェクトもスタートさせています。

ジバンシーの詰まった洋服ダンスに78万7000ポンド(約1億1300万円)。メーガン妃38歳の誕生日を祝うためスペインのリゾート・イビサ島にプライベートジェットで往復。プライベートジェットのチャーター代は片道2万ポンド(約285万円)。イビサ島6泊のご予算は12万ポンド(約1700万円)。

メーガン妃はこうした報道に対して「私の友人は、英大衆紙があなたの人生を破壊するから結婚するのは止めた方が良いと言いました」と本音をぶちまけました。

ヘンリー王子とウィリアム王子の不仲説もくすぶり、ヘンリー王子はITVのドキュメンタリー番組で「兄弟には良い日もあれば悪い日もある」と2人の間に溝ができていることを初めて認めました。

英国の欧州連合(EU)離脱の原動力は「ホワイト・アンダークラス(白い負け組)」の怨念です。英大衆紙はメーガン妃が英王室を自分のディズニーランドのように勘違いしていると「ホワイト・アンダークラス」の怒りをあおってきました。

ヘンリー王子は「私には守るべき家族がいます」と話していました。2人はメーガン妃の父親への私信を違法に報じられたり、携帯電話の音声メッセージを盗聴されたりしたと大衆紙を訴えましたが、逆に王室の権限を乱用しているという批判にさらされていました。

アメリカで生まれ育ったメーガン妃に英王室に嫁ぐという観念を求めるのは最初から無理だったようです。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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