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「一部の大人が子供を黙らせようとしている。いつまでも学校ストを続けられるわけがない」グレタさんが訴え

木村正人在英国際ジャーナリスト
マドリードでのパネルディスカッションに参加したグレタさん(筆者撮影)

金曜日の学校スト1年半

[マドリード発]金曜日に学校ストをたった1人で始め、抜本的な地球温暖化対策を訴えているスウェーデンの少女グレタ・トゥンベリさん(16)が6日、第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)に合わせてパネルディスカッションに参加しました。

開催地が南米チリからスペイン・マドリードに急遽(きゅうきょ)変更されたため、グレタさんは大西洋をヨットで折り返し、ポルトガル・リスボンに到着。この日、電車でマドリードに着きました。

グレタさんと、学校ストに参加するスペイン、ウガンダの若者計4人が参加したパネルディスカッションはCOP25会場近くで開かれました。

グレタさんも参加して開かれたパネルディスカッション(筆者撮影)
グレタさんも参加して開かれたパネルディスカッション(筆者撮影)

すぐそばで見るグレタさんは小柄ではかない感じがしました。カメラの放列に最初はフードで頭を覆い、登壇の時間が来るまで会場の隅で座り込みました。

大人の意地悪な質問に一つひとつ丁寧に応えるのに相当、神経を使っていることがうかがえます。

グレタさんはたまに笑顔を浮かべながら、地元や海外のメディアの質問に答えました。

「ストックホルムでは金曜日の今日も学校ストを行っています。私たちの運動はどんどん広がり、より多くの人の耳に届いています。しかし政治的な動きにはつながっていません」

「私たちはストックホルムで運動を続けます。毎週金曜日、学校をボイコットします。もう1年半もね。みんなすごく忍耐強いです」

「私は活動家の1人に過ぎない」

「私の話を他の人の声に優先させて聞く必要は全くありません。私は大きな動きの中の小さな部分、ほんの1人の活動家、温暖化対策を呼びかけている活動家に過ぎないのです」

「私たちはもっともっと多くの気候変動活動家が必要です。他の活動家の声を聞くことが大切です。だからパネルディスカッションに参加している他の人たちの声も聞いて下さい」

「社会正義がカギです。環境や気候は世界の基本的な正義です。そして私は心からCOP25で何かが達成されることを望みます。気候変動に対する人々の認識を広げていかなければなりません」

「決して無視できないことが進行しています。もう隠すことはできません。質問している(メディアの)あなたはどう思うのですか」

米エネルギー情報局によると、世界最大の産油国(日産量)は米国で約1504万バレル。3位がロシアの約1080万バレル。ワールドアトラスによると2012年時点で、石炭の産出量でも米国は世界2位の9億2200万トン、ロシアは6位の3億5480万トンです。

ドナルド・トランプ米大統領もロシアのウラジーミル・プーチン大統領もグレタさんに批判的です。

一部の大人は、変化を求める子供を黙らせようとしている

「現状維持を望む人もいます。彼らは変化を恐れます。若い人々は変化をもたらします。だから一部の大人は私たちを黙らせようとするのです」

「私たちは事実に基づいています。私たちの声はインパクトを持ち、多くの人たちが耳を傾けています。一部の大人は私たちを黙らせようとしているのです」

「何が起きるのか私たちには分かりません。私たちは適応しないといけないのです。コストがかかる問題を解決しなければなりません。悪い結果を防ぐためにありとあらゆることをしなければなりません」

「今年のCOP25、来年のCOP26、抜本的な取り組みをせずに、行動を起こさず無為に時を過ごすことはできません」

「COP25を無視してやり過ごすことはできません。あらゆるチャンスを活かさなければいけません」

「毎年、基本的には何も起きていません。気候変動の問題は依然として政治権力者からは無視されています。子供たちが学校の授業を受けずにボイコットするようなことがいつまでも続けられるわけがないのです」

「私たちは何も成し遂げていない」

「私たちも金曜日の学校ストを続けたいわけではありません。政治権力者が行動を起こすのを期待します」

「人々は気候変動に苦しみ、死んでいっています。今日も。私たちはもう手をこまぬいて待っているわけにはいかないのです」

「私たちはこれまでに多くのことを成し遂げました。多くの人が気候変動問題を考えるようになりました。世論を起こしました。これは正しい方向への大きな一歩です。しかし決して十分とは言えません」

「二酸化炭素の排出量は減っていません。今年も(前年の2.1%増よりも改善したとは言え)0.6%増えました。勝利はありませんでした。私たちは本当の行動が見たいのです。しかしそれはまだ起きていません」

「政治権力者に抜本的な行動を起こさせることができたかという観点からは私たちは何も成し遂げていないのです」

「グレタさんが学校に戻って勉強できるように」

マドリードでは6日夜、50万人(主催者発表)が抜本的な温暖化対策を求めてデモ行進しました。家族連れは「グレタさんを応援するために参加しました。彼女は地球を救おうとしている」と話しました。

50万人が参加して抜本的な温暖化対策を求めたデモ行進(筆者撮影)
50万人が参加して抜本的な温暖化対策を求めたデモ行進(筆者撮影)

小学校教員ソフィア・マルティネスさん(24)は「今の資本主義システムの中で抜本的な温暖化対策を進めるのは難しいのかもしれません。グレタさんの訴えで多くの人が気候変動を真剣に考えるようになりました。しかし私たちはグレタさんが学校に戻って勉強できるようにすべきだと思います」と言います。

公務員のビレン・バルタナスさん(40)は「政治家は情熱を欠いています。政治家が行動を起こすべきなのに、懐疑的にならざるを得ません。グレタさんをアイコンにするのは良くないわ。いくらしっかりしているとは言っても子供は子供なのよ」と肩をすくめました。

首相や大統領が権力を維持するためには選挙で再選する必要があります。最近でこそ地球温暖化への関心が高まっていますが、若者以外の有権者は経済を重視して化石燃料が使われているのに目をつぶっているのが悲しい現実です。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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