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1日3回オーガズムを求めた米大富豪の「性的恐怖の館」に出入りしていた英王子 米裁判所に呼ばれる恐れも

木村正人在英国際ジャーナリスト
少女性的搾取の罪で起訴され、勾留中に死亡したエプスタイン被告(左)(写真:ロイター/アフロ)

くすぶる「口封じのための他殺」説

[ロンドン発]未成年者の人身取引で起訴された米国の大富豪ジェフリー・エプスタイン被告(66)が勾留中に死亡、首つり自殺したとみられる問題で、2010年に同被告の居宅を訪れたアンドルー英王子(59)の映像が公開され、英王室は蜂の巣をつついたような大騒ぎになっています。

裁判の開始を待っていたエプスタイン被告は今月10日、マンハッタンの勾留施設で死亡しているのが見つかりました。同被告は長年、アンドルー王子や大統領就任前のドナルド・トランプ氏やビル・クリントン元大統領ら政治家、有力者、著名人らと「セレブな関係」を続けおり、「自殺」ではなく「口封じのための他殺」との憶測もくすぶっています。

英大衆紙メール・オン・サンデーは、ニューヨークのエプスタイン被告宅から出ていく若い女性を、目尻を下げて見送るアンドルー王子を隠し撮りした特ダネ動画を公開。アンドルー王子はエプスタイン被告が未成年者に性的行為をさせたとして有罪判決を受けた後も同被告宅を訪れていました。

バッキンガム宮殿(英王室)は日曜の夜、即座に「アンドルー王子はエプスタイン被告の容疑に関する最近の報道に愕然としている。アンドルー王子はいかなる人的搾取も遺憾とし、彼がそうした行動を許容し、参加し、促したと示唆するのは忌まわしいことだ」と疑惑を全面否定しました。

英王室の伝統はどんな報道にも「文句も言わず、説明もしない」という不文律を守ってきましたが、そんな悠長なことを言っていられる場合ではないようです。しかし忌まわしいのはどちらでしょう。英王室のコメントは疑惑に全く答えていません。

オーガズムを与えられないと罰が加えられる

数十人の少女が性的搾取され「恐怖の館」と呼ばれていた悪名高きエプスタイン被告の居宅(時価約90億2500万円相当)に出入りしていたアンドルー王子は中で何が行われていたのかを知る重要な証人です。「性的奴隷」にされた少女たちは民事的な救済を求めています。アンドルー王子は米国の裁判所で証言しなければならなくなるやもしれません。

17年、米ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏が複数の女優に性的関係を迫っていたスキャンダルをきっかけに世界中で「#MeToo」運動が広がりました。エプスタイン被告は未成年の少女たちから組織的に性的搾取を行っていたので、より悪質です。

英大衆日曜紙デーリー・ミラーも、アンドルー王子とエプスタイン被告に性的虐待を受けたとされるヨハンナ・フェーバリさんの父親が司法による正義を求めていると特ダネで伝えました。

ヨハンナさんは正規のアシスタントの仕事だと言って雇われた後、エプスタイン被告に性的マッサージを強要され、オーガズムを与えられなかった場合、罰を与えられたと訴えています。ヨハンナさんはエプスタイン被告の下で4年間働き「恐怖の館」にも出入りしていました。

報酬は1回300ドル(約3万2000円)程度だったとも言われています。

アンドルー王子は20代前半だったヨハンナさんの胸を触ったとされています。ヨハンナさんの父親はエプスタイン被告が死んだとしても正義は実現されなければならないと訴えています。

1999年半ばからエプスタイン被告に性的マッサージを強いられていたヨハンナさんはグループで英王室の夏の休暇地バルモラル城に滞在し、アンドルー王子と楽しんだとも証言しています。

「エプスタイン被告は1日3回オーガズムを必要とした」

英メディアによると、ヨハンナさんはこれまでの裁判で「エプスタイン被告は1日3回オーガズムを必要としました。食事をとるように生物学的でした」と証言しています。

エプスタイン被告の「性奴隷」にされたバージニア・ロバーツさんは2001年、17歳の時にアンドルー王子と3回寝たと訴えています。しかしアンドルー王子と英王室はバージニアさんとの性的な接触や関係を否定し、米国の裁判所も彼女の訴えを「重要でない」と退けました。

エプスタイン被告は1992年、トランプ大統領と大統領の別荘「マー・ア・ラゴ」に28人の女性を招いてパーティーを開いたこともあります。

未成年の少女に売春をさせた罪に問われたエプスタイン被告は司法取引に応じ、08年、1年6月の禁錮刑判決を受けて服役。この時の担当はフロリダ州マイアミの連邦地方検事で、後にトランプ大統領に労働長官に指名されるアレクサンダー・アコスタ氏。アコスタ長官はその後、秘密裏に行った司法取引を批判され、辞任に追い込まれます。

今年7月、エプスタイン被告は性的搾取を目的とする未成年者の人身取引容疑で逮捕、起訴され、裁判の開始を待っていました。有罪の場合、最高45年の禁錮刑が科される可能性があり、被害者の中には14歳の少女もいたそうです。

いくら英王室のメンバーだからと言って、こんな人物と有罪判決が出てからも堂々と付き合い、少女たちに「恐怖の館」と恐れられた場所に出入りすることが許される時代ではなくなりました。時代錯誤も甚だしいとはこのことです。

アンドルー王子は米国の裁判所に出廷して、すべてを洗いざらい証言することが求められるでしょう。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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