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日本の処女326万人、童貞380万人「失われた20年」で性交渉未経験の女性2.9%、男性5.8%上昇

木村正人在英国際ジャーナリスト
海外の先進国に比べると日本の処女率、童貞率は非常に高い(ペイレスイメージズ/アフロ)

無職、非正規・時短雇用、低収入の男性ほど童貞が多い

[ロンドン発]バブル崩壊後、「失われた20年」に当たる1992年から2015年の間に、18~39歳で性交渉の経験がない日本女性(処女)が21.7%から24.6%に、日本男性(童貞)は20%から25.8%に増加しました。

30代の10人に1人は性交渉の経験がないと回答。無職、非正規・時短雇用、収入の低い日本男性ほど童貞が多かったそうです。

2010年時点で日本の18~39歳の処女は326万人、童貞は380万人と推定されています。30代の処女や童貞は156万人とみられています。

スウェーデン・カロリンスカ研究所の上田ピーター氏と東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室のサイラズ・ガズナビ氏らの研究チームの調査で分かりました。

研究チームは1987年から2015年に実施された7回の出生動向基本調査のデータ(1万1553~1万7850人)を用いて、異性間性交渉未経験の割合を算出しました。

その結果、30~34歳では1987年から2015年の間に処女は6.2%から11.9%に、童貞は8.8%から12.7%に増加。35~39歳では1992年から2015年の間に処女が4%から8.9%に、童貞は5.5%から9.5%に上昇していました。

25~39歳の男性では無職、非正規・時短雇用、低収入が、性交渉経験のないことと強い相関関係を示しました。

15年の出生動向基本調査では、これまでに一度も結婚したことがない18~34歳の男女のうち40%以上が一度も性交渉の経験がないと回答しています。

英国35~44歳の処女率0.5%

英国で行われた調査では、生涯を通じて異性の性交渉パートナーがいないと答えた女性の割合は19.8%(16~24歳)、2.6%(25~34歳)、0.5%(35~44歳)。男性はそれぞれ19.8%、5.2%、1.5%でした。

米国で行われた調査では、18歳以降に異性の性交渉パートナーがいないと答えた女性の割合は12.6%(20~24歳)、3.4%(25~29歳)、1.9%(30~34歳)、0.9%(35~39歳)。男性はそれぞれ14.4%、3.8%、3.1%、1.4%だったそうです。

オーストラリアでは、膣性交渉の経験がないと回答した女性は40%(16~19歳)、10.9%(20~29歳)、1.2%(30~39歳)、男性はそれぞれ35%、9.6%、1.8%です。

日本女性の処女率(上田氏らの研究論文より抜粋)
日本女性の処女率(上田氏らの研究論文より抜粋)

日本女性の処女率は30~34歳で1987年の6.2%から2015年には11.9%に、35~39歳では1992年の4%から2015年には8.9%にハネ上がっています。日本男性の童貞率も30~34歳で8.8%から12.7%に、35~39歳では5.5%から9.5%に上昇しています。

日本男性の童貞率(同)
日本男性の童貞率(同)

英米豪に比べると、いかに日本の処女率、童貞率が高いかが分かります。

性交渉未経験者の10人のうち8人は結婚したい

カロリンスカ研究所の上田氏が強調するのは次の6点です。

(1)他の高所得国と比較した場合、日本の異性間性交渉未経験(童貞、処女)の割合は高い

(2)本人の意思であれば、異性間性交渉の経験がないことは問題視する必要はない

(3)しかし、性交渉の経験がない者の10人のうち約8人は生涯を通じて結婚したい願望があると回答しているので、性交渉経験がないことは自分たちの本意ではないことを示唆している

(4)出生動向基本調査によると「独身にとどまっている理由」の最も高い割合を占めているのが「適当な相手と巡り合わない」(男女25~34歳)

(5)無職、非正規・時短雇用及び低い収入が男性では異性間性交渉経験がないことに関連していることが分かった

(6)出生動向基本調査では異性間性交渉のみに限定されており、同性間性交渉に関しての研究は行うことができなかった

草食系男子・アニメの影響は?

上田氏は筆者の質問にこう答えています。

「従来、性交渉未経験の割合が多い理由についてはメディアなどでは草食系男子・(アニメなどの)二次元文化の影響などが言われてきましたが、われわれとしてはそうした固定概念よりむしろ、収入や雇用条件といった要因の方が大きいのではないかということに今回注目しています」

「従って、自らの意思(希望)で性交渉未経験・未婚の人に対しては現時点でなんらかの介入が必要とまでは言えないと思っています。しかしその一方で、婚姻希望や性交渉経験の希望があるにもかかわらず未婚・性交渉経験なしの状態の人に対しては、収入や雇用条件などがその要因となっているのであれば、その要因に対してなんらかの支援策が必要と考えます」

上田氏は「男性の未経験である確率と収入・雇用形態の相関関係は必ずしも因果関係を表しているものではない」と断った上で、「研究チームは、こうした問題を抱える人に対しては雇用環境の改善や収入の向上などの政策的介入を検討することも必要ではないかと考えています」と指摘しています。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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