Yahoo!ニュース

【大阪都構想】橋下市長に大逆転はあるか 変わるチャンスは今しかない

木村正人在英国際ジャーナリスト

いよいよ「大阪都構想」の住民投票が17日午前7時(日本時間)から始まった。大阪出身で現在はロンドン在住の筆者に投票権はないが、大阪市の納税者だ。大阪市民の皆さんが賛成票を投じられることを願っている。

大阪の同窓生に電話すると、都構想を推進する橋下徹・大阪市長の評判は散々だそうだ。「橋下のおかげで赤バスがなくなってしもた」「都構想が実現したら学校の夏休みがもっと減らされる。絶対、反対や」

橋下市長自身、これを逆手に取って14日に大阪市内で全戸配布された新聞の折り込みチラシでこう訴えた。「僕のことはキライでもいい。でも、大阪がひとつになるラストチャンスなんです」

本当に今回の住民投票は大阪にとってラストチャンスになる。住民投票が否決され、橋下市長が政界を引退したら、もう大阪を変えようという奇特でパワフルな人は二度と現れないだろう。

大阪府知事選に当選したあと、大阪市長に当選できるカリスマが現れることもない。ムダな支出を削減して、勉強するよう子供たちの尻を叩いてくれる熱血漢も現れない。

住民投票は大阪が生まれ変わる千載一遇のチャンスだ。日銀が異次元の金融緩和を続けていられるうちに、使いやすい制度を作っておくことが重要だ。いざというとき、他より早く飛び立てるからだ。

都構想の考え方は極めてシンプルである。これまで意地を張り合ってきた大阪府と大阪市の広域行政を一本化し、市を5つの特別区に分けて基礎自治体の住民サービスをきめ細かくする。

それに合わせて民営化できるところは民営化し、公務員の数を減らしてサービスの向上を図る。しかし、既得権を失う人、仕事が増える人はこぞって橋下市長の都構想に反対している。

法的拘束力を持った全国初の住民投票を通じて、大阪市民は地方自治、民主主義を実感できる。大阪市がなくなって大阪府が「都」になっても、それを運営していく知恵とエネルギーが必要だ。

大阪市役所というシステムにぶら下がっている人を1人でも減らし、前に押して行く力に変えていかなければならない。

市は府と競うようにインフラを作り、2004年に全会計で5兆5196億円の市債残高を積み上げた。昨年度見込みで4兆7022億円まで減らしたが、一般会計の通常収支が黒字化するのは2023年度だ。

大阪市HPより
大阪市HPより

大阪市交通局は歳出削減のため2013年3月末で、運賃100円のコミュニティーバス(通称・赤バス)を廃止した。乗客が少ないことから「空気バス」と呼ばれていた赤字事業だ。

橋下市長が赤バスを廃止したら、「不便になった」と高齢者が文句を言う。「子供でも運賃の半額を支払っている」と、敬老優待乗車証(敬老パス)で1回乗車するたび50円の負担を求めたら不満たらたら。

子供たちの低い学力を底上げしようと夏休みを短縮すると、「都になったら、もっと夏休みが減らされる」と子供たちが大騒ぎだ。子供たちが必死で勉強しないと大阪はもっと遅れを取る。

小学校の学力テスト、大阪市と全国の差(市HPより)
小学校の学力テスト、大阪市と全国の差(市HPより)
中学校の学力テスト(同)
中学校の学力テスト(同)

大阪市の子供の学力は全国平均より低い。橋下市長は塾代助成を導入して貧しい家庭の子供でも勉強できるようにした。

都構想には反対が多い。しかし、不当な意見が目立つ。その代表格が内閣官房参与、京都大学大学院工学研究科の藤井聡教授だ。

大阪市役所の「京土会」と呼ばれる京都大学の土木出身者派閥がコンクリートこそが需要と発展を生み出すとばかりに進めた開発プロジェクトのツケで大阪市は今、莫大な赤字に苦しんでいる。

その大阪を都構想で立て直そうとすると、今度は同じ京大土木出身の藤井教授が横槍を入れてくる。「内閣官房参与」「京大教授」の肩書を使って「都構想はデタラメ」と言い募るのだからタチが悪い。

もう大阪をバカにせんとって下さいと言いたい。

藤井教授の主張について、倉田哲郎・箕面市長がブログで「『大阪都構想:知っていてほしい7つの事実』をマジメに考える」と題して丁寧に論破されている。

米重克洋JX通信社代表取締役も「【大阪都構想の先行事例】東京都民が解説する『特別区』の住民サービス」で都構想の意義をわかりやすく説明されている。

21世紀は、藤井教授が信奉するコンクリートより、インターネットの時代だ。インターネットと志さえあればガレージから世界を変えられる。都構想は仕組みを変えるアイデアだからこそ面白い。

都構想が何もしなくてもすべてがうまく行く魔法の杖でないことは反対派の言う通り。しかし東京都の特別区に改良を加えた制度である。使いこなせば、かなり役に立つ仕組みであることは間違いない。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

木村正人の最近の記事