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アベノミクスは性差別をなくせるか?【緊急提言】男女の協力と格差解消が決め手だ

木村正人在英国際ジャーナリスト

東京都議会で塩村文夏(あやか)都議(35)が鈴木章浩都議(51)=自民党会派離脱=に「早く結婚した方がいいんじゃないか」とヤジられた問題で、筆者は23~24日にかけ、グーグルドライブのフォームを使って簡単な緊急アンケートを実施した。

ロンドン時間の24日午後7時半(日本時間25日午前3時半)までに663件の回答が寄せられるなど、女性問題への関心の高さを改めて浮き彫りにした。

まず、「今回の性差別ヤジで、日本の性差をなくすために必要なことは何だと思いましたか?」という質問に対して、

(1)男性が意識を変える

(2)女性がもっと意識を強く持つ

(3)上の両方が必要

(4)鈴木都議の個人的な資質の問題

(5)その他(書き込み可能)

の中から選んでもらった。

その結果は下のグラフの通り、(3)上の両方が必要(男性が意識を変えるとともに、女性がもっと意識を強く持つ)が圧倒的に多かった。

(筆者作成)
(筆者作成)

「男性が意識を変える」は(1)と(3)を足すと75%にのぼっている。「女性がもっと意識を強く持つ」は(2)と(3)を足すと60%。

男性の理解と努力がより求められるが、男女の協力なくして性差別は解消されない。

次に「一番効果のある対策は?」という問いに対して、

(1)賃金や待遇など経済格差の解消

(2)女性の議員数など政治参加を増やす

(3)託児所設置や育児休暇など子育て支援

(4)その他(書き込み可能)

の中から選んでもらった。

(筆者作成)
(筆者作成)

「賃金や待遇など経済格差の解消」が32%で一番多く、2番目が「女性の議員数など政治参加を増やす」の26%。「託児所設置や育児休暇など子育て支援」は22%だった。

ウーマノミクス3つの矢

安倍政権は24日、「日本再興戦略 改訂2014-未来への挑戦」を公表した。ウーマノミクスの新たな矢は次の3つだ。

(1)放課後児童クラブなどの拡充

「待機児童解消加速化プラン」に加え、2019 年度末までに 30 万人の放課後児童クラブの受け皿を拡大する。1万カ所以上の場所で放課後児童クラブと放課後子供教室の一体化を行う。

(2)税・社会保障制度の見直し

働き方の選択に対して、より中立的な社会制度を実現するため、税・社会保障・配偶者手当などについて検討する。

(3)女性の活躍を加速させる新法の制定

「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」の実現に向け、女性登用に関する国・地方自治体、民間企業の目標・行動計画の策定、女性登用に積極的な企業へのインセンティブなどを内容とする新法を制定する。

ウーマノミクスの自己採点

これまでのウーマノミクスの成果を安倍政権がどのように自己採点しているかと言えば――。

目標:「2014年度末までに約20万人分、2017年度末までに約40万人分の保育の受け皿を拡大し、待機児童の解消を目指す」

成果:2013年8月、加速化プラン参加自治体数351市区町村

目標:「2020 年に女性の就業率(25~44歳)を 73%(現状 68%)にする」

成果:2013 年度、69.5%

目標:「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」

成果:2013 年管理職比率、7.5%(2012年 6.9%)

米金融グループ、ゴールドマン・サックスの報告書によると、男女の雇用格差が解消すれば日本の国内総生産(GDP)は13%近く増加する可能性があるという。性差解消は女性のためだけでなく、男性のためでもあるのだ。

鋼鉄の天井

報告書は(1)女性の就業率向上(2)保育の受け皿整備(3)女性の活躍に関する企業の情報開示――の3分野で一定の改善は見られたと評価する一方で、厳しい注文をつける。

(1)先進国の中では低い就業率。第一子出産後の退職率が高い。

(2)少なすぎる女性リーダー。女性議員の比率は中東より低い。女性役員の比率はゼロに近い。

(3)男女の賃金格差と雇用機会の不均等。女性の平均賃金は男性の71%。出産退職後に再就職した場合、パートタイムが大半。

(4)既婚女性のフルタイム就業を妨げる配偶者控除。

(5)女性の活躍に関する情報を開示する上場企業は全体の17%。

女性の社会進出を「鋼鉄の天井」が阻んでいるのが現状だ。

【設問1】に対する「その他」の主な回答は以下の通り。

・「意識」を皆が考えて実践するよう啓蒙する。

・ガイドラインを作り、議事進行の運営側にも一定の割合で女性を登用しヤジなどに議事進行側として対応していく。

・それぞれが自分の性と相手の性との違い(強み/弱み)を尊重して議論すること。

・どっちもどっちで口先だけ達者な議員の資質の低下の問題。

・一人ひとりの文化的背景も含めた意識の変革。

・もともと男女は違うものであり、お互いに補い合う存在であることを認識しなければならない。男と女が同じでなければならないという考えがそもそもの間違い。

・意識改革と教育。

・違いを理解する事。

・育児休業を男女半々にする。

・一方では男女平等と言い、一方では女を武器にする女性の甘えた体質を改めないと無理。

・議員税金無駄使いをやめ、議員数を減らす。

・教育2件

・教育から、性差というものを意識させないような風土を作っていくこと。

・具体的な処罰を海外事例にならって制定すべき。国内の男性議員に任せていては制定はあり得ないので。

・差別を法律で禁止する。

・子供や若者をどうしたら幸せにできるか真剣に考える。

・社会制度上の差別是正のみで十分である。思想統制など殊更必要とは思われない。

・社会全体で、差別発言は形態はどうあれ、一切されないという共通認識をもつこと。

・女性が女性の価値を認めさせ男性の意識を変えさせる。

・女性が男性と対等に自立できる仕組みを拡充すること。

・女性が優位になる社会システムの整備。

・女性の強さを知ること。

・女性の社会進出は必要ですが、日本の女性はよくも悪くも奥ゆかしいです。そのため要職に就こうとする人がまだまだ少ないと思います。(略)

・女性自身がもっと平等、同権をシビアに捉える。

・女性優遇や男性差別もやめる、平等にする。

・女性の男性対する役割意識を変える。

・職場やグループリーダーの意識変革。

・制度を変える。意識はあとからついてくる。

・制度化された女性差別の撤廃。

・性差と性差別は違うのでこの設問が不思議だが、全ての人がジェンダーの問題を自分の問題として取り組むべき。

・性差と性差別は別物ですよ。性差が認められねば、女性は男にならねばならない。それは嫌ですね。生み育てる性の豊かさと命を継承する尊さを度外視しないことがまずは大切と思います。

・性差はある。男が妊娠できる訳でも生理があるわけでもない。

・性差をなくす必要が無い。男を男として扱い、女を女として扱う事の何がいけないのか。

・性差自体はなくならないので、その性差を埋めるような仕組みが必要。

・性差別ではない。未婚差別だ。

・性差別は無くすべきだが、生物である以上性差があるのは当たり前。性別によって特性が違うのは当然でしょ。

・性別による差があることを前提として考えること。

・成人するとは親から独立することだということを男女ともに教えること。

・他国へ情報開示してまっとうな批判を受けることが必要。日本人の中で性差を無くそうと本気で考えている人はまだ多数派ではないから。

・男も女もタフになること。

・男女どちらにしろ、意識を変えざる得ない状況を作る方法を考えていくことが必要。

・男女の別をわきまえる。

・働く機会をとおした意識づくりに向けた制度設計。

・日本にはむしろ男性差別が散見される。

・日本には性差別はありません。区別はあるけどね。

・法律上の手当て。

・本アンケートのような男性・女性という区切り方をしない事、他人の生き方に寛容である事。

・無くそうとするから増える。

・野次をやめ、云いたいことがあったら挙手して発言する。性差はいろんな考えの人がいるので無理かと。

・鈴木都議のような人に投票しないこと。

・論理的思考力の獲得。

【設問2】に対する「その他」の主な回答

・30歳未満の収入で言えば既に女性が上回っている。少子化対策として有効だと思われるのは3つ目(子育て支援)だが、結婚を促すような今回の野次とは直接関係無い。

・こんな発言をする男性は女性が相手にしないで爪弾きにする。

・しっかり日本女性としての教育をする事。

・セクハラ、コンプライアンスに関わる社会及び学校での教育促進。

・とりあえず年齢・性別に基づくクオータ制を参議院で導入してみる?

・ノルウェーのように男女ともに徴兵を行う。

・プロパガンダ。現状では恥ずかしいという意識を浸透させる。教育現場の指導者の意識改革。

・ベーシックインカム。

・まず女が甘え体質を止める。

・メディアが作り上げるステレオタイプな家族観の押し付けをなくすこと。

・メディアでもっと男女の役割を押し付けないような内容を取り扱う(特にCMや雑誌、テレビ番組内での男尊女卑思想が強いことの影響は非常に大きいと思います)。

・メディアの意識の改革。

・育児休業を男女半々にする。

・一言では言えぬが、真面目な教育が最重要。

・欧米の女性の生活に実際に触れて学ぶ。

・何で女性がみんな社会進出しなければならないの?専業主婦がいい人だってパートがいい人だってたくさんいるのだけど。大事なのは自分の好きな生き方を選べることではないの?責任もって正社員でばりばり働いている人より、責任のないパートで働くほうが楽しいという調査データも見たことあるし、日本の女性は出世したいとか指導的立場に立ちたいと言う人が少ないと思うけど。でもそれっていけないこと?

・何もしなくていいが、子育て支援はすればいい。

・価値観押しつけの排除。デキ婚・事実婚批判のない社会。

・会社が男性に積極的に育休を取らせる。

・外部からの制度的な対策は全て無意味。政策で解決できる性質のものではない。この国が文化的な「先進国」になるまで、あと100年ぐらいジックリと待つ以外に方法はない。

・基本的教育。

・既婚女性が議員になる。未婚フェミニスト(笑)が威張りすぎ。

・機会の格差解消。

・議員と地位の高い役人の半分を女性にする。

・議員の免職。

・競争社会重視の教育の見直し。

・教育。時間はかかりますが。

・教育でしょ。家庭教育、学校教育そのものが差別の温床になっている。

・教育の問題かと。女性専用車両をなくすにはどうしたらいいのか。この辺りから考えてみては。

・勤務時間の短縮。週40時間以上の労働を禁止。

・金銭的な理由で専業主婦の選択ができないことが問題点(略)。

・刑罰をもうける。

・経済格差の解消と政治参加の拡大を同時に図る。

・厳しい罰則。

・戸籍の廃止。結婚後、男性の戸籍に女性が入る形式を廃止すること。

・互いが被害者意識をもって議論をしないこと。

・差別とは何かをはっきり教える。大人にも。

・差別と区別をきちんと議論すべき。

・差別発言に対する処罰を徹底する。

・残業の抑止。男女ともに家庭に投資できる時間を確保できるように。

・仕事に関して言えば、その人の能力によって賃金が支払われるべき。しかしそこには将来にわたって企業に貢献できるかという期待値も含まれるべき。

・子育て経験女性の政治参加(一定数の議員枠を作る)。

・自ら情報を集め考える態度を持つよう手助けする。国民的に情報、哲学リテラシーが欠如している。

・自覚と教育。

・社会のあり方を命優先にすること。極論を言えば、男性が、その価値を最優先するよう変わること。

・呪縛からの解放。

・女性が扶養控除に甘んじないで活動する。

・女性に権限と責任を持たせる。

・女性の意識改革。

・女性の議員数というより若い世代の議員数を増やす。

・女性各人に自信が持てれば、鼻で笑って済むでしょ。自信を持ちなさいな。

・女尊男卑を止めること。同性愛者など日本古来から寛容だった古き良き時代の日本を取り戻すこと。

・少子化対策がしたいのなら3番目(子育て支援)?性差別解消なら例えば夫婦別姓を認める、など。

・上記すべて(経済格差解消、女性の政治参加、子育て支援)を実施する社会的要請、権利も主張する側が普段の努力をしないと認められない。

・上記すべて。

・上記すべてと教育。

・上記すべて必要です。そのほかに子供のころから性差別をなくす教育を家庭でも学校でも行うべき。具体例は長くなるので割愛しますが。

・上記全てが揃って効果がある。

・上記全てが必要かと思いますが、全ての差別の事を知って考えて伝えることを徹底的にしてゆかないと無くならないと思います。教育を含めて。

・上記全部。いわゆるシラク3原則(出産・子育て・女性の職場復帰支援)に沿った政策を日本でも実現する。PACS(市民連帯契約)のようなパートナーシップ制度の法制化も必要。

・職場に託児所を設置2件

・新卒採用の見直し。全年齢新入社員。やり直しのできる社会作り。

・人間性の評価を重視。

・数値目標として一定の割合で女性を登用する。

・性差をきちんと学習し、現状の差が本当に妥当ではないのかを検証すること。単なる女性優遇では意味がない。

・性差を認めた上での平等な制度の構築。

・性差を埋めるために、例えば、妊娠中の人が第一線で働ける職場環境(在宅業務)・運営方法(ワークシェア)の構築。

・性差別に関する啓発や教育の強化。性差別者に対する法的、社会的制裁の強化。

・性差別に対する罰則。

・性別に対する偏見を無くすこと。女性男性に関わらず根本的な観念を取り払われない限りこの問題は解決しないと思う。

・政策や信条に磨きをかけること。

・政治家をはじめ、国民の意識改革です。

・政治参加だけでなく女性公務員の数を男性より多くする。

・男女の役割をきちんと理解しお互いに尊重すること。

・男女共に長時間労働が当たり前とされる文化をなくすこと。

・男女平等に育児休暇・支援をする。仕事は能力主義を徹底する。

・男女問わず十分な賃金と雇用拡大。

・男女問わず低俗なヤジを慎む規範意識を持つこと。

・男女問わず労働時間短縮。

・男性がもっと稼げて、母親が育児に集中できればいいと思う。

・男性が家庭における役割を負担増やす事で、家事・育児の意識を変える。

・男性が女性を従属物のように扱う社会的風潮を是正すべきで、まず男性の意識改革が必要。女性側がいくら言っても聞かないので、男性側から女性を尊重する態度を取れるキーパソンが出ることが必要。結婚生活でさえ、女性の権限が低く、少子化と騒ぐ割には、子どもを産んだ母の立場が低すぎる。命の源は女性だということに男性の理解と尊敬が必要。中等教育から性差を理解し、男女平等を実践する教育を行うことも必要だと感じる。

・男性に女性と同じだけ家事、育児を任せ共働き。

・男性の育児・介護への参加とそれに伴う労働環境の改善。

・男性の育児家事参加。産休取得率(男性含む)による法人税減税等優遇措置、長時間残業の解消。性差をなくすために苦しいほう(長時間残業など)に合わせる必然性はないです。

・男性の家事育児参加と長時間労働排除。

・男性の働き方を根本的に変える。

・男性らしい、女性らしい生き方を尊重する。

・男性を含む社会全体の残業縮小。

・男性向けの子育て支援。

・男性主婦を啓蒙する。

・男性労働時間短縮のための規制強化。

・地道に子どもたちに教育をして次世代に残さないようにする。

・長期的視点に立つと、教育。異なる価値観を容認し合うことを徹底する。難しそうですが。

・長時間労働の禁止。重課税。

・年齢、性別、婚姻・妊娠・子供の有無により採用の可否を決定する就職差別の禁止。待機児童の解消。長時間労働の禁止。

・配偶者控除廃止反対。

・表面上だけでない雇用機会均等による男女、年齢の差別解消。任期付き公務員を含む労働市場の多様化、活性化による、組織中心主義から個人・労働者中心の社会へ。履歴書への写真添付、家族構成の記載、年齢記述全面的禁止へ(無理かな)。

・扶養控除の維持。

・扶養手当の拡大。

・鈴木都議の処分。

・労働市場の改革。

(おわり)皆さんの声がきっと政治を変えていくと思います。性差については折をみて今後も考えていきます。ご協力どうもありがとうございました。

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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