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英王子の控えめ洗礼式に超リッチ御曹司

木村正人在英国際ジャーナリスト

英国のウィリアム王子とキャサリン妃の第1子、ジョージ王子の洗礼式が23日、ロンドン中心部にあるセント・ジェームズ宮殿の王室礼拝堂で執り行われた。

セント・ジェームス宮殿沿道に陣取るロイヤルファミリーの追っかけ(筆者撮影)
セント・ジェームス宮殿沿道に陣取るロイヤルファミリーの追っかけ(筆者撮影)

7月に誕生したジョージ王子は愛らしい目をぱっちり見開き、代表取材のTVカメラに向かって手をふる仕種も見せた。

洗礼式で泣き出し、母親の故ダイアナ元皇太子妃の指にしゃぶりついたウィリアム王子とは大違いで、生後3カ月で早くも「将来の君主」の貫禄を漂わせているようにさえ感じられた。

23日にセント・ジェームズ宮殿前を訪れると、ロイヤルウェディングやジョージ王子誕生の取材ですっかり顔なじみになったロイヤルファミリーの追っかけの人たちが前日から泊まり込みで特等席に陣取っていた。

「ジョージ王子」の名前入りケーキを持参したアン・デーリーさん(筆者撮影)
「ジョージ王子」の名前入りケーキを持参したアン・デーリーさん(筆者撮影)

その1人で、カーディフからやって来た女性のアン・デーリーさんは「ジョージ王子」の名前入り祝賀ケーキを持参、「王子には水色が似合うと思ってケーキも水色にしました」と笑顔を見せた。

沿道には1千人近い観光客、市民が詰めかけた。ニューカースルから夜行バスで約5時間かけてやってきた老姉妹シーラ・ブレーさんとノーマ・ファンクスさん。

老姉妹は「洗礼式でジョージ王子は英国国教徒になります。これで国王になる資格ができました。歴史的な瞬間です。今夜のバスでトンボ返りします」と疲れを見せずに話した。

派手なコスチュームを来たロイヤル・ファンの1人(筆者撮影)
派手なコスチュームを来たロイヤル・ファンの1人(筆者撮影)

両親に何かあった場合、子供の後見人になるゴッド・ペアレンツに誰が選ばれるのかにも注目が集まったが、ウィリアム王子とキャサリン妃の友人、学友が目立った。

選ばれた7人のうち王族はアン王女の長女でラグビーのイングランド代表選手と結婚したザラ・ティンダルさんただ1人。ダイアナ元妃はアン王女とそりが合わなかったため、ウィリアム王子が和解の意味を込めたのかもしれない。

一方、ダイアナ元妃の親友ジュリア・サミュエルさん、ウィリアム、ヘンリー両王子を支えてきたベテラン私設秘書もゴッド・ペアレンツに選ばれたのは驚きだった。

総資産1兆円超の御曹司

しかし、それ以上のサプライズは、ウェストミンスター公爵の御曹司アール・グローブナーさんが22歳の若さでゴッド・ペアレンツの1人に選ばれたことだ。

ウィリアム王子とキャサリン妃はこれまで市民目線を意識してきたが、グローブナーさんの父親は英紙タイムズ長者番付8位にランクされる大地主。総資産78億ポンドの大金持ちなのだ。

日本円にすると、なんと1兆2280億円である。グローブナーさんは大のパーティー好きとしてその名を轟かせており、英芸能雑誌バニティ・フェアは「グローブナーさんの21歳の誕生日は正気じゃなかった」と伝えている。

誕生パーティーのゲストは800人。人気コメディアンやヒップホップのデュオが余興を務め、ヘンリー王子も招かれた。費用は500万ポンド、日本円で7億8700万円かかったとウワサされる。

ウィリアム王子とキャサリン妃との関係はよくわからない。ひょっとすると2人のチャリティーの大スポンサーなのかもしれない。

なんだか英王室伝統のスキャンダラスな臭いがしてきたが、ウィリアム王子とキャサリン妃は結婚式以来、地に足が着いた「自分たち流」を貫いてきた。

招待客は22人でセレブリティーの出席もなく、グローブナーさんの存在を除けば、極めて控えめな洗礼式だったといえるだろう。

最近の王室行事の顔ぶれはエリザベス女王、フィリップ殿下、チャールズ皇太子、カミラ夫人、ウィリアム王子、キャサリン妃、ヘンリー王子に、ミドルトン家のメンバーに限られている。

王室をできるだけ小さなサークルにとどめたいというエリザベス女王の意向に沿ったものだ。国の借金が膨らむ中、王室といえども質素倹約に努めなければ国民の支持を失う。

バッキンガム宮殿の電灯を1つひとつ消して回るほどの倹約家であるエリザベス女王と、王室の伝統は大切にしつつできるだけ市民目線に寄り添いたいウィリアム王子の方向性は一致しているといえそうだ。

ダイアナの面影

セント・ジェームズ宮殿の王室礼拝堂は1840年にビクトリア女王とアルバート王子が結婚した場所として知られるが、王位継承者の洗礼式にはあまり使われていない。

にもかかわらずウィリアム王子とキャサリン妃がこの場所を選んだのは、ダイアナ元妃が悲劇の交通事故死を遂げた後、ウィリアム、ヘンリー両王子が、国民葬の前日に母の遺体に最後のお別れを告げた思い出の場所だからだ。

ウィリアム王子とキャサリン妃はこれからも人生の節目には必ずどこかにダイアナ元妃の思い出をしのばせていくのだろう。

勝負服はサラ・バートン

キャサリン妃はジョージ王子のローブとおそろいのアイボリー色のドレスをエレガントに着こなしていた。ウェディングドレスをデザインしたアレクサンダー・マックイーンのブランドデザイナー、サラ・バートンさんの作品。

キャサリン妃の勝負服はやはりサラ・バートンさん作だった。

ヘンリー王子の恋人クレシダ・ボナスさんやピッパさんの恋人ニコ・ジャクソンさんも洗礼式に招待されるのでは関心が高まっていたが、招かれなかったようだ。

ということはヘンリー王子とクレシダさん、ピッパさんとニコさんのゴールインはまだ先の話なのかもしれない。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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