ロイヤルベビー誕生へ(4)16時間かかったウィリアム王子の誕生
ダイアナ元皇太子妃(故人)の結婚生活は最初から破綻していた。チャールズ皇太子が昔から好きで忘れられなかったカミラ夫人(当時はアンドルー・パーカー・ボウルズ氏の妻)との不倫関係を続けていたためだ。
ダイアナ元妃のはにかんだ微笑、健康的な若さ、おとぎ話のようなロイヤル・ウェディングは世界中を歓喜させ、メディアの関心を集めた。宮中での元妃は孤独だった。皇太子妃としての重責、なれないロイヤル・プロトコール(宮中の慣習)、メディアに追い掛け回されるプレッシャーがダイアナ元妃の心身をさいなんだ。
ダイアナ元妃は拒食症と過食症に苦しみ、ウィリアム王子の妊娠でひどいつわりに見舞われた。最悪だった。心身の限界を訴える元妃をチャールズ皇太子は冷たく突き放した。
ダイアナ元妃の胎内にいるお世継ぎを心配したエリザベス女王は、1973年から自分の主治医を務めるジョージ・ピンカー医師(故人)に元妃の出産を任せた。ピンカー医師はそれまでにアン王女の出産も担当し、結局、ウィリアム王子、ヘンリー王子らロイヤルベビー9人を取り上げた。
ピンカー医師は1978年、英国の生物学者ロバート・エドワーズ氏と外科医パトリック・ステプトー氏による体外受精児ルイーズ・ブラウンさんの誕生を全面的に支持した。ローマ・カトリックが「神の領域に踏み込む生命操作だ」と批判を強める中、ピンカー医師は「倫理上の問題は何一つない」と言い切った。
四面楚歌状態だったエドワーズ、ステプトー両氏にとって、エリザベス女王の主治医の援軍は何よりも心強かったに違いない。
ピンカー医師はセント・メアリー病院リンド病棟との関係が深かったことから、難産に備えてダイアナ元妃にリンド病棟で出産するよう勧めた。お世継ぎの誕生と母体の安全に万全を期すためだった。
陣痛促進剤の使用を求めるダイアナ元妃に対して、温厚なピンカー医師は礼儀正しく、「出産は自然の流れで起きるもので、そのように取り扱われなければなりません」と言い聞かせた。
リンド病棟での出産は困難を極めた。ダイアナ元妃の体温は劇的に急上昇した。胎児の安全が気遣われた。ピンカー医師は母子の安全を優先して緊急の帝王切開手術を検討したほどだ。医師団はダイアナ元妃の脊柱に鎮痛剤を注射した。元妃は鉗子や帝王切開の力を借りずにウィリアム王子を見事に生み落とした。
出産に要した時間は16時間。チャールズ皇太子は王子の誕生を喜んだが、ダイアナ元妃への愛はなかった。しかし、2人はリンド病棟の前でウィリアム王子を抱いて笑顔を浮かべてみせた。世界中がロイヤルベビーの誕生を祝福した。
そして、子育ての忙しさと興奮はしばしダイアナ元妃に摂食障害を忘れさせた。
ウィリアム王子はキャサリン妃に母ダイアナと同じ苦しみを味わわせないため、キャサリン妃の里帰りを許している。ウィリアム王子とキャサリン妃は昨年のクリスマスをミドルトン家で過ごし、批判の声も上がったが、気にする様子はない。
キャサリン妃は先週の金曜日、12日もバークシャー州の実家で家族との団欒を楽しんだようだ。
(つづく)