21日、ロンドンで行われたアカデミー監督賞受賞のアン・リー監督による米映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(日本では1月25日公開)の上映会に参加した。在英映画プロデューサーの吉崎道代さんに「いい映画ですよ」と誘われたからだ。

立体的な3D映画なので、子供の頃、「仮面の忍者赤影」の劇場版や怪獣映画で流行した赤色と青色のグラス入りの3Dメガネをかけて鑑賞したが、想像していた以上に映像は鮮明で、迫力満点だった。

映画化は不可能といわれていたカナダ人作家ヤン・マーテル氏の「パイの物語」に、台湾出身のリー監督が挑んだ作品は、息をのむほど幻想的で、生命の神秘を感じさせた。子供の頃、夢中になった英児童文学「ドリトル先生航海記」を思い出してしまった。

米SF映画「スター・ウォーズ」とは違って、リー監督は特撮技術を駆使して大自然を幻想的な映像で見事に描き切っている。

一時はテレビの登場で斜陽となった映画だが、才能が次々と開花し、特撮技術の革新でその表現力は無限に進化している。

ストーリーは、インドで動物園を経営していた一家が動物とともにカナダに移住を決め、日本の船会社の船で太平洋を航海中に嵐にあって遭難、少年パイが救難艇で獰猛なベンガルトラと227日間を過ごす。

ただ、日本人にとっていただけなかったのは、最後に出てくる船会社の日本人社員の描かれ方だ。少年パイとベンガルトラの壮大な旅が終わった後、日本人社員の生真面目で融通が利かない姿が観客を急速に現実に引き戻していく。滑稽というより、あまりにも日本人の急所を突いているように感じられて、肩身が狭くなった。

東日本大震災の後、国際原子力機関(IAEA)で日本の評価を聞いたときと同じようにがっかりした。スイスの外交官は「日本人は毎回、毎回、読み切れないほど大量の書類を作ってきて、原発事故の被災地・日本で国際会議を、と要求する。でも、何を達成したいのか、さっぱりわからないんだ」と指摘した。

日本の映画界も、どんどん内向きになっていないか。台湾出身のリー監督の新作を見て、世界だけではなく、アジアからも取り残され始めた日本を実感させられた。

集団性、勤勉さ、律儀さ、正確さ、キメの細やかさで、かつて日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまで称賛されたが、冷戦が終結してグローバル化が進み、語学力、国際性、想像力、創造力、成長力で世界に太刀打ちできなくなっている。

(おわり)