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英帝国王冠や世界最大級のカット・ダイヤモンド展示のロンドン塔に泥棒入る

木村正人在英国際ジャーナリスト

エリザベス英女王の「帝国王冠」や無色透明のカット・ダイヤモンドとしては世界最大の「カリナン」(530・2カラット)が展示されているロンドンの観光名所ロンドン塔に泥棒が入った。英王室の秘宝は無事だったが、「ビーフ・イーター」の愛称で親しまれている衛兵は規則により持ち場を離れることができず、泥棒をまんまと取り逃がしてしまった。

ロンドン塔はテムズ川の北岸にある城郭で、11世紀から建造が始まった。もともとは王宮だったが、その後は国事犯の牢獄、処刑場として使われた。1988年に世界遺産の文化遺産として登録された。現在は英王室の宝飾、武器や拷問具などが展示されている。

英メディアによると、泥棒が入ったのは11月6日未明。11月5日の夜は、1605年にカトリック過激派のガイ・フォークスが英国王と議員の暗殺を謀ろうとした日にちなむ「ガイ・フォークス・ナイト」だった。泥棒はロンドン塔の正面玄関をよじ登って侵入、鉄製ケースなどからレストラン、会議室と跳ね橋の内カギを盗み出していた。

紺色に赤いラインの制服で知られる衛兵が泥棒に気づいたが、規則により持ち場を離れることができないため、警備室に無線で連絡しただけだった。ロンドン塔の責任者は、英王室の宝飾が盗まれる心配はなかったと話している。

現在、展示品の目玉となっている「帝国王冠」には2783個のダイヤモンド、227個の真珠、18個のサファイア、11個のエメラルド、5個のルビーがちりばめられている。

ロンドン塔に泥棒が入ったのは過去に1度だけ。1671年、聖職者の式服を来たアイルランドの山師、ブラッド連隊長が仲間3人を引き連れてロンドン塔に入り込んだ。仲間が衛兵を押さえている間に、ブラッド連隊長は王冠や宝珠、笏を抱えて逃げ出したが、門のところで取り押さえられた。当時のチャールズ2世はなぜかブラッド連隊長を赦免している。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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