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若者は軽薄。だから何? 映画『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』

木村浩嗣在スペイン・ジャーナリスト
おじさんおばさんはステレオタイプ大歓迎だが、当の若者は反発するのでは?

みんな絶賛。なのに、面白くない作品がまた一つ。若者批判としても、ホラーとしても、サスペンスとしても物足りないのは、なぜ?

ジャンルは“嵐の一夜、豪邸、犯人探しもの”である。これだけではピンと来ない人も、以下の単語でお話が想像できるはずだ。

“パーティー、若者たち、通信障害、死体”……。

アガサ・クリスティの小説『そして誰もいなくなった』以来、使い古された設定である。

もちろん、どんなに使い古されたものでも滅茶苦茶、面白くすることができる。

例えば、ギャスパー・ノエの『CLIMAX クライマックス』のように。

見終わった後、頭がくらくらして目が回り、しかもお話に納得させられる、というドラッグのような酩酊感と、サスペンスと、“人間は怖い”という教訓を兼ね備えた名作もある。感覚を刺激されて、脳を掻き回されて、余韻が覚めたら心にズシンとくる。

※『CLIMAX クライマックス』のオフィシャルサイトはここ

だが、『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』はそうではない。なぜか?

まず、映像が暗過ぎる。

暗くて何が起こっているのか、誰が何をしているのかがよくわからない。最近の作品にはよくあることだが……。

チラっとだけ見せて衝撃映像をさらに衝撃的にするとか、隠すことで想像力を掻き立て謎を深めるとかの、映像的または物語的な理由抜きに、暗い。

単に、照明が不十分である。

暗けりゃホラーだろってわけではない。むしろ、白昼堂々と出て来る化け物の方が怖くて、そっちの作品に名作があったりする。『イット・フォローズ』のように。

※『イット・フォローズ』のオフィシャルサイトはここ

見せる、見せないで怖さは決まらない。

怖さの大部分は、お話で決まる。怖い話で想像させておいて、予想通りあるいは突然出て来るから怖い。チラ見せとか、一部見せとか、もったいぶっても全然構わないのだが、ホラーならこっちの怖いもの見たさにはきっちり応えてくれないと、欲求不満が溜まる。

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の1シーン
『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の1シーン

次に、謎解きに興味が湧かない。

謎解きに没頭するほど、私はこの若者たちのことを知らない。知らされないうちに、舞台は突然暗転、犯人探しがスタートする。

誰に暗い過去があるとか、誰と誰は親友同士だが実は仲が悪いとか、人間性と関係性を知らないと犯人探しはできない、というか興味を失い、“誰が死んでも俺には関係ない”となって物語に入っていけない。

謎解き前にもっと7人をよく見せてよ、と言いたい。

見せなかったのは、もしかすると“若い連中ってどうせこんなもんですよ”、“みんな、中身は同じですから、説明不要でしょ”ということなのかもしれない。

だとすると、次なる大問題が出てくる。

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の1シーン
『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の1シーン

若者批判がステレオタイプ過ぎる。

最近の若い奴ってどう思います?

“マイペースで、自己中心的で、自己顕示欲が強くて、人間関係が薄っぺらで、軽薄で、上っ面をなぞるだけで……”といったところが、おじさんたちの模範解答だろうか。

一言で要約してしまえば、“SNSでコミュニケーションをする連中なんてこんなもんだろ”ということである。

この、おじさんたちの意見、正解かもしれないし大外れの偏見かもしれないわけだが、問題はそういうステレオタイプの視点で、映画を作ってしまうことだ。

ステレオタイプゆえに新味はゼロ。創作物としてそれでいいのか?

軽薄ゆえに死ぬ。そんな上から目線の教訓でいいのか?

若者向けの作品なのだろうが、彼らはこんなステレオタイプで正しく自虐できたり、自らの滑稽さを健康的に笑ったりできるのだろうか?

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の1シーン
『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の1シーン

この作品は絶賛されている。

おじさんには特に若者批判が受けているようだ。だけど、それって自分たちのステレオタイプをなぞって自己満足しているだけでは?

私は面白くないが、みなさんには面白い(あるいはその逆)というのは映画ではよくあることだ。

まずは見てもらい、老若男女のみなさんのご意見をお聞きしたい。

※『CLIMAX クライマックス』は2018年シッチェス・ファンタスティック映画祭の最優秀作品賞を受賞した。未見の人はぜひ!

※写真提供はシッチェス映画祭

在スペイン・ジャーナリスト

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟のコーチライセンスを取得し少年チームを指導。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペイン・セビージャに拠点を移し特派員兼編集長に。15年7月編集長を辞しスペインサッカーを追いつつ、セビージャ市王者となった少年チームを率いる。サラマンカ大学映像コミュニケーション学部に聴講生として5年間在籍。趣味は映画(スペイン映画数百本鑑賞済み)、踊り(セビジャーナス)、おしゃべり、料理を通して人と深くつき合うこと。スペインのシッチェス映画祭とサン・セバスティアン映画祭を毎年取材

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