Yahoo!ニュース

女子北朝鮮代表は「サウジから日本に向かう」説…なでしこジャパンがいるジッダに本当に来る?

金明昱スポーツライター
なでしこジャパンとパリ五輪出場権をかけて戦う北朝鮮代表(写真:ロイター/アフロ)

「(サッカー女子朝鮮民主主義人民共和国代表は)サウジから日本に向かう」

 これは北朝鮮サッカー界と距離の近い信頼できる筋からの話だ。これが本当であれば、女子サッカーの北朝鮮代表は24日にサウジアラビアのジッダで行われるなでしこジャパンとのパリ五輪アジア最終予選の第1戦に挑み、そのあと日本(第2戦は28日)に向かうことになる。

 つまり、北朝鮮代表はサウジアラビア行きの航空機に乗り込んだものと思われる。予想できるルートは、平壌-北京-サウジアラビアか。

 いずれにしても北朝鮮代表がサウジアラビアに入り、なでしこジャパンと24日の試合準備をしている可能性は高く、北朝鮮代表選手たちが北京やサウジアラビアの空港で目撃されているかもしれない。

コロナ禍以降の国際大会の人員受け入れに壁?

 ただ、それにしても日本と北朝鮮の第1戦の場所がこれほど二転三転するとは思ってもいなかった。本来は平壌で開催する予定だったが、コロナ禍以降で相手を迎え入れての国際試合の開催はおそらく初めてだろう。受け入れ態勢がスムーズに進むのかは、個人的に懸念していた部分だ。

 W杯アジア予選は公平にホーム&アウェーで試合が行われることが望ましいが、自国で試合ができない北朝鮮にとっては、サウジアラビアでの戦いは時差や気候面を考えると完全に“アウェー”である。日本と北朝鮮の実力の比較の前に、どう考えても自分たちで不利な状況を作ってしまった感は否めない。

 個人的な想像でいうのであれば、おそらく北朝鮮サッカー協会とアジアサッカー連盟(AFC)は最後まで開催場所をギリギリまで協議していたはずで、候補地が定まらない状況にAFCが最終的にしびれを切らしたのではないかと思う。

 早期に開催場所や時間を確定するための準備をしておかなければ、こういう事態になるのではないかと思っていた。今回の事態に、一体誰が得したのだろうかと思えるほどの虚しさがある。

実は北朝鮮選手たちも翻弄されている?

 なでしこジャパンからすれば、とんだとばっちりを受けた形だ。チーム内に不満を漏らす人がいて当然。それでも、こうした事態を覚悟をしたうえで動いていることには、素直に拍手を送りたくなる。最終的に試合をすることが決まっているなら、そこへ準備をして勝つしかないからだ。プロは結果がすべての世界。だからこそ、文句を言ってもしょうがない、と受け入れられるのも日本の強さだと感じる。

 では、第1戦の会場を決めきれなかった北朝鮮がすべて悪なのか、という問題。北朝鮮選手たちも試合会場が決まらないことには、かなり翻弄されていたと想像できる。そもそも彼らに決定権はないからだ。

 監督や選手は国が指示する通りに動いているだけ。それに北朝鮮の選手たちも日本を自国に迎え入れるとなると、その後の動きも一筋縄ではいかないことを理解している。もちろん平壌で試合をすることで、自分たちが有利な試合運びができるのは百も承知だが、一方で、何かあったとき“第3国”での試合も視野に入っていたはずだ。自分たちが不利な状況になる覚悟も想定内だったかもしれない。

 ただ、場所がどこになっても「サッカーの試合をする」ことに変わりはなく、勝つことに集中しているのは、日本も北朝鮮も同じ。どちらかと言えば、今回の件で「翻弄された」と言われるなでしこジャパンだが、”不気味”と言われる北朝鮮に入って試合をしなくてよくなったことは、ある意味、ラッキーだったと言えるのではないか。

 28日が日本のホームと考えると北朝鮮にとっては、24日の第1戦は負けられない戦いとなる。とにかく全力で来るだろう。その勢いは前半から見られると思うが、最初の15分は緊迫した展開が続くと予想している。

W杯アジア2次予選の北朝鮮戦はどうなるか…

 余談だが日本のメディア界隈でも「北朝鮮に行けるのは貴重な経験」と“楽しみ”にしている人もいた。2011年11月15日、平壌の金日成競技場で行われた日本対北朝鮮のW杯ブラジル大会アジア3次予選では、日本の記者が現地取材している実績もあり、ジャーナリストの立場からすれば、その目でかの国の現状を確かめておきたいと思うのが自然ではないだろうか。

 今回、そうした貴重な機会を共有できなかったのは残念だが、W杯アジア2次予選の日本対北朝鮮戦が待っている。筆者ももちろんその目で選手たちの勇姿を確かめるつもりなのだが……。

 ただ、こちらの動きも今後、どうなるか。今回のなでしこジャパンのようなゴタゴタだけはもう勘弁してもらいたい、というのが本音だ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

金明昱の最近の記事