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潜入ルポ!“ギャルファー”金田久美子はオフに一体どんなハードトレーニングをしているのか?

金明昱スポーツライター
トレーニングに励む金田久美子と元競泳選手の山田沙知子さん(写真・すべて筆者撮影)

 久しぶりの再会だったが、トレードマークの金髪とバッチリメイクに一ミリの“ブレ”も感じさせない。“ギャルファー”“キンクミ”の愛称で知られるプロゴルファーの金田久美子は、オフシーズンを基本的に地元の名古屋で過ごしていた。

 某日、午前10時から名古屋市内にある「IMPACT BODY NAGOYA」でトレーニングをすると聞き、現地取材のお願いをしていた。

 金田といえば、昨年の11年ぶりの優勝だろう。当時のシーンは今でも強く記憶に残っている。11年間の苦労が走馬灯のようによみがえり、人目をはばからず大泣きしていた。その姿は多くのゴルフファンの胸を打った。個人的には、これまで何度もインタビューしてきた選手ということもあり、こっちがもらい泣きしそうだった。

 勝てない日々が続いた時期は、インスタグラムで派手な格好や私生活を写真や動画で見た一部の人たちが、「練習しろ」や「遊んでばかりいる」など書き込みやメールを送ってくるという話もしていた。

「勝って見返してやりたいと思っていた」――。優勝会見でそう語っていたが、実に爽快だった。そうした11年ぶりのツアー2勝目の要因の一つには、トレーニングの効果があると感じていたこともあり、一度、その姿をこの目で見たいと思っていた。

元五輪競泳選手の山田沙知子さんが指導

「クミちゃんがここに来たのはちょうど1年前くらい。私もクミちゃんのことをよく知らなかったし、でも3月からシーズンが開幕するとあって、本当に何から始めるか大パニックで(笑)。手探りの状態から始めました」

短い時間のなかで集中してトレーニングに励む金田久美子
短い時間のなかで集中してトレーニングに励む金田久美子

 そう語るのは「IMPACT BODY NAGOYA」でインストラクターを務める山田沙知子さん。どこかで聞いたことがある名前と思ったら、2000年シドニー五輪、2004年アテネ五輪に出場した元競泳選手。800メートル自由形の日本新記録(8分23秒68、2004年4月23日)は、今も破られていない。

 つまり、山田さんと金田は出会って1年が経つ。トレーニング中の会話のやり取りを見ていると、数年の付き合いがあるように見えるほど。明るい2人の性格からか、相性の良さがうかがえた。一方、同ジムを立ち上げたのは元Jリーガー(名古屋グランパス、川崎フロンターレ、アビスパ福岡)の飯島寿久さんで、この日も金田の状態を共に確認していた。

 トレーニング時間は1時間。といってもみっちり1時間こなすわけではなく、「基本的にトレーニングは20分だけ」という。これはどういうことなのか。

「ここでは『EMSスーツ』を着用してトレーニングを行うのですが、例えば美容家電とかで表情筋を動かしたり、テレビCMでよく見るシックスパッドのように、低周波が皮膚を動かす効果があります。このスーツは中周波なので、皮膚の下にある筋肉を動かしてくれるので、20分のトレーニングで、2~3時間分の効果が得られるんです」

 まずは「ICAROS」というバランスボードを使って、体幹を鍛えるトレーニングを開始。台の上にスッと立った金田の体は、一切、ブレない。そこから山田さんの指示通りにスクワットから始まり、体幹とゴムチューブを使っての腕まわりのトレーニングを続けるが、いとも簡単にこなしていく。

「今年は上半身の強化が課題」

 実際に筆者もこの台の上に乗ってみたが、立つのも一苦労。体幹が弱く、バランスが悪いと台は安定しないので、いかに金田の体幹の強さとバランスがいいかが分かった。

安定させるのが難しいバランスボード。金田はいとも簡単に乗り、黙々とトレーニングをこなしていた。山田さんも「下半身と体幹の強さが確実についている」と話す
安定させるのが難しいバランスボード。金田はいとも簡単に乗り、黙々とトレーニングをこなしていた。山田さんも「下半身と体幹の強さが確実についている」と話す

 それ以外にもバランスボールを使っての体幹トレーニングや上半身の強化まで、短い時間だがどれもかなりハード。金田も時折、息が詰まりそうなほど辛そうな表情を見せるが、最後まできっちりとこなしていた。何セットも時間をかけてやることはないため、忙しいスケジュールの金田には、かなり効率がいいと感じた。

 山田さんも「短い時間で鍛えられるのが最大の特徴」と金田に合ったトレーニングと自負する。

「シーズンに入ると連戦が続くので、多くの時間が取れません。とはいえ、トレーニングは着替えなどの支度を入れても1時間以内で完結できますし、多くのセット数をやらなくてもいい。例えば30回2~3セットのところを10回2~3セットでいいので、集中してやれる。疲れていても『20分ならできる!』という考え方もできますから」

 さらに1年前と比較しても、着実に体つきは変わっていると太鼓判を押す。

「1年を通して下半身がしっかりしてきた分、今年は上半身強化に力を入れています。逆にいえば土台がしっかりできたので、次はスイングのパワーが噛み合わなくなるかもしれない。腕の力が弱いと振り遅れる感じが出てくるので、肩甲骨まわりや広背筋を使えるように練習しています」

 五輪にも出場したトップアスリートの山田さんが言うのだから、今季の金田には期待してもいい。もっとも、トレーニングの効果については金田が一番、変化を感じているところでもある。

上半身と腕まわりの強化。「できないことがどんどんできるようになってきた」という金田
上半身と腕まわりの強化。「できないことがどんどんできるようになってきた」という金田

「体重が増え、2年前のズボンがはけない」

「体重が増えて今は54.4キロくらい。3年前にものすごく痩せたときがあったのですが、そのときは47キロくらいでした…。いつもは平均で51キロを保っている状態だったのですが、夏になるとなかなかご飯が食べられなかったりして、40キロ台になるのが悩みでした。でも去年は一度も53キロを切らなかった。これは歳なのか、トレーニングの成果なのか分からないですけれど(笑)。でも筋肉量は確実に増えました。だって、2年前のズボンははけないんです(笑)」(金田)

 山田さんによれば、金田の下半身はお尻、太もも、腹筋はしっかりと筋力がついているという。2人のこんなやり取りがまた面白い。

山田さん:「今までうまく動かなくなった筋肉を鍛えてあげると、その4日後くらいにはちゃんと使えるようになっているから驚きます」

金田:「え、私、誰に会っても伸びしろしかないって言われてきたんです。15年くらい言われているんですけれど、そんなに伸びないっていう。ダイヤの原石らしいです(笑)」

山田さん:「やっと磨き始めて、ようやく光りだした感じですよ(笑)」

 トレーニングを苦と思わないでいられる2人の軽妙なトークと和やかな雰囲気。それがまた金田にはぴったりなのではないかと思った。

習慣化されたマインドに大きな変化

 この過程で金田には大きな変化があった。それは習慣化されたマインドだ。

「トレーニングをちゃんと続ける習慣ができると、例えば忙しくてできない期間が続いたりしたら、自分が弱くなっている気がしてそわそわするんです。なのでいくら忙しくても、隙間の時間を探してトレーニングするようにしています。今は1週間、トレーニングをやらないと体が気持ち悪くなるんです。これはゴルフの練習と同じような感覚です」

ホッと一息つく時間の楽しい会話も金田には貴重な時間だ
ホッと一息つく時間の楽しい会話も金田には貴重な時間だ

 また、自宅に帰ってからのストレッチも毎日欠かせない日課になったという。

「アスリートなのにこんなこと言ったら恥ずかしいですが、昔はストレッチの大切さなんて分からず、体も硬かったので疲れるからやらなかった。でも毎日20分、ストレッチをやりだしてからは、ものすごく体が柔らかくなって、関節の可動域も広がってケガもしにくくなりました」。

 山田さんもそうした金田の意識の変化もあり、「さらに今シーズンが楽しみ」と笑顔を見せる。

「何か一つやるにしても、そういう習慣づけが大事で、それができると逆にやらないと気持ち悪くなってくる。クミちゃんが久しぶりにトレーニングきたときは、『筋肉痛が恋しくなりました』って言うくらい。できなかったことをやろうとする意志も強いので、今年も優勝を期待したいです」

 過度なプレッシャーは禁物だが、そんな期待に金田はきっと応えてくれると思う。今オフは精神的にとても落ち着いていて、充実しているのが、表情からうかがえた。

「毎年2月になると開幕前に不安が気持ちになったり、嫌な夢を見たりするのですが、今年のオフはゴルフの調子もいいし、体重も落ちていなくて、すごくメンタル的に落ち着いています。ここ数年では一番いい。地元の名古屋でこうして充実した練習やトレーニングができているので、いい開幕を迎えられそうです」

 33歳にして戦う姿勢はいまだに衰えていない。「むしろこれから」というような前向きな姿勢に、こちらが襟を正された。2023年は“笑顔の3勝目”をぜひともこの目で見届けたい。

同ジムを立ち上げた元Jリーガーの飯島寿久さん(左)と山田沙知子さん(右)。金田は「次に優勝してここに来たらクラッカーくらいは鳴らしてほしい(笑)」と笑顔を見せていた
同ジムを立ち上げた元Jリーガーの飯島寿久さん(左)と山田沙知子さん(右)。金田は「次に優勝してここに来たらクラッカーくらいは鳴らしてほしい(笑)」と笑顔を見せていた

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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