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日本でもプレーした韓国女子ゴルフの“氷の姫”キム・ジャヨンがいつの間にか“引退”していた理由

金明昱スポーツライター
現役引退を決めていたキム・ジャヨン(写真提供・MHN Sports)

 現在、何をしているのか気になる韓国女子プロゴルファーがいた。その名はキム・ジャヨン。容姿端麗で“フィールドの妖精”と呼ばれ、プレー中はほとんど笑顔を見せないことから“氷の姫”との愛称がつくほど注目されていた。

 彼女がブレイクしたのは見た目もそうだが、プロ入り後の活躍ぶりがファンを虜にした。2010年のルーキーイヤーに韓国女子ツアーでトップ10入り7回、賞金ランキング14位に入ると、11年に未来のスター候補としてスポットライトを浴びた。すると2012年にツアー初優勝を含む3勝で、一気にブレイクした。

 同年7月には“賞金ランキング1位の選手”として、日本女子ツアーの「サマンサタバサガールズコレクションレディス」に主催者推薦で出場。日本のメディアもこぞって彼女を取り上げた。17年には日本で開催された4ツアー対抗戦の「THE QUEENS(ザ・クイーンズ)」に韓国代表として出場している。

 17年も1勝するなど毎年、安定した結果を残していたのだが、20年シーズンは賞金ランキング66位でシードを喪失。プロ入り後、初めてのスランプで21年シーズンから「休養」を宣言していた。

 さらに1年後の2022年シーズンもキム・ジャヨンはツアーに姿を見せることなく、いつの間にか“消えた”存在になっていた。一体、どこで何をしているのか。

「選手生活に後悔はないと言えない」

 一般紙「韓国日報」がキム・ジャヨンにインタビュー取材を行い、近況を詳細に伝えている。単刀直入に引退したのかについて聞くと彼女はこう答えた。

「現役の時に比べて筋力も落ち、もう戻るのは簡単ではありません。引退したということです。努力もたくさんしましたが、結果につながらなくなり、疲れたんだと思います。その時、好きなゴルフをするのに『なぜこんなにも幸せじゃないんだろう』と感じました」

 休養宣言したあとは、特に引退を公にすることがなかったが、この取材でツアーから離れたことが明らかになった。ただ、少し後悔もあるようだった。

「選手生活に後悔はない、とは言えないようです。私はゴルフだけのために生きてきたのに、自分のすべてだったものを辞めて、違うことをするのは今も少し違和感があります」

 とはいえ、もう現役を続ける意思はない。これだけ一世を風靡した選手であれば、改めてファンに向けて引退会見があってもいいと感じるが、そうしたことも考えていないという。

「引退式をすると何か寂しくなってしまいそうで…。今後もその予定はありません。今は第2の人生を探している最中です。何かやりたいことが今は明確にあるわけではありませんが、ゴルフから完全に離れて、新たな人生を生きることもないと思います」

 少し話しが変わるが、日本女子ツアーの選手で似たような境遇で思い浮かぶのは元賞金女王の森田理香子。一度は大きく注目された選手だが、引退宣言はせず、ツアーから離れて第2の人生を歩み始めている。

 キム・ジャヨンもツアーから離れたあと、アマチュアのレッスンやゴルフのレッスン番組にも出演したが、自分には合わなかったという。ただ、「子どもたちにゴルフを教えるのは楽しい」とも語っており、これから取り組む仕事の一つになりそうだ。

 インタビューの最後に「誰かにいい影響を与える人になりたい」と語り、対外的な活動も増やしていくと話していた。韓国女子ゴルフ界では幅広く活躍できる選手の一人だけに、今後の活動に期待したいものだ。 

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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