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なぜ韓国勢は4人も出場しながら東京五輪女子ゴルフで一つもメダルを獲得できなかったのか?

金明昱スポーツライター
東京五輪女子ゴルフで韓国勢は連覇を逃した(写真:ロイター/アフロ)

 東京五輪の女子ゴルフで金メダルを獲得したのは、世界ランキング1位のネリー・コルダ(米国)だった。

 第2ラウンドからの首位を守り切り、通算17アンダーで五輪を初制覇した。

 一方、日本開催という地の利を生かして銀メダルを獲得したのが稲見萌寧。

 今季の日本ツアーで6勝という勢いそのままに、最終日は4連続バーディーで猛追。通算16アンダーで並んだニュージーランド代表のリディア・コをプレーオフで退けた。

 “意外”と言っていいのが、世界ランキング上位を席巻する韓国勢だった。

 世界ランキング2位のコ・ジンヨン、同3位のパク・インビ、同4位のキム・セヨン、同6位のキム・ヒョージュと、いずれか一人は表彰台に立つと思われていた。

 だが、コ・ジンヨンとキム・セヨンは9位タイ(通算10アンダー)、キム・ヒョージュは15位タイ(通算9アンダー)、前回大会リオ五輪金メダリストのパク・インビ(通算5アンダー)が23位タイで大会を終えた。

 それにしても、なぜメダルを獲れなかったのか。米ツアー21勝のパク・インビは試合後にこんなことを話していた。

「(最終日は)ティーイングエリアがうしろに位置していたので、長いクラブをたくさん使わなくてはならなかったのですが、パーセーブもたくさんでき、4日間の中では一番内容が良かった。ただ、結果に悔しさはあります」

米女子ツアー「韓米の2勢力ではなく今は7~8つ巴」

 さらに「近年はアジア系のパワーヒッターの選手たちが増え、パワフルなプレーに“食われ”ている。以前の米ツアーが韓国と米国の2つの勢力だったとすれば、今は7~8つ巴になっている」と、各国の選手たちの台頭を肌で感じていた。

 東京五輪で4位のインド代表のアディティ・アショクや9位タイのフィリピン代表の笹生優花など、米ツアーでも戦える実力を持った選手の台頭が、韓国勢を脅かしている。

 約1カ月前に長らく世界1位に君臨していたコ・ジンヨンも、ネリー・コルダにその座を奪われているが、“ゴルフ強国”と言われた状況も少しずつ変化していくのかもしれない。

 パクは連覇を逃したことについては悔やみつつも、「次の五輪はないと思います。五輪という舞台は一度は経験したほうがいい場所だと思う。2024年パリ五輪も韓国の選手が4人出場できるのを期待しています」と後輩たちにメダル獲得を託した。

 コ・ジンヨンは「最も高い場所に“太極旗”を上げることができず残念です。次の五輪では必ずメダルを獲りたい」とパリ五輪を見据えている。

 女子ゴルフ韓国代表監督を務めた“韓国ゴルフ界のレジェンド”パク・セリは「五輪は金・銀・銅の3つで順を決めるため、プレッシャーがあります。選手たちはメダルを抜きにして、ベストを尽くしました。メダルよりも重要な部分は、無事に試合を終えることでした。コロナ禍の中で緊張感を持ちながらプレーしました。選手たちに感謝の気持ちを伝えたいです」と笑顔を見せていた。

 メダル獲得に失敗に終わった韓国女子ゴルフだが、母国メディアには批判めいた論調は見られない。

 ゴルフはこのあともほぼ毎週ツアーが続くため、そこで勝てればいいという感覚があるのかもしれない。

 それでもパク・インビが「五輪は出場することが名誉」であるように、3年後のパリ五輪でも韓国勢は全力でメダルを獲りにかかることだろう。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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