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日本戦のキーマンは“神童”イ・ガンイン!?サッカー日韓戦に挑む韓国代表は本当に「2軍」なのか

金明昱スポーツライター
バレンシアでプレーするMFイ・ガンインの活躍が期待されている(写真:ロイター/アフロ)

 23日、横浜市内で練習を行った韓国代表。予定よりも10分ほど遅れて会場に到着した選手たちは、バスを降りるともちろん会話もせずに練習場へ直行した。

 来日した23人全員がそろって、ピッチに姿を見せると、楽しそうにボール回しを始めるなど、和やかな雰囲気を見せていた。

 その後、パウロ・ベント監督やコーチ陣が全体での練習を指揮。15分と短い練習公開だったが、真剣な表情でのウォーミングアップと軽快なステップを見ると、コンディションの良さがうかがえた。

 今回の来日メンバーは当初発表された24人から、最終的に23人となった。15日に大韓サッカー協会が開催したメンバー発表会見で入っていたFWファン・ヒチャン(ライプツィヒ)は、ドイツのザクセン州保健当局が定める新型コロナウイルスの隔離規定で不参加となり、MFソン・フンミン(トッテナム)、MFオム・ウォンサン(光州FC)、MFユン・ビッカラム(蔚山現代)はケガにより離脱。MFチュ・セジョン(ガンバ大阪)は新型コロナウイルスの陽性判定で招集が見送られた。

 5人が抜けて、代替招集は4人。いずれにしても大幅なメンバー変更でベストメンバーに程遠いのは間違いない。

 元々主力のソン・フンミンやファン・ヒチャンに加え、元ガンバ大阪のFWファン・ウィジョ(ボルドー)、MFイ・ジェソン(ホルシュタイン・キール)、MFファン・インボム(ルビン・カザン)、DFキム・ミンジェ(北京国安)などの海外組がいないことで、韓国内メディアは「事実上の2軍」と報じる始末だが、それは大げさな感じにも受け取れた。

海外組7名のうち“欧州組”は2名

 今回、来日したメンバーの中で、海外組はMFナム・テヒ、MFチョン・ウヨン(以上、アルサッド)、MFイ・ガンイン(バレンシア)、MFチョン・ウヨン(フライブルク)、DFキム・ヨングォン(ガンバ大阪)、GKキム・スンギュ(柏レイソル)、GKキム・ジンヒョン(セレッソ大阪)の7人。

 代表初招集のチョン・ウヨンはバイエルンのトップチームでのプレー経験があり、現在はドイツのフライブルクでプレーしており、今季3ゴールを決める好調ぶりだ。どのようなプレーを見せるのか楽しみな選手の一人でもある。

 そのほかはKリーグで実績と実力のあるメンバーなのは確かで、若きU-23五輪代表メンバーでもある元アビスパ福岡のDFウォン・ドゥジェ、イ・ドンジュン(以上、蔚山現代)、チョ・ヨンウク、ユン・ジョンギュ(以上、FCソウル)の4人はA代表へ招集がかかった選手たちだ。

 こうしてみると、意外と国際経験豊かな選手がそろっているばかりか、日本のサッカーを熟知している点も見逃せない。

 京都サンガFCやヴィッセル神戸でプレーしたMFチョン・ウヨンのほか、FC東京でプレーしたナ・サンホ(FCソウル)、代表チーム最年長のDFパク・チュホ(水原FC)も水戸ホーリーホックでプロデビューし、鹿島アントラーズとジュビロ磐田でプレーしている。

 特にパク・チュホは大韓サッカー協会の韓国代表公式YouTubeでこう熱く話していた。

「札幌のとき(2011年8月10日、0-3敗)のホームの熱気がすごかった。熱気に押されずにプレーし、自分たちの雰囲気を作ることが重要だ。日本は技術がよく、速い選手が多い。しっかりマークして失点されなければ、自分たちにもチャンスが生まれ、雰囲気をつなげていける。個人ではなくチーム全体で序盤の雰囲気に勝たなくてはならない」

 25日の日韓戦は、当初観客は5000人に制限されていたが、1万人に増えたこともあり、完全なアウェー感に包まれることは誰もが覚悟している。ただ、雰囲気に呑み込まれることもなければ、「2軍」と言われるほど弱いこともないだろう。

 気になるのは、来日した22日から3日間の練習で、どれだけ戦術を固められるかだ。既存の主力がいないなか、ここはベント監督の手腕が問われるところでもある。

23日、横浜市内で練習した韓国代表(筆者撮影)
23日、横浜市内で練習した韓国代表(筆者撮影)

イ・ガンインの先発はあるか

 ただ、それでも韓国にとって、やはり日本には負けられない。

 そこで期待されているのが、スペインのバレンシアでプレーするイ・ガンインだ。

 10歳のときにバレンシアのカンテラに入団して“神童”と呼ばれ、プロ契約後はトップチームにまで上り詰めた。2019年のFIFAU-20ワールドカップ(W杯)で韓国を準優勝に導き、2ゴール4アシストでMVP(ゴールデンボール)を獲得したことで、さらに注目を浴びた。

 視野の広さ、キックの精度、パスの能力が高く、低い重心でボールを奪われないキープ力は代表の中でも屈指。しかも、今回のメンバーでは2人の“欧州組”中の1人であるため、韓国内でも期待値が高まっているというわけだ。

 ただ、ベント監督はそこまでイ・ガンインを重宝していない。2019年に初招集されてからの代表キャップは5試合と少なく、先発は2試合で、その後の3試合は途中交代での起用だ。

 スピードの遅さを指摘されることも多いが、創造性豊かなプレーはチームにアクセントをもたらすのは間違いない。

 韓国紙「ハンギョレ」も「“ベント号”韓日戦の解決士はイ・ガンイン」と見出しを打ち、「ファン・インボム、ユン・ビッカラム、チュ・セジョンが抜けて、貧弱になった中盤の責任を持たないといけない」と伝えている。

 スペインでの経験を代表で生かし、ベント監督からの信頼を勝ち取るチャンスでもある。チーム最年少のイ・ガンインが、日本戦で結果を残せば、もちろん韓国内は大いに盛り上がるのは間違いない。

 25日のスターティングメンバーがどうなるかは当日まで分からないが、イ・ガンインにはインパクトを残す活躍を期待したいものだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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