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イ・ボミら韓国人女子ゴルファー、日本の在留資格喪失の危機 入国拒否の長期化で試合出場も不可能に?

金明昱スポーツライター
イ・ボミのほか、アン・シネ、申ジエも日本在留資格の期限が迫っている(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 世界的に拡大している新型コロナウイルスの影響で、スポーツの試合も中止や延期に追い込まれている。

 日本のゴルフ界に目を向けると、女子ツアーは13戦連続中止となり、5月に予定していたすべての試合が消滅した。6月に開催できるのかもわからない中、新たな問題が浮上している。

 それは申ジエ、イ・ボミ、キム・ハヌルなど日本ツアーを主戦場とする韓国人選手の「在留資格」だ。外国人のプロスポーツ選手が日本でプレーするためには「興行ビザ」の取得が必要となる。

 韓国人女子プロゴルファーの場合、「興行ビザ」の在留資格取得後の有効期限は最大で1年。

 それは、女子ツアーは翌1年間の出場資格が、賞金ランキングによって決まるため、1年ごとに在留資格を更新しなければならない――というのが理由だという。いくら日本の滞在が長く、実績があるとしても3年や5年といった在留資格は付与されない。

 つまり、韓国人ゴルファーは毎年、入国管理局に出向いて、在留資格の更新をしなければならない。

 もちろん、更新自体は複雑な作業ではなく、一日あれば終わるので問題ない。だが、現在は新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、韓国から日本へ入国できず、ビザの更新ができないというのだ。

女子プロの「興行ビザ」は最長1年

 日本政府は4月3日から入国拒否の対象を追加。当然、韓国からも日本へ入国ができない状態が続いている。

 そんな中、韓国に滞在している韓国人プロフゴルファーたちの中で、「興行ビザ」の有効期限が迫るプレーヤーが数人いると関係者から聞いた。

 そこでどのような状況なのかを調べてみた。

 4月20日現在、日本ツアーを主戦場にする韓国女子プロゴルファーの中で、韓国に滞在している選手で確認できたのは、イ・ボミ、キム・ハヌル、申ジエ、アン・ソンジュ、ジョン・ジェウン、ペ・ヒギョン、ユン・チェヨン、イ・ミニョン、全美貞、アン・シネ。

 李知姫とペ・ソンウは日本で調整を続けている。

 この中で「興行ビザ」の有効期限が迫っているのが、アン・シネ(5月25日まで)、イ・ボミ(6月12日まで)、申ジエ(6月末ごろ)だった。

 そのほかの選手は韓国に帰国する前にビザの更新ができているほか、夏から秋ごろまでビザの有効期限が残っている選手もいた。

 現状で切迫しているのは、日本在留資格の期限切れが迫る3人の選手。いずれも日本ツアーの人気選手である。

入国禁止措置でビザの期限切れ迫る

 イ・ボミをマネジメントする延田グループはこう話す。

「6月12日までにイ・ボミ選手が日本に1日でも入ることができれば更新ができますが、このまま入国拒否が続けば、再申請をしなければなりません。再申請となるとビザ取得までに期間を要するのと、日本で2週間の自宅待機が予想されるので、仮に6月ごろから日本ツアーが始まるとイ・ボミ選手は試合に出られません」

 また、申ジエのマネジメント担当者も「6月末までに入国禁止が解除されればいいですが、このままでは日本ツアーに出られなくなる可能性もあります。とても悩ましいです」と語る。

 今シーズンは前半戦の出場資格を持つアン・シネ。試合の中止が続き、出られない状態に加えて、ビザの期限も残り1カ月と迫ってきている。

 アン・シネ所属の「NOW ON」担当者も「入国できないので、ビザの更新をしたくてもできません。このままでは再申請しなければならないので、試合が始まっても出られない可能性もあります」と困惑していた。

 日本ツアーの開幕を見越して、3月初旬に日本にいた韓国人選手だが、そのほとんどが「いつ収束するかわからず、試合の中止も続くので、一旦様子を見る」と言って帰国した。

 そもそも新型コロナの感染拡大は“不測の事態”で、現在の状況を予想すらできなかったのだから、ビザ更新の判断も難しかったのは間違いない。

イ・ボミは韓国の試合に出場予定

 日本ツアーの開催状況が見えないなか、韓国女子ツアーが先立ち5月14日から開幕する国内メジャー大会の「KLPGAチャンピオンシップ」を行うと発表した。

 一旦、中止を発表していたが、世界に先立ち開催することを決めた。プロスポーツの大会やイベントが中止に追い込まれる中、世界の注目が集まるのは必至だ。

 前述した選手の中で、同大会の出場資格があるのは、韓国ツアーの永久シードを持つ全美貞、申ジエ、アン・ソンジュ、李知姫、イ・ボミの5人。

 イ・ボミはこの試合に出る予定だが、「あくまでも日本で試合が開催されない限り、韓国の試合に出ることを考えている」(延田グループ)という。

 また、申ジエは出場辞退を決めている。「状況を見ながら、今後も慎重に落ち着いて考えていきたい」(マネジメント担当者)とのことで、伸び伸びとプレーできる状態ではないことも理解できる。

 今後、日本ツアーの開催を考えた場合、韓国人選手の在留資格の解決も必要になってくる。

 JLPGAの対応策や緊急を要する規定の決定なども重要になりそうだが、いずれにしても新型コロナの収束と日本ツアーの早期開催を願うばかりだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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