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韓国開催のACLでイニエスタ人気よりも衝撃だった“新型コロナ対策”はどんなものだったか

金明昱スポーツライター
ACLの水原三星戦に出場したヴィッセル神戸のMFイニエスタ(筆者撮影)

「なんか日本は平和ですよね」

 プレスルームで日本側関係者からそんな声が聞こえてくるほど、韓国の水原ワールドカップ競技場では新型コロナ対策は徹底的に行われていた。

 19日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の水原三星ブルーウィングス対ヴィッセル神戸戦。

 この試合は神戸のMFアンドレス・イニエスタが来韓するとあって、韓国のサッカーファンにとっても注目の一戦だった。実際、2月の寒い時期、平日にもかかわらず、1万7372人が集まった。

 イニエスタがボールを持つと、観客の目線が一気に集まり、巧みなボールタッチに「オー!」との声がスタジアムに響く。イニエスタがCKを蹴る瞬間にはスマホのカメラのライトが一気に光る場面も見られたほどだった。

入場前の新型コロナ対策でスタジアムの周辺に立てられていた看板(筆者撮影)
入場前の新型コロナ対策でスタジアムの周辺に立てられていた看板(筆者撮影)

 「スポータルコリア」のキム・ソンジン記者も「こんなにもイニエスタを見たいという人が多いことに少し驚いた」と言っていた。

 試合は90分に古橋亨梧が決勝弾を奪い、神戸が白星を手にした。

 いずれにしてもイニエスタの人気が高いことを確認しにきたのだが、それよりも驚いたのが、韓国側の徹底した新型コロナウイルス対策だった。

 それは日本のJリーグとの温度差を感じるものだった。

全員が問診票提出と体温チェック

 まず、筆者が試合前に取材パスのIDを受け取る前に書かされたのが問診票だ。

 そこにはこんな項目が並んでいた。

 名前、生年月日、韓国滞在期間、出発地または韓国入国前に滞在した国、韓国での電話番号、韓国での住所。

 その下には「中国や東南アジア地域を訪問したことがありますか」、「最近中国の湖北省を訪問した人と接したことがありますか」など、4つの質問があった。個人情報取り扱いに関する同意書もある。

スタジアムに入る前に記入した問診票(筆者撮影)
スタジアムに入る前に記入した問診票(筆者撮影)
一般客が問診票を記入するブース(筆者撮影)
一般客が問診票を記入するブース(筆者撮影)

 窓口にいた韓国人スタッフは「この用紙はメディアの方だけでなく、スタジアムに入る観客などすべての方に書いてもらっています」と話す。

 スタジアム周辺を歩いてみると、用紙記入場所に確かに人だかりができていた。みんなしっかりと書いている。

 この問診票を提出すると、次は体温チェックをされた。

「37.5度以上の発熱症状がある方は入場できません」とのことだった。そのあと、手に消毒液を噴射される。

 マスク着用は当然のことで、水原を応援するサポーターの“黒”マスク集団はなんとも異様な光景だった。

「日本は平和」は大げさか?

 一般客が入る入場口の前には「入場者予防 手続き案内」の看板が立てられており、みんながこれにしたがっていた。

 つまり観客の約1万7000人がこれらをすべて行ったと想像しただけでも、ものすごい労力である。

 それほど韓国が新型コロナに神経をとがらせているということがよく分かった。

入場前には体温チェックも必ず行われていた(筆者撮影)
入場前には体温チェックも必ず行われていた(筆者撮影)

 Jリーグは18日に実行委員会を開催したが、そこでリーグ全体での新型コロナウイルスに関する正式な対策ガイドラインは決定されなかったという。

 日本では韓国のような対策がスタジアムで行われていないことを考えると、「日本は平和」というのは決して大げさではないかもしれない。

 もちろん「韓国側が神経をとがらせすぎなのかもしれないのでは?」とも思ったが、いずれにしても新型コロナ対策はできることはやっておいたほうが、来場客は安心できるのは間違いない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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