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元賞金女王イ・ボミが昨年4月以来のトップ3発進!今オフに専属トレーナーが教えてくれていた“覚悟”

金明昱スポーツライター
昨年4月以来のトップ3発進を決めたイ・ボミ。復調の兆しが見え始めたか(写真:Nippon News/アフロ)

 それは今年2月のことだった。

 イ・ボミの専属トレーナーを務める渡邊吾児也(わたなべ・あるや)氏から、タイでの合宿の様子について、電話で話を聞いていた。

 ただ、その話が表に出ることはなかった。それはすべてイ・ボミの状態に配慮してのこと。

 合宿でトレーニングに集中している最中ということもあり、雑念を入れてしまっては支障をきたすかもしれないと思い、「いいときがきたら」とタイミングをうかがっていた。

 その日がようやくきた、と思った。

 今日から開幕した「宮里藍サントリーレディスオープン」でイ・ボミは、初日6バーディー、1ボギーの通算5アンダーで3位タイ発進を決めた。

 2018年4月の「サイバーエージェントレディス」以来のトップ3スタート。初日の成績とはいえ、3位タイで終えたことはイ・ボミにとっては大きな一歩に違いない。

昨年12月に語っていた「ゴルフを楽しみたい」

 昨年12月、イ・ボミを都内でロングインタビューをしたが、そのときは、「まだ諦めていない。ゴルフを純粋に楽しみたい」と話し、復活を期していた。

参照:【イ・ボミ独占告白】初めて味わった挫折、復活に向けて支えてくれた交際相手のこと…

 だが、今季開幕戦からも不調が続いた。11試合に出場して、予選落ちが4回。最高位が「ヨコハマタイヤゴルフトーナメント」の33位タイで、賞金ランキングは76位と低迷。

 今年もスイングに悪いイメージを残したまま、シーズンを戦っていた。

 かつての正確無比なショットでバーディーを量産する姿は、はるか昔の記憶になりかけていた。

 2015年、16年に2年連続賞金女王となり、17年は1勝にとどまったがシードは獲得。しかし、18年は未勝利のまま、賞金ランキングも83位でシード獲得に失敗した。2011年日本参戦から初めて味わう挫折だった。

 それに賞金女王の資格で与えられた3年シードも今年が最後。重圧がのしかかっていないと言えばウソになる。

 正直、どこかでイ・ボミの復活を諦めていたのかもしれない。それでもただ、周囲のスタッフたちもひたすら信じて待つしかなかった。

 トレーニングメニューを考え、イ・ボミに課題を課してきたトレーナーの渡邊氏も、今日の結果にはホッと胸をなでおろしているかもしれない。

「本気で自分と向き合っていた」

 ここで本題だ。トレーナーの渡邊吾児也(わたなべ・あるや)氏はシーズン開幕前、こんな話をしてくれていた。

「(ボミは)『今年が最後』という覚悟を持っていました。今年もそんな簡単な道のりではない、という話もしました。正直、また勝つというのは簡単なことではないので、相当な覚悟がいるという前提でスタートしました」

 そのあと、一呼吸おいてこう言った。

「本人はすごくがんばっていますよ」

 まだ諦めないという覚悟を決めて、イ・ボミは今シーズンに挑んでいると言い切っていた。

「すごく努力もしています。というのも感覚が上がってこなくて、去年は少し投げやりになっていた部分はあったと思うのですが、本気で自分と向き合う前提でここまでやってきました」

 話を聞くだけでも、相当な覚悟を持って今シーズンを戦っているのがわかる。

 それにイ・ボミにはこう伝えていたという。

「もういろんなことを考えても、昔と同じことはできないし、やろうとしないほうがいいと伝えていました。もちろん体重も違えば、可動域も違ってきます。年齢を重ねることで、体の状態も変わってきます。昔の理想に戻すのではなく、いいエッセンス、感覚につながるものを少しずつ抽出しながらスイングを作っていました」

 確かな答えが出ずとも、オフにこなしてきたトレーニングや練習が、ここにきてようやく形になってきたのかもしれない。

 ただ、今日がまだ初日ということで油断してはならない。自分のプレーに徹して明日の予選通過を目標にしたいところ。

 それでもイ・ボミにとっては、会心のラウンドだった。

 復活のきっかけになったと言っては大げさだが、ようやく笑顔も見られ、手ごたえを感じた一日だったに違いない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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