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「日本女子ツアーでプレーする韓国人は確実に減っていく」 イ・ボミら韓国選手の勢いがなくなったワケ

金明昱スポーツライター
本来の調子がまだ戻らないイ・ボミ(KLPGA提供)

 今季の日本女子プロゴルフツアーのメジャー初戦、「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」でツアー初優勝を手にしたのは、20歳の渋野日向子だった。

 今季から日本ツアーに参戦している韓国の実力者、ペ・ソンウ(昨年の韓国ツアー賞金ランキング2位)を振り切ったことで、最近の日本の若手の実力の高さを再確認できた試合だった。

 今年の女子ツアーのここまでの優勝者の顔ぶれを見てみると、“黄金世代”の河本結、勝みなみ、渋野日向子で3勝、比嘉真美子、鈴木愛、上田桃子、成田美寿々のベテラン勢が4勝、申ジエ(2勝)、李知姫の韓国勢が3勝となっている。

 こうみると、今年はバランスよく優勝者の顔ぶれが出そろっている。ただ、そこから見えてくるのは、明らかにイ・ボミやキム・ハヌルといった韓国勢の力が衰えはじめ、日本の若手の台頭が目覚ましいことだ。

 今季の女子ゴルフツアーは、開幕から日本選手の連勝が止まらなかった。

 ダイキンオーキッドレディスの比嘉真美子に始まり、ヤマハレディースオープン葛城の成田美寿々まで開幕5連勝を飾った。さらに黄金世代の台頭で、今年の女子ゴルフは盛り上がりを見せているが、韓国人選手の強さに陰りが見え始めている。

「日本選手の技術が向上している」

 昨年はアン・ソンジュが4度目の賞金女王を手にし、賞金ランキング2位に申ジエが入るなど、韓国人選手の勢いが感じられた年でもあった。

 申ジエが今年すでに2勝しているが、かつては、頻繁に上位に顔を出していたイ・ボミやキム・ハヌルの年齢も30歳を超え、体力的な部分での衰えが見え隠れする。

 韓国選手たちに勢いがなくなったように見える理由はなんなのか。

 そのことについて、韓国総合ニュースサイト「イーデイリー」ゴルフ担当記者のチュ・ヨンロ氏に聞いた。

「個人的な分析では、日本選手の技術が上がっていることが、大きな理由だと思います。日本人選手の特に若手の実力は、優勝者の顔ぶれを見ても昔よりも確実に上がっているのは事実でしょう。そこに韓国の選手もなかなか割って入れなくなったわけです」

 一方で、こんなことも話していた。

「韓国人選手の中でも申ジエ、アン・ソンジュ、イ・ボミ、キム・ハヌルは30代になり、全盛期を過ぎました。体力的にも精神的にも、徐々にその力が落ちてきているのもあります。その中で、20代の選手の技術が上がっている印象がありますね」

 韓国選手の力が衰えてきたところに、日本選手の若い力が押し入ってきているのは近年のツアーの結果を見ても明らかだろう。

韓国の20代女子選手は米ツアーを好む

 さらにチュ記者は、新たに日本ツアーに来る韓国人選手が減っている理由についても教えてくれた。

「韓国では30代の選手の後ろにいる20代前半の選手たちは、日本よりも米ツアーを好む傾向があります。現在、世界ランキング1位のコ・ジンヨンのほか、パク・ソンヒョン、チョン・インジ、イ・ジョンウンなどが米ツアーに進出して、すぐに結果を出しています。それと同時に、世界ランキングのポイントも大きく影響しています。五輪を狙える選手が、日本を選択していたのでは米ツアー選手に大きくポイントを離されてしまいますからね」

 また、日本女子ツアーのQT制限も大きな足かせになっているという。

「今季から日本のQT出場資格が会員資格を持つ者だけに制限されたことで、日本を避ける現象は確かに起きています。ただ、施行されたばかりで、少し見守る必要があります」

 韓国で実績のある20代はより魅力のある米ツアーへ進出する。さらに日本に行こうと考えていた20代後半から30代前半の実力者も、日本のQTが受けにくくなった。

「つまり、日本に行く韓国選手は少しずつ減っていきます。間違いありません」

 そう断言していたチュ記者の言葉には説得力があった。これまで人気をけん引してきた韓国人選手が日本ツアーからほとんどいなくなるのは、時間の問題かもしれない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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