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アジアカップで日本代表を苦しめた“ベトナムのメッシ”が新天地に韓国のKリーグを選んだ理由とは

金明昱スポーツライター
今季、韓国のKリーグでプレーするベトナム代表FWグエン・コン・フォン(写真:松尾/アフロスポーツ)

 アジアカップでは準々決勝で日本代表に0-1で敗れたが、堂々のベスト8入りを果たしたベトナム代表。

 これまでは格下と言われてきたベトナムだが、2018年1月に開催されたAFCU-23選手権で準優勝し、昨年12月のスズキカップも制すなど、近年メキメキと力をつけている。

 中でも “ベトナムのメッシ”の異名をとるFWグエン・コン・フォンがアジアカップで2得点と結果を残したが、彼が2019年シーズンの新天地に選んだのは韓国Kリーグの仁川ユナイテッドだった。

 ベトナム1部のホアン・アラン・ザライから1年の期限付き移籍だ。

 昨年の6月から仁川ユナイテッドで指揮を執るのが、ノルウェー出身のヨルン・アデルセン監督。同クラブに来る前は約2年間、北朝鮮代表監督を務めた。

 仁川ユナイテッドは昨季12チーム中、9位(10勝10分18敗)でシーズンを終えた。降格こそ免れたが、チーム力は盤石とは言い難く、戦力補強は必須だった。

 そこで白羽の矢が立ったのが、ベトナム代表のコン・フォンだった。

代表監督から韓国サッカーの素晴らしい部分学んだ

 入団会見が行われたのは2月14日だが、注目度はかなり高い。

 というのも、ベトナム代表の快進撃の陰には韓国出身のパク・ハンソ監督の存在が大きく、韓国メディアは彼の采配を“パク・ハンソ マジック”と称賛し、センセーショナルに報じた。

 そのため、韓国ではベトナムサッカーに対する認知度が高まり、親近感を持って伝えられるようになった。

 コン・フォンは会見で「仁川ユナイテッドでベストを尽くしたい。失望はさせない。ベトナム選手として、ベトナムサッカーを韓国に紹介し、伝えられる選手になれるようにベストを尽くしたい」と語っている。

 また、Kリーグを選んだ理由についてはこう語った。

「韓国サッカーが発展しているのはよく知っている。2年間で師匠であるパク・ハンソ監督を通して、韓国のサッカーについてよく知るようになった。パク監督から韓国サッカーの素晴らしい部分をたくさん学んだ。それに以前、(ルオン・スアン・)チュオンも仁川でプレーしたことがあるので、クラブについての情報をたくさん聞いた。素晴らしいクラブということを知り、ここに来ることを決めた」

 韓国のサッカーに慣れることについては、「そこまで心配はしていない」とも語っているが、やはり結果が求められているのは言うまでもない。

日本でのプレーも熱望していたが…

 コン・フォンは2016年にベトナム1部のホアン・アラン・ザライからJ2水戸ホーリーホックに期限付き移籍し、日本でのプレーも経験している。

 ただ、当時はケガなどでチャンスをものにできず、レギュラーに定着できなかった。

 いわば、日本では挫折を経験した立場だ。その後、母国に戻ったあとはフィジカル強化に努め、代表チームには欠かせない選手へと成長を遂げたが、海外で成功を収めることは彼の悲願かもしれない。

 実はアジアカップの日本戦の前日会見で「日本に戻るチャンスが欲しい」と語っている。

 日本でのプレーを熱望していたようだが、ベトナム代表率いるパク・ハンソ監督の強い後押しもあってKリーグ行きが実現したと聞いた。

 また、コン・フォンは「フィジカルが以前と比べ物にならないくらい向上した。守備力も高まった。狭いスペースでのプレーが持ち味」と語っている。

 ベトナム代表を一段階、レベルの高い所へ引き上げた功績が認められ、新たに韓国に足を踏み入れた。ベトナム代表の看板を背負っているコン・フォンには、背水の覚悟があるかもしれない。

 もしうまく行けば韓国で成功を収めたのち、Jリーグでリベンジを果たしたいという秘めた思いもあるだろう。

 Kリーグは3月1日に開幕する。タフな選手が多いKリーグの守備陣に対し、彼がどのようなプレーを見せてくれるのか楽しみにしたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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