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美人プロゴルファー香妻琴乃が熱く語った「初めてゴルフが好きになれたのはファンの支えがあったから」

金明昱スポーツライター
今年初めてツアーで初優勝した香妻琴乃(写真・本人提供)

 女子プロゴルフツアーの取材を始めてから、香妻琴乃とは長い付き合いになる。

 3年前の2015年はまだ23歳。美人プロとして注目の存在で、ツアーに本格参戦してから4年目を迎えていた。下部ツアーのステップ・アップ・ツアーで2勝(2013年、2014年)していたが、まだレギュラーツアーでの優勝はなかった。

 それこそまだ試合経験も浅く、中堅選手というにはまだ早い年齢だ。若気の至りか、強気な発言を耳にすることも多かった。

「目標は(レギュラー)ツアーで優勝すること。そこしか見ていません。シードが目標って、正直、あまり意味がないと思うんです」

 プロゴルファーにとって優勝することは当然の目標だ。だが、そこにたどり着けるのはほんの一握り。

 そのため、1年のシーズンで賞金ランキング50位までに与えられる“賞金シード”を獲得することも一つの大きな目標になる。試合に出る場所がなければ、プロゴルファーとしての職業をまっとうできないからだ。

 それでも、香妻はいつも“勝ち”にこだわっていた。

「変わらないといけない」

 2014年に賞金ランキング19位に入って、初シードを獲得した香妻は翌2015年も同48位で2年連続シード選手となった。

 だが、2016年は同52位でシードから陥落。大王製紙エリエールレディスで予選落ちし、シードを勝ち取れず、悔し涙を流していた姿は今でも忘れられない。

 昨年も今年も、シードを持っていなかったため、出場できる試合は限られていたが、主催者推薦(最大8試合)や今年はリランキングで出られる試合を確保しながら賞金を積み上げていった。

 今季はシーズン途中、5試合連続予選落ちのあと、CAT ladiesで6位タイに入ったが、トレーニングと本格的な減量に着手し、パッティングやメンタルの指導も初めて受けた。

 今までは自分の信じたことや信頼のおける人たちの話しか聞いて来なかった節があった。だが、去年あたりから「もう落ちるとこまで落ちたので」となりふり構ってはいられなかった。

 全米女子オープンの予選に参戦し、初めて海外メジャーを経験したことも、彼女にとっては大きなチャレンジだった。

 今年、マンシングウェアレディース東海クラシックでのツアー初優勝は、「自分から変わらないといけない」との覚悟と心境の変化がもたらしたのだと思う。

「ファンの励ましがあったから」

 最終戦のLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップが終了し、香妻と話す機会があった。今季を振り返ってもらうと、こう切り出した。

「ゴルフにおいては、ショットがいいというのはすごく自信になりました。5~7月ぐらいに一時、スイングが崩れたんですけど、それでも1年を通してすごくいい感じで振れたのは収穫です。逆にパットは1年通してずっと課題でした。来年もそこが大事になってくるんじゃないかなと思っています」

香妻は「ファンの励ましが本当に力になった」と何度も語っていた(写真・本人提供)
香妻は「ファンの励ましが本当に力になった」と何度も語っていた(写真・本人提供)

 香妻が続ける。

「すべてがパーフェクトじゃないと勝てないと思っていたのですが、完璧じゃなくてもいいと、心の余裕ができたのは大きかったです。勝った試合が100点満点だったかというとそうでもありません。ミスショットもたくさんありましたから。それでも勝てる時は勝てるんだと思えたことは大きかったです」

 優勝することで見える景色が大きく変わったのだろう。勝つことで自信が芽生え、精神的に余裕ができることで、プレーにも安定感が出るようになった。

 それに筆者が20代前半のころと比べて、香妻が大きく変わったと感じたのは、ファンに対しての姿勢だ。

 プロデビューした当初から現在も、ファンへのサインなどは笑顔を見せながら、きっちりとこなす選手だが、自分のプレーに納得がいかない時は笑顔になることはない。

 悔しいのだからそれは当然。どちらかといえば“クール”なイメージを持つ人も多いのではないだろうか。

 しかし、今年の香妻は違った。話を聞くたびに、支えてくれる人たちへの感謝の気持ちを述べることが多くなっていた。そこに心境の変化と心の温かさを感じずにはいられなかった。

「優勝できなくても踏ん張れたのは、やっぱりファンの方たちがずっと励ましてくれていたからです。私の家族ももちろんそうですし、スポンサーさんも成績が落ちても変わらずにサポートしてくれました。去年、サードQTに落ちたにも関わらず、励ましてくれる人たちがこんなにいるんだと思えたので、頑張らないといけないなという気持ちになりました。試合に出られることの喜びを感じさせてもらえたことも大きかったです」

「来年は2勝する」

 香妻は子供の頃「元々、ゴルフは好きじゃなくて仕方なくやっていた」と言う。今はどうなのだろうか。ゴルフは好きなのか、嫌いなのか。

「今は好きですね(笑)。やっぱりゴルフ場のロープの中でプレーするという事、トーナメントに出られるという事がすごく楽しい。それは試合に出られないというのが、どれだけ辛いことなのかを経験したからです。トーナメントに出られることが当たり前じゃなくて、試合に出られるのはすごくありがたいこと。私の一打一打で、一喜一憂してくれるファンの方たちがいるということも、プロゴルファーならではの喜びだと思います。優勝して色んな喜びを感じることができました」

 今はゴルフが楽しいときっぱりと言った。試合に出場できる喜びを再確認し、苦しみながら勝ち取った優勝。「来年は2勝したい」と笑顔を見せる。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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