Yahoo!ニュース

「舞いあがれ!」あらゆるピースがハマって報われる物語をつくった理由 制作統括ラストインタビュー

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK

最終回は視聴者の皆さんに明るい気持ちになってほしい

明日で最終回。朝ドラこと連続テレビ小説「舞いあがれ!」(NHK)は2020年から27年に年月が進み、ヒロイン舞(福原遥)が五島で空飛ぶクルマを操縦することになった。

制作統括の熊野律時チーフ・プロデューサーは感慨深そうに語る。

「ものづくりと空を飛ぶことがひとつに結びついて最後に舞が空を飛びます。最初に桑原さんと構想を練る段階で、最後は空を飛び立たせたいと話していました。いろいろなことがありながらも懸命に生きてきた舞と、人々とのつながりや絆を織り込みました。最後まで舞と仲間たちの物語を楽しんでほしいと思います」

ここに至るまでに、舞は飛行機から遠ざかったこともあり、舞いあがらないの? と視聴者はやきもきしたが、熊野CPは「必ず飛ぶ」と言い続け、その言葉が明日、本当になるのだ。わくわくする。

「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK
「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK

第125回で、舞はこんねくとの仕事の傍ら、ABIKILUの執行役員になり、空飛ぶクルマかささぎを操縦することになり、それにはIWAKURA がネジを作って使用されている。貴司(赤楚衛二)もパリから帰って来て……。とすべてがうまくいった。喜ばしい展開だが、家族、友人、地域の人たちがこんなにも有機的に機能するのはうまくいき過ぎではないか。

――脚本をつくるうえで舞を無敵に描きすぎているというような議論はなかったのでしょうか?

熊野「舞はそれほど無敵というわけではないと思います。最初にやっていたことが順調にいったかというとそうではなく、いろいろやっていくなかでこういう形になったわけで。地道に生きていればいい瞬間がある、というふうに捉えてもらえればいいなと思って作ってきました。今回、空飛ぶクルマで五島を飛ぶという大きなターニングポイントを迎えたとはいえ、これからも人生は続いていきますし、ここで終わったわけじゃないんです。最終回で、桑原さんの書いた舞の最後のセリフが、すべてを物語っていると思います(※最終回オンエア後に追記します)。うまくいかない時期も長く、それでもいろいろなめぐり合わせがあって、空を飛ぶことができたが、この後も人生は続いていく。また逆風が吹くこともあるだろうということです。地道にやっていると、うまくいかないことが続いても、あるとき、いろいろなピースがハマって、ああ、やってきてよかったと思うことってありますよね。でもそれってずっと続くわけではない。それでもその時得た達成感は、自分を支えてくれるし、何かつらいことがあっても、一生懸命生きていればいいこともあるというサイクルを半年間かけて描いてきて、最終回は視聴者の皆さんに明るい気持ちになってほしいと考えています」

――桑原さんのセリフが最後まで響くのですね。

熊野「最終回の舞のセリフは、シンプルな言葉のなかに豊かな奥行きのある、未来へのイメージが湧いてくるすばらしいものです。これまでずっと、ばんば(祥子:高畑淳子)のセリフをはじめとして桑原さんの言葉選びのセンスには唸らされてきました。センスと簡単には言えない、すごく考え抜いたものと思いますが、広がりのある豊かさを感じさせてくれます」

――第124回で刈谷(高杉真宙)と荒金(鶴見辰吾)がコロナ禍に対して「戦後7年、飛行機づくりが禁止された」「その7年間のブランクがいまでも尾を引いている」と語るセリフにもさりげなく飛行機と日本の航空機産業の歴史が感じられて印象的でした。あれはどういう流れで取り入れたものでしょうか。

熊野「歴史的背景のひとつとして桑原さんが台本に書かれたものです。飛行機を作ることが大変だった歴史も含めて、自分たちは新しい空飛ぶクルマを実現し、時代を切り拓いていくのだという気概を感じることのできる刈谷らしいセリフだと思います」

刈谷の「未来と待ち合わせしている」というようなセリフもまさに、熊野CPが言う「広がりのある豊かさ」のあるものだった。

最終回には、五島ロケのシーンも数多く登場する。

熊野「地元の方たちが300人以上集まってくれて、福原さんはじめ、出演者のみなさんが感激していました。いろいろな人の思いが空飛ぶクルマを飛ばしていることが実感できる撮影現場になりました」

最終回、舞の離陸を心して見守りたい。舞いあがれ!

連続テレビ小説「舞いあがれ!」

総合:月~土 午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00 ※土曜は1週間の振り返り

BSプレミアム・BS4K:月~金 7:30〜7:45

出演: 福原遥、横山裕、赤楚衛二、山下美月、高杉真宙、山口紗弥加、鶴見辰吾、又吉直樹、長濱ねる/永作博美、高畑淳子

作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

木俣冬の最近の記事