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静岡新球団くふうハヤテの“挑戦”始まる。元DeNA倉本寿彦は「赤堀監督に早く1勝をプレゼントしたい」

菊田康彦フリーランスライター
開幕戦に敗れ、試合後のベンチ前で厳しい表情を浮かべる赤堀監督(右端、筆者撮影)

 挑戦により球界を、スポーツ界を、静岡県を、日本を熱くする──。「挑戦」をキーコンセプトに掲げ、今シーズンからプロ野球(NPB)の二軍、ウエスタン・リーグに参入した新球団・くふうハヤテベンチャーズ静岡。その“チャレンジ”が本格的にスタートした。

 3月29日にセ・パ両リーグ同時に幕開けする一軍よりも2週間早く、3月15日にウエスタン・リーグのレギュラーシーズンが開幕。くふうハヤテは本拠地のちゅ~るスタジアム清水で、オリックス・バファローズとの3連戦を行なった。

2点リードの9回に8失点で“悪夢”の逆転負け

 結果はほろ苦いものだった。15日の開幕戦はファームでの調整マウンドに上がったオリックスの左のエース、宮城大弥にほぼ完璧に抑え込まれ、投手陣も被安打16、与四球12の大乱調で1対9の完敗。続く16日の2戦目は2点リードで9回を迎えながら、一挙8点を失って4対10の逆転負けという“悪夢”を味わった。

 17日の3戦目も初回に1点を先取すると、直後に追いつかれるも先発の奥田域太(おくだ・かなた、22歳、星城大)がその後は点を与えず、1対1の同点のままゲームは終盤までもつれ込んだ。ところが後続が7回に2死から4点を失い、8回にも押し出し四球などで2点を献上。1対7で敗れて開幕3連敗を喫してしまった。

「結局はピッチャーがどれだけ抑えるか。(許した)ヒットも多いですけども、それよりもボール先行、四球がやはり多くなってしまってるので、その辺はホントにこれから1つでも2つでも3つでも少なくしていかないと、試合にならないんじゃないかなと思います」

 この3連戦を振り返ってそう話したのは静岡県出身で、現役時代は近鉄バファローズ(現在のオリックスの前身球団の1つ)の守護神として5度の最優秀救援投手に輝いた赤堀元之監督(53歳)である。

「粘り強くやってるので勝負にはなってるが…」

 何しろこの3連戦、赤堀監督が送り込んだ9人(のべ12人)の投手が与えた四死球は実に30個。無四球は2月の追加トライアウトで入団し、2試合で計3イニングを投げた平間凛太郎(29歳、前メキシカン・リーグ)のみだった。

「それなりにみんな粘り強くやってるので勝負にはなってると思うんですけども、やっぱりまだまだね、1つひとつのことを考えるとまだまだやらなきゃいけないんじゃないかなという部分はあります。やっぱりNPBだったらストライク先行とか、コントロールがいい部分はありますから、その辺はしっかり見習っていかなきゃいけないと思いますし、そうしないと上(一軍のある球団)には行けないっていうふうに思った方がいいんじゃないかと思ってます」(赤堀監督)

 一方、打線は3試合でいずれもリーグワーストの18安打、6得点。長打は開幕戦で富山太樹(とみやま・だいき、23歳、前BCリーグ栃木ゴールデン・ブレーブス)がオリックスの東晃平から打ったタイムリー二塁打のみと、パワー不足は否めない。それでも16日の2戦目は、4回に2本の適時打に内野ゴロ、さらにスクイズで4点をもぎ取り、長打に頼らずとも得点できるところを見せた。

「なかなか畳みかけて(点を)取ることが少ないですから。一番がフォアボールで出てから外国人の連打とか、福田が(タイムリーを)打ってくれるとか、1点欲しい時に内野ゴロを打つとか、そういう1つひとつのポイントがちゃんとそのイニングではできたなという感じがある」

 試合後に赤堀監督が話した「そういう1つひとつのポイント」で、2点目のタイムリーを放ったのが昨年まで千葉ロッテマリーンズでプレーしていた福田秀平(35歳)であり、ショートへのゴロで3点目の走者をかえしたのが元横浜DeNAベイスターズの倉本寿彦(33歳)だった。

「勝ちたい気持ちはあるし、選手全員そのつもりでグラウンドに立ってます」

 DeNA時代は正遊撃手として活躍し、古巣の社会人・日本新薬を経て再びNPBの一軍を目指すべく、くふうハヤテの一員となった倉本が言う。

「もちろん勝ちたい気持ちはあるし、選手全員そのつもりでグラウンドに立ってます。これだけ多くお客さんに入っていただいて、声援をいただいて、より一層気も引き締まるし身も引き締まりますし。(チームとして)戦えてる部分もありますけど、まだまだこれからなところも正直あるので、これから変わっていって、一歩ずつ階段を上がっていってもっと勝負できるようになればいいなと思います」

 コンディションを考慮してこの開幕3連戦は全て指名打者での起用となった倉本だが、15日の開幕戦で記念すべき球団初安打を記録すると、16日の第3打席ではファーストへのゴロに必死に走って一塁へヘッドスライディング。スタンドから「かっとばせー、見せろ男意気」というDeNA時代の応援歌も聞こえてくる中、17日の試合では3回に四球で出塁、8回にはセンター前ヒットと、はつらつとした姿を見せている。

「DHでも(試合に)出していただいてるんで、何とか1つ、最初の1つを勝てるようにとは思います。誰一人、負けていいとは思ってないと思いますし、何とか全員勝ちたいとチームとして思ってるんで。赤堀監督には選手がやりやすい雰囲気というか、空気感をつくっていただいてるんで、何とか早く1勝をプレゼントしたいなと思います」

 ”歴史的”初勝利に向け、くふうハヤテは今日、3月19日から福岡ソフトバンクホークスをちゅ~るスタに迎えて3連戦を行なう。課題はいくつもある。これからも簡単には勝てないかもしれない。だが、始まったばかりの「挑戦」はこの先も続いていく。

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フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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