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ヌートバーの侍ジャパン入りは百利あって一害無し!最新バイメカで築き上げた打撃が他選手に好影響?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
侍ジャパン入りが正式発表されたラーズ・ヌートバー選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【栗山監督がヌートバー選手の侍ジャパン入りを正式発表】

 侍ジャパンの栗山英樹監督が1月6日に記者会見を開き、3月に開催される第5回WBCに出場する侍ジャパンメンバーのうち12選手を先行して発表して以来、メディアもすっかりWBC報道に注力し始めたようだ。

 そして1月11日になって栗山監督がオンライン会見を実施し、年末から侍ジャパン入りが噂されていたカージナルスのラーズ・ヌートバー選手の正式招集を明らかにした。

 侍ジャパン史上初の日系人選手の侍ジャパン入りとあって、SNS上ではヌートバー選手の名前がトレンド入りするほど人々の関心を集めている。

【ファン投票で右翼手部門4位に入る若手有望選手】

 昨年末にある侍ジャパン関係者から話を聞かせてもらっていたのだが、栗山監督はヌートバー選手を今大会チームの主力選手の1人として構想し、先発中堅手としてかなりの期待をしているようだ。

 すでに各所で報じられているように、2021年6月にMLBデビューを飾ったばかりの若手選手ながら、ヌートバー選手はすでにMLBでもその守備力が高い評価を得ている。

 昨シーズンも右翼を中心にすべての守備位置を任され、それぞれのポジションで補殺を記録。シーズン全体の補殺数は8で、外野手部門でMLB11位タイに入っている。

 ファンの間でもヌートバー選手の人気は高く、現地時間の1月11日にMLBネットワークが発表した「ファンが選ぶ現時点での右翼手トップ10」ランキングで、1位アーロン・ジャッジ選手、2位ブライス・ハーパー選手、3位ムーキー・ベッツ選手に次いで、堂々4位にランクインしている。まさにMLBでも屈指の若手有望外野手といえる存在だ。

【データ上では打撃もMLBトップクラス】

 実はヌートバー選手は守備ばかりでなく、打撃においてもデータ上MLBトップクラスなのをご存知だろうか。

 通常の打撃成績だけをみれば、昨シーズンのヌートバー選手は、打率.228、14本塁打、40打点、OPS(出塁率+長打率).788と決して突出したものではない。だがMLB公式サイトで紹介している打球速度などの打撃データは、至って優秀なのだ。

 こちらに関しても、日米で少なくない人たちがSNS上でMLB公式サイトのヌートバー選手の打撃データのチャート図を紹介しているが、平均打球速度、最高打球速度、チェース率(ボールを追いかけない=フォームを崩さない)、四球率、アーム強度の5部門でMLBトップクラスなのだ(詳細は画像を確認して欲しい)。

昨シーズンのヌートバー選手の打撃データ(MLB公式サイトより抜粋)
昨シーズンのヌートバー選手の打撃データ(MLB公式サイトより抜粋)

 つまりヌートバー選手のパワーはMLBトップクラスであり、その打球は凄まじいものだということだ。

【今オフに最新バイメカ技術で打撃がさらに進化】

 そしてヌートバー選手の打撃は止まることなく、今オフさらに進化している。

 今オフのヌートバー選手は、大谷翔平選手が利用していることで日本でも有名になったトレーニング施設「ドライブライン」で、最新バイオメカニクスを駆使したトレーニングに励んでいた。

 同施設で打撃コーチを務めるアンドリュー・アイド氏が動画付きでツイート投稿したところによれば、昨オフに同施設でトレーニングした際の最高打球速度は103.5マイルだったのだが、今オフは109.2マイルまで上昇していると報告している。

 またアイド氏はカージナルスの地元TV局のインタビューに応じ、ヌートバー選手の打撃について以下のように説明している。

 「バイオメカニクスにより全身47箇所の動きを確認したところ、すべての箇所の動きが俊敏になっており、それによってスイングスピード、打球速度を向上できている」

 ちなみに昨シーズンのヌートバー選手の平均打球速度は91.7マイルでMLB26位(大谷選手は92.9マイルで同7位)に入っている。それがさらに進化しているというわけだ。

【MLB主流のトレーニング伝授で村上選手らに好影響】

 ヌートバー選手のみならず、今や多くのMLBスラッガーたちがバイオメカニクスを使ってフォーム改善に取り組んでいる。そうした背景が現在のMLBを支えているといっていい。

 ヌートバー選手が侍ジャパンに加わり、村上宗隆選手や牧秀悟選手ら若手選手たちと交流することによって彼らに大きな刺激を与えることになりそうだ。今後NPBでも、本格的なバイオメカニクス技術が導入される流れにまで発展していく可能性もあるかもしれない。

 とにかくヌートバー選手の侍ジャパン入りは、“百利あって一害無し”ではないだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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