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ホーム最終戦で目撃された寂しすぎる光景!大谷翔平だけでは埋められなかった地元ファンの空虚感

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
大谷選手が登板したマリナーズ戦ではかなりの空席が見られた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ホーム最終戦で見られた寂しすぎる光景】

 現地時間の9月26日に行われたエンジェルス対マリナーズ戦を、日本からTV観戦した人も多かったのではないだろうか。

 ベーブ・ルース選手以来103年ぶりとなる「2桁勝利+2桁本塁打」に王手がかかった大谷翔平選手が、今シーズン最後の登板になる可能性がある中で臨んだ23度目の登板だったからだ。

 しかもこれがホーム最終戦ということもあり、日本のファンも関心も高かったはずだ。

 ところが、だ。画面に映し出される光景を見て、逆に拍子抜けしなかっただろうか。空席ばかりが目立つ観客席を目の当たりにして、日本のメディアの騒ぎぶりとの格差に、何とも違和感を抱いたのは自分だけではなかったはずだ。

【大谷選手だけでは盛り上がりきれなかった地元ファン】

 実際のところ公式記録を見ても、当日の入場者数は2万2057人だった。4万5517人の収容力を誇るエンジェル・スタジアムの48.5%しか埋まっていなかったことになる。

 むしろ前日の試合の方が3万221人を集めており、現地のファンの間で、大谷選手の偉業がどれほど注目を集めていたのか疑わしくなってしまう。

 もちろん今シーズンの大谷選手が、将来にわたり語り継がれるような伝説的な活躍をしているのは疑いようのない事実だ。これまで本欄でも何度となく繰り返しているが、大谷選手のMVP受賞は間違いないところだ。

 にもかかわらず、今シーズンのエンジェルスが例年以上の盛り上がりを見せたかといえば、ホーム最終戦の惨状から想像できるように、答えはノーだろう。

 シーズン後半戦が始まる7月16日からエンジェルスはフルキャパシティのファンを受け入れるようになったのだが、当時の大谷選手はオールスター戦で史上初の二刀流を披露した直後で、快進撃の最中にいた。

 だが試合別観客動員数を見てみると、7月16日に4万880人のファンを集めたのがシーズン最多で、その後は4万人を突破することもなく、3万人を超えることも稀で、基本的に2万人前後で推移する状況だった。

【センセーションを起こした野茂英雄投手やイチロー選手との違い】

 これまでMLBに挑戦した日本人選手の中で、1995年の野茂英雄投手と2001年のイチロー選手は全米中から注目を集める一大センセーションを巻き起こしている。

 当時現場取材をしていた自分も、野茂投手が投げる度に、またイチロー選手が連日スーパープレーを披露する度に、球場を埋め尽くす地元ファンが彼らに興奮する姿を目撃してきた。

 観客動員という点で見れば、今シーズンの大谷選手は2人が起こした熱狂ぶりには程遠いと言わざるを得ない。

 では大谷選手と2選手とで何が違うかといえば、間違いなくチームだ。1995年のドジャースはロッキーズとの間で、シーズン終盤までもつれる熾烈な地区優勝争いをしていた。

 また2001年のマリナーズにしても、MLBタイ記録の116勝を挙げるなど、シーズンを通して快進撃を続けていた。まさにチーム全体が盛り上がっていたのだ。

【ファンが求める究極はチームの勝利】

 それとは裏腹に、今シーズンのエンジェルスは早々にポストシーズン争いから脱落してしまった感がある。

 チームの大黒柱であるマイク・トラウト選手が戦線離脱してしまったことが大きく影響したとはいえ、6月20日に7.5ゲーム差をつけられ地区4位になってからは、ずっとこの位置から抜け出せないままさらにゲーム差を広げられ、シーズンを終えようとしている。

 一方で同じ地ロサンゼルス地区を本拠にするドジャースは、ケガ人が続出しながらもジャイアンツと熾烈な地区優勝争いを続けている。もちろんファンも盛り上がりを見せ、シーズン後半戦のホーム試合で4万人を割った試合がわずか1回だけで、毎試合5万人前後(収容人員は5万6000人)を集めている。

 やはりファンが求めているのは、選手個人のパフォーマンス以上にチームの勝利ということなのだと思う。

【大谷選手「ヒリヒリするような9月を過ごしたい」】

 ただしコロナ禍前の2019年のエンジェルスは、やはりポストシーズン争いをしていたわけではないが、MLB5位にランクする平均入場者数3万7321人を記録しており、一概に比較するのは難しい。

 現時点でコロナ感染が完全に終息していたとしたならば、大谷選手の勇姿を見るために、もっとファンが球場に集まっていたかもしれない。だがチームが勝てない限り、やはり熱狂を巻き起こすのは難しかったのではないだろうか。

 結局マリナーズ戦で103年ぶりの偉業を達成できなかった大谷選手だが、試合後に発した彼の言葉が印象的だった。

 「もっともっと楽しいというか、ヒリヒリするような9月を過ごしたいです。クラブハウスの中もそうした会話で溢れるような9月になるのを願っていますし、来年以降はそうなるように頑張りたいと思っています。

 もちろんファンの人も好きですし、球団自体の雰囲気も好きではあるので…。ただそれ以上に勝ちたいという気持ち方が強いですし、プレーヤーとしてはその方が正しいんじゃないかなと思っています」

 これは、大谷選手のみならずエンジェスス選手たちの偽らざる気持ちではないだろうか。ファン同様に選手たちも、現状にフラシトレーションを感じているということだ。

 日本ハム時代に日本一を味わった大谷選手としても、ポストシーズン進出を目指してチーム一丸となって戦う高揚感を味わえない寂しさを感じているはずだ。そしてチームの勝利のために最大限に二刀流を発揮したいと考えているのではないか。

 すでに大谷選手の発言が波紋を広げているように、エンジェルスが現状を打開できない限り、彼がエンジェルスでのプレーに心から満足することはないのかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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