今季の大谷翔平を象徴するMLB最速度二塁打の1打席前に放った遊ゴロに秘められた凄さ

打撃好調が続く大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【今季MLB最速の打球速度を計測した大谷選手】

 打者・大谷翔平選手の勢いが止まらない。

 現地時間4月12日のロイヤルズ戦に「2番・DH」で先発し、今季初の猛打賞と3打点を稼ぐ活躍をみせ、チームの勝利に貢献している。

 特に日米のメディアが注目しているのが、7回2死二、三塁で迎えた第4打席だった。

 大谷選手が放ったライナー性の打球は、右翼フェンス寸前まで届く二塁打となり、2点の追加点をを加えることに成功しているのだが、この時の打球速度が、今シーズンMLB最速の119マイル(約192キロ)を計測しているのだ。

 MLB公式サイトによれば、追跡システム『Statcast(スタットキャスト)』が2015年に導入されて以降、打球速度が119マイルを超えた選手は、ジャンカルロ・スタントン選手、アーロン・ジャッジ選手、ゲイリー・サンチェス選手、ネルソン・クルーズ選手に次ぐ、史上5人目の快挙だという。

【下半身主導のスイングで威力増加】

 現在の大谷選手の好調ぶりに、ジョー・マドン監督も賞賛の言葉を惜しまない。

 「彼は日に日によくなっているし、完全にはまっているようだ。彼も自分自身に対していい感覚を持っていると思う。

 現在の彼は素晴らしいアスリートであり、彼ほど自信を持てている選手はいないだろう」

 大谷選手も今シーズンMLB最速を記録した二塁打について、昨シーズンには打てなかった打球だと説明している。

 「しっかり下半身で振らないと、ああいう打球は打てないと思うので、去年だった引っ張り切れていない打球だったと思います」

 左ヒザ手術の影響で下半身強化ができなかった昨シーズンとは違い、万全のコンディションで臨んでいる今シーズンだからこそ打てた二塁打だったというわけだ。

【今季の大谷選手の凄さを示した遊ゴロ】

 だが打者が評価されるのは、打球速度ではない。それは大谷選手も重々理解している。

 「ドライブ打球なので(打球速度が)出やすかったというのもあると思いますけど、もうちょっといい角度で上がってくれたらホームランにもなりますし、ベストだったのかなと思います。

 その分打球速度という面では落ちるかもしれませんけど、ベストはもうちょっと角度がある打球だったかなと思います」

 速い打球速度の打球を打つよりも、あの場面はホームランにするのがベストだと振り返る大谷選手。それは大谷選手の飽くなき向上心の裏返しでもあるだろう。

 だがMLBトップクラスの強い打球を打てている今シーズンの大谷選手が、相手チームにとって脅威であるのは間違いない。それが示された場面が、実は前述の二塁打ではなく、2死二、三塁で迎えた5回の第3打席だったように思う。

 この場面で大谷選手が放った打球は、ほぼ遊撃手ニッキー・ロペス選手の正面に飛ぶゴロだった。ところがロペス選手がこれを捕球できなかかっため、失策で追加点を奪うことに成功している。

【ドライブがかかった処理が難しいゴロに】

 ロペス選手は主に二塁を守ってきた、MLB在籍4年目のユーティリティ内野手なのだが、昨シーズンまでMLBの公式戦44試合に遊撃手で出場し、161の守備機会で失策は1度しか記録していなかった。

 そんなロペス選手が、正面に飛んできたゴロのバウンドに合わせられずに、グローブではなく利き手の右手に打球を当ててしまったのだ。

 改めて動画をチェックしてみると、ボールの上辺を捉えていた打球は間違いなくドライブがかかっており、ゴロはあまりバウンドせずに球速が落ちないままロペス選手の元まで転がっていたのが理解できた。

 つまり今シーズンの大谷選手は、打ち取られたゴロでさえも内野手にとって処理が難しい打球を放っているということになる。記録上は単なる失策だが、大谷選手だからこそ打てたゴロだったといっていいだろう。

 今後も相手チームの内野手を苦しめることになりそうだ。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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