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解任監督が最終監督賞投票で堂々の2位に! ホワイトソックスの監督人事は本当に正しかった?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
12年ぶりのポストシーズン進出を決めながら解任されたレック・レンテリア前監督(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【最優秀監督賞で2位に入ったレンテリア前監督】

 全米野球記者協会(BBWAA)は現地時間の11月10日、2020年シーズンの最優秀監督賞(Manager of The Year)を発表し、ナ・リーグはマーリンズのドン・メッティングリー監督、ア・リーグはレイズのケビン・キャッシュ監督がそれぞれ選出された。

 同賞の選出方法は、BBWAAに在籍する30人の記者投票で決定する。投票者は1位から3位までの3候補を投票でき、1位は5ポイント、2位は3ポイント、3位は1ポイントが与えられ、最高得点者が受賞者となる。

 マッティングリー監督は、1位票22、2位票8と全30記者から票を得て、総得点124ポイントを獲得。またキャッシュ監督は、1位票22、2位票5、3位票1を得て、総得点126ポイントを獲得している。

 投票結果についてはBBWAAの公式サイトで公表されているので、興味のある方はぜひチェックして欲しい。

 ちなみにア・リーグの投票結果をみると、ホワイトソックスから先月解任されたリック・レンテリア前監督が堂々の2位に入っている。

【解任直後からメディアから疑問の声が】

 レンテリア前監督は今回の投票で、1位票5、2位票9、3位票9を得て、総得点61を獲得しており、30人の投票者のうち5人が、今シーズンは彼が最も優れた監督だったと評価していることになる。

 レンテリア前監督は、2017年シーズンからホワイトソックスの指揮をとってきた。過去3シーズンは負け越しに終わっていたものの、今シーズンはシーズン中盤からツインズと地区首位争いを展開。最終的に35勝22敗で公式戦を終え、チームを12年ぶりのポストシーズンに導いていた。

 しかし地区シリーズでアスレチックスに1勝2敗で敗れシーズンが終了すると、10月12日にホワイトソックスから、両者合意の上での関係解消が発表された。米メディアは事実上の解任だと報じている。

 チームの説明によれば、レンテリア前監督は「試合を指揮することに長けておらず、特に試合終盤の投手起用が良くなった」ことを理由に挙げている。だが解任直後から米メディアからは「選手たちから愛され、尊敬されていた監督だった」とし、多くの疑問の声も出ていた。

【早くも味噌をつけた後任のラルーサ新監督】

 その後ホワイトソックスの監督人事は、スムーズに進行している。

 レンテリア前監督の退任発表からわずか17日後の10月29日に、MLB通算2728勝と3度のワールドシリーズ制覇を誇り、2014年には殿堂入りも果たしているトニー・ラルーサ氏の新監督就任を発表している。

 ラルーサ新監督は、33年間の監督人生をホワイトソックスからスタートしており、35年ぶりの同チーム復帰となる。ちなみに第1次監督時代は1979年から8年間で522勝510敗を記録し、1度の地区優勝も果たしている。

 だが最後に指揮をとったのはカージナルス監督時代の2011年のこと。すでに現場を離れて9年が経過し、当時とは戦術面を含めて試合の潮流が大きく変化しており、米メディアの間では就任発表当初から、76歳という年齢を含めラルーサ新監督が現在のスタイルに対応できるのか、疑問を呈する声が出ていた。

 それに加え、最近になってラルーサ新監督が今年2月にアリゾナ州で、飲酒運転の容疑で逮捕されていたことが発覚。ホワイトソックスから就任発表があった前日に、起訴されていた。

 ちなみにラルーサ新監督は2007年にもフロリダ州で、飲酒後に信号の側に車を停車し、そのまま車中で寝ているところを警察に発見され、有罪判決を受けている。

 米メディアによると、ホワイトソックスは、ラルーサ新監督が逮捕されていた事実をすでに認識していたことを明らかにした上で、今回の件でチームからの処分をする予定がないことを明確にしているという。

 就任早々、味噌をつけてしまったラルーサ新監督。果たして今回の監督人事は正しかったのだろうか。その答えは、来シーズンのラルーサ新監督の采配にかかっている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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