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不振が続くブルージェイズで菊池雄星が放出されるリスクが高まってしまう背景

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
好調ゆえにこのままではトレード最有力候補になりそうな菊池雄星投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【地区最下位に低迷する予想外のブルージェイズ】

 MLBは、シーズンが開幕してほぼ2ヶ月が経過した。そろそろ各チームの戦力状況が明確になってくる中で、開幕前の予想とは異なり善戦を続けるチームがあれば、逆に苦戦を強いられているチームもある。

 善戦しているチームとしては、データ専門サイト「Fan Graphs」で今シーズンは勝率5割以下予想ながら地区首位争いを演じているブルワーズやロイヤルズが挙げられるだろう。一方で苦戦しているチームは、今シーズンも安定的な戦いを期待されていたアストロズやレンジャーズが顕著で、今も勝率5割を割り込んでいる。

 また、ブルージェイズも苦戦を強いられているチームの一つだろう。前述サイトで今シーズンの予想勝利数は83.6としていたが、現在(5月23日時点)は23勝26敗でア・リーグ東地区最下位に沈み、同地区首位のヤンキースに10.5ゲームも引き離されている。

【自慢の強力打線が期待通りに機能せず】

 ブルージェイズが苦戦している原因は、強力だと目されていた打線が極度の不振に陥っている点だ。

 チーム打率は.232でMLB19位に止まり、チームOPSも.682で同20位に低迷。この影響でチーム得点数は191で同26位でしかない。

 ブルージェイズ打線の象徴的存在であり、2021年に大谷翔平選手と本塁打タイトルを争ったブラディミール・ゲレロJr.選手のOPSが.779に止まっているだけでなく、同じく主軸として期待されていたボー・ビシェット選手(同.653)とジョージ・スプリンガー選手(同.550)の2人が極度の不振に陥っている。

 ただ投手陣も、昨シーズンはMLB4位のチーム防御率(3.78)を誇っていたが、今シーズンはここまで4.23で同20位、また同25位の失点数(671)を記録しており、投打ともに噛み合っていない状況に陥っているといえる。

【ガウスマン投手「このままでは長くは一緒にいられない」】

 とはいえ、まだシーズンは110試合以上を残しているし、ワイルドカード争いという点ではまだ大きく引き離されているわけではない。ブルージェイズの潜在能力を考えれば、十分に巻き返しが期待できるだろう。

 だが選手の中からは、厳しい見方も出始めている。先発投手陣の大黒柱的な存在であるケビン・ガウスマン投手は、「現実的な話として、このまま悪いプレーが続けば我々はチームとして長くは一緒にいられないだろう」とし、7月30日のトレード期限までにチーム状態を改善しなければ、ブルージェイズが売手に回る可能性を示唆している。

 実際米メディアによれば、他チームのフロント陣の話として、ブルージェイズはすでにゲレロJr.選手とビシェット選手のトレードの可能性について話し始めているとしている。

【シーズン終了後にFAになる菊池投手もトレード有力候補】

 仮にブルージェイズが今年のトレード市場で売手に回った場合、上記の若手2選手だけでなく、複数の若手有望選手と交換できそうな主力選手たちを放出することになるだろう。

 その最有力候補になりそうなのが、菊池雄星投手だ。

 今シーズンの菊池投手は、打線の援護に恵まれず勝利数こそ2勝に止まっているが、防御率(2.64)、奪三振数(61)は堂々のチーム1位。また登板数10試合で並ぶ先発陣4人の中で、失点数(18)は最少で、投球イニング数(58.0)はホゼ・ベリオス投手(60.1)に次いで2位を誇っている。

 その安定ぶりはチーム随一といえ、間違いなく今シーズンの先発投手陣を牽引する立場になっている。戦力補強を目指すチームからすれば、計算できる貴重な先発左腕としてこれ以上最適な投手はいないだろう。

 しかも菊池投手は今シーズンが3年契約の最終年であり、ブルージェイズが契約延長をしない限り、シーズン終了後にFAになる存在だ。菊池投手がこのままの活躍を続ければ、来オフのFA市場ではトップFA選手の1人になる可能性が高く、大型契約で他チームに引き抜かれるリスクもある。

 ならばトレード期限までに若手有望選手と引き換えに菊池投手を放出する方が、チームとしてより有益になってくるわけだ。

 すべてはブルージェイズの今後の戦い方にかかっている。果たして彼らは現状を打開することができるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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