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12月22日それとも1月18日? 来シーズンの開幕日で揺れるNBAと日本にもたらされる悪影響

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
アダム・シルバー・コミッショナーは希望通り12月22日に開幕することができるのか(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【NBA選手会が今週中に投票を実施】

 新型コロナウイルスの影響で約5ヶ月間の活動休止を余儀なくされたNBAは、大幅なスケジュール変更と中立地による変則形式で8月からシーズンを再開し、レイカーズが10年ぶり通算17度目のNBA王者の座につき、10月11日に2019-20シーズンを終了した。

 シーズン終了から1ヶ月も経過していない中、早くも来シーズン実施で混乱が起きている。

 現在来シーズンの開幕日でNBAと選手会で合意できない状況が続いており、選手会は開幕が予定されている2つの候補日を選択するため、今週中に投票を行うことになった。スポーツ専門サイトの『the Score』が報じている。

【12月22日もしくは1月18日に】

 同サイトの記事は、『The Athletic』のシャムス・キャラニア記者の記事を元にしたもの。NBAは12月22日開幕で準備を進めているが、実現するためには選手会の承認が必要だ。だが選手会内では難色を示す選手がおり、1月18日前後の開幕を希望する声が上がっているという。

 NBAが主張する12月22日に開幕する場合、12月1日にトレーニングキャンプをスタートさせなければならず、すでに1ヶ月を切っている状況だ。選手会としても早急の決断が求められている一方で、NBAファイナルまで戦ったレイカーズやヒートの選手たちは、ほとんど休養期間がないまま新たなシーズンに突入しなければならない。

 そのため選手会としての意見をまとめるため、投票を実施することになったようだ。記事によれば、11月5日、もしくは6日に実施される予定だという。

【1月18日開幕なら選手は収入減に】

 NBAが12月22日開幕を目指している大きな理由の1つは、NBAにとってドル箱になっているクリスマスに公式戦を開催したいからだ。毎年高視聴率を記録し、高額の放映権料を得ることができるため、これを失うのはリーグとしても大きな損失になるためだ。

 また12月22日開幕の場合は、通常より10試合少ない72試合の公式戦を組むことができるが、1月18日開幕になると60試合に止めることが予想されている。それはつまり、選手の収入源に繋がることになる。

 選手会ではすでにミーティングを実施し、2つの開催日のメリット、デメリットについて説明を行っており、あとは選手個人の判断に委ねられ、最終的に投票で決することになるわけだ。

 ちなみに記事で紹介している、12月22日と1月18日の実施形式やスケジュールは以下のようになる。

(筆者作成)
(筆者作成)

【いずれにせよ間違いなく影響を受ける東京五輪】

 すでに本欄で報告しているように、1月18日に開幕した場合は、東京五輪とプレーオフ開催期間が完全にバッティングしてしまうため、NBAのスター選手で構成されるドリームチームの参加はほぼ不可能になってしまう。

 また12月22日に開幕したとしても、全日程が終了するのは東京五輪の開幕直前で、代表チームに選ばれた選手は休息することなく、東京五輪に臨まなければならず、体調次第で辞退者が続出する可能性がある。

 さらに米国以外の強豪国の代表チームも、主力選手をNBAに送り込んでおり、プレーオフに進出したチームに在籍する選手は、東京五輪に備えた代表チームの強化合宿にも参加できないケースも生じてくるため、万全の状態で五輪に臨めないチームも出てくるだろう。

 いずれにせよ東京五輪が影響を受けるのは必至の状況だが、できれば選手会の投票で12月22日開幕が決まれば、東京五輪とNBAのプレーオフがバッティングするという最悪の事態だけは避けることができる。

 まずは選手会の投票結果に、注目していくしかない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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