MLBの高い壁?! 袋小路に陥った菊池雄星が考えるべきこと
【被打率.284はMLB平均を大きく上回る】
マリナーズの菊池雄星投手がここ最近、明らかに厳しい投球を強いられている。その象徴的なシーンともいえるのが、8日のエンゼルス戦でトミー・ラステラ選手、マイク・トラウト選手、大谷翔平選手に打たれた3連発だったように思う。
現時点での菊池投手の被打率は.284で、MLB平均の.248を大きく上回っている。それでもこの数値はあくまでシーズンを通したもので、ここ5試合だけでみると.382まで跳ね上がってしまう。
さらに被長打率もここまで.489でこちらもMLB平均(.425)を上回り、ここ5試合に限ると.696という状態だ。完全にMLBのパワーに圧倒されているのが確認できる。
【効果的な球種、コースが見当たらず?】
菊池投手が苦しんでいるのはデータの上でも明らかだ。MLB公式サイトの姉妹サイトである『baseballsavant.mlb.com』が提供しているデータで確認してみたい。
まず球種別に被打率をチェックしてみると、速球が.313、スライダー.262、カーブ.268、チェンジアップ.143──となっている。チェンジアップは有効な球種のようだが、使用率はわずか2.3%に留まっており、菊池投手が積極的に投げている球種ではない。
つまり菊池投手の持ち球である速球、カーブ、スライダーに関しては、かなりの確率で相手打者に攻略されているということが理解できる。
この傾向は球種ばかりではなく、コースについても同様だ。
【抑えられるコースはごくわずか】
下記のチャートを見てほしい。菊池投手の被打率をコース別に表したものだが、被打率を1割台に抑えているコースは、13コースに分かれている中で3コースしか存在していない。
これは被打率に限ったことではない。同様に被長打率のコース別チャートを見ても、やはり前述の3コース以外では、とてつもない高い長打率(2コースが4割台で残りはすべて5割台以上)を許しているのだ。
さらに左右両打者の被打率を見ても、右打者が.287で左打者が.271と、左右関係なく打たれている。つまり現在の菊池投手はどの打者に対しても、「効果的な球種」と「効果的なコース」を見出せないでいるのだ。まさに“袋小路”状態といっていいだろう。
【MLB挑戦の日本人投手が痛感する2つの日米格差】
これは菊池投手に限ったことではなく、程度の差こそあれ、MLBに挑戦した日本人投手たちが皆体験してきた通過点だ。
これまで多くの日本人投手たちを取材してきた中で、彼らから確認できた日米格差は「下位打線といえどもNPBのように気が抜けない」であり、「ちょっとでも甘い球を投げれば誰でも本塁打(長打)を打ってくる」の2つだ。
こうした格差にやや圧倒されてしまうと、打たれないように細心の注意を払おうとするのは仕方がないことだ。だがそうした行為が、時として本来の投球を見失ってしまうことに繋がることもある。それが現在の菊池投手ではないだろうか。
【すべては原点回帰】
元々菊池投手は、精密な制球力を有している投手ではない。長打を恐れて細かい制球力を意識してしまうと、逆に積極的な投球ができなくなってしまうことになる。またシーズンを戦いながら、急激に制球力を改善するのはほぼ不可能な作業だ。
結局は自分ができることをしっかりやっていくしかない。つまりは自分本来の投球とは何なのかを確認し、それを遂行していくことだ。いわゆる原点回帰だ。
これから打者の調子は更に上がってくる。そこに立ち向かっていくには、菊池投手本来の投球ができなければ太刀打ちなどできない。時には技術云々よりも、気持ちの部分で自分を奮い立たせる必要に迫られる。
とにかくマウンド上で躍動する菊池投手の投球に期待するしかない。