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大混戦のナ・リーグは全日程終了も決着つかず 史上初のタイブレーク2試合同時開催へ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
チームがタイブレークに回ることが決まり三冠王達成のチャンスが残ったイエリチ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 MLBは現地30日、2018年シーズン公式戦の全日程が終了した(雨天順延になっていたパイレーツ対マーリンズ戦1試合が消化できなかったが、ポストシーズンに影響がないため中止が決定)。だが162試合を戦い終えても、雌雄を決することができなかった地区がある。最後まで大混戦が続いていたナ・リーグの中地区と西地区だ。

 最終的に中地区はカブスとブルワーズが95勝67敗で並び、西地区もドジャースとロッキーズが91勝71敗で並んで全日程を終了した。4チームはすでにポストシーズン進出が決定しているのだが、地区優勝チームとワイルドカード決定戦に回るチームを決めなければならず、タイブレークを実施せざるを得なくなったというわけだ。

 これまでMLBでは1946年にナ・リーグ覇者を決めるため(当時は地区分けはなく2つのリーグのみだった)、カージナルスとドジャースが史上初のタイブレークを戦ったのを皮切りに、昨シーズンまで14度のタイブレークが実施されてきた。だが今シーズンのように、同一シーズンにタイブレーク2試合が同時開催されるのは史上初めてのことだ。中地区のタイブレークはカブスの本拠地リグリー・フィールドで、西地区のタイブレークはドジャースの本拠地ドジャー・スタジアムでそれぞれ開催される。

 ちなみに中地区タイブレークの勝利チームは、両地区のタイブレーク敗戦チーム同志で戦うワイルドカード決定に勝ったチームと、また西地区タイブレークの勝利チームは東地区覇者のブレーブスと地区シリーズを戦うことになる。ということで、タイブレークに敗れたチームは実質2度のタイブレークを戦い、地区シリーズ進出を争うことになるわけだ。

 また今回のタイブレークは、思わぬ副産物をもたらすことになった。タイブレークはあくまで公式戦の扱いとなり、この4チームはシーズン“163試合目”を戦うことになるわけだ。もちろんタイブレークでの個人成績はそのまま公式戦記録として扱われる。

 前回本欄で報告していたように、ブルワーズのクリスチャン・イエリチ選手が81年ぶりのナ・リーグ三冠王誕生を目指しシーズン最終戦に臨んでいたのだが、残念ながら2打数無安打2四球に終わり、打点部門で首位を走るカブスのハビアー・バエス選手に追いつくことができなかった。さらにシーズン最終戦でロッキーズのノーラン・アレナド選手が2本塁打を記録。今シーズンの本塁打数を37本に伸ばし、イエリチ選手とマット・カーペンター選手を抜き単独トップに躍り出ている。

 しかしブルワーズはこうしてタイブレークを戦えることになり、イエリチ選手はもう一度三冠王を狙えるチャンスが巡ってきたのだ。バエス選手も30日のカージナルス戦で打点を挙げることができず、依然両者の差は2のまま。アレナド選手にも1本塁打で並ぶことができる。こちらも注目したいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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