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パッカーズ主力QBがファンに抗議活動参加を呼びかけ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ファンを交え更なる結束を呼びかけたアーロン・ロジャース選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 米国内に広がる人種問題に抗議するため試合前の国歌斉唱の際にひざまずいて国歌を聴く行為を行う選手が登場したことで、ドナルド・トランプ大統領から矢継ぎ早に猛烈な批判を受けることになったNFL。両者の対決姿勢が鮮明化する中で初めて行われた24日の公式戦は、これまで大統領を支持していたオーナーたちも加わり、抗議活動がリーグ全体に広がっていった。

 チームによっては国歌斉唱中グラウンドを離れ全員でロッカールームに待機する措置を講じたところもあったが、多くのチームがひざまずく、起立するに関係なく、選手、コーチ、スタッフ、オーナーたち全員が腕を組んで国歌に耳を傾け、リーグとしての結束力をアピールした。

 しかしトランプ大統領にひるむ様子はまったくない。相変わらずNFLを批判するツイートを次々に投稿し、26日にホワイトハウスで行われた会見でも以下のように発言している。

 「NFLばかりにかまけていたわけではないが、(24日に)起こったことは恥ずかしい限りだ。国、国旗、国歌を侮蔑する行為は許されない。自分は執務で忙しく、不当な行為を取り除くのに時間をかけるつもりはない」

 もちろんNFL側も大統領に屈するつもりはない。1921年にチームが創設され現在もリーグを代表する存在のパッカーズも、24日の試合でチーム全員が腕を組み国歌斉唱に臨んでいたのだが、長年チームの主力QBを担うアーロン・ロジャース選手がさらに結束力を高めるため、ファンの参加を呼びかけたのだ。26日にメディア対応したロジャース選手が話した内容について、ESPNのジェイソン・ワイルド記者がその全文をツイッターに投稿している。

 本欄ですべてを紹介するのは控えるが、現在NFL全体に広がっている抗議活動は、ファンから誤解を受けるような軍や兵士たちを軽視したものでは決してないと説明した上で、以下のようにファンにメッセージを送っている。

 「我々の行為は、平等であり、結束であり、愛を目的にしているものだ。そして我々が不安に感じている問題を一緒に話し合うことで、社会全体として成長していこうとしているのだ。我々は今後も結束と愛を訴え続ける。そして今週(次回の試合)はファンにも参加するよう呼びかけるつもりだ。そして多くの人たちに、我々は手を携えてともに前進していこうという姿勢を示したい」

 パッカーズの次戦は、フットボールの聖地とも謳われる本拠地スタジアム『ランボー・フィールド』で行われる。チームが拠点とするウィスコンシン州グリーンベイは人口10万人ほどの片田舎の街だが、パッカーズのシーズンチケットは何十年待ちというほど、全住民がパッカーズ・ファンとして知られている。

 スタジアムを埋め尽くす8万近いファンが、選手たちと一緒に腕を組んで国歌斉唱に臨む姿は想像しただけも圧巻だ。NFLはますます結束力を固めていくことになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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