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MLBにも本格的な“二刀流”選手が誕生へ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB公式サイトでもハンター・グリーン選手の入団を大きく報じている

今年のMLBドラフトが実施される前の5月26日に、ハンター・グリーン選手を紹介する記事をまとめさせてもらった。彼の詳細については同記事に目を通してもらうとして、とにかくグリーン選手は最速164キロを投げる投手としてでなく、バッティングに関してもドラフト上位指名級の評価を受ける逸材だった。

結局ドラフトでは全体の2番目(MLBのドラフトは完全ウエーバー制)でレッズが指名したのだが、晴れて7月7日に契約合意が発表された。契約金は17歳の高校生ながら、現行の契約金プール制度が2012年に施行されて以降最高額723万ドル(約8億2000万円)に達するものだった。そしてレッズはツイッターの公式アカウントで、以下のようにグリーン選手との契約合意を発表している。

読んでもらえばわかるように、グリーン選手を“投手兼遊撃手”と紹介しているのだ。もちろんこのツイートだけではプロでも本当に二刀流として起用していくのか確証を得ることはできない。だがそれを裏づけるように、スポーツ専門サイトの『The Score』のマイケル・ブラッドバーン記者が8日付けで、グリーン選手の今後の起用に関する記事を公開しているのだ。

同記事は、グリーン選手との契約合意に合わせ、レッズのディック・ウィリアムスGMが地元TV局のインタビューに応じた内容をまとめたもの。それによると同GMは、以下のように話している。

「我々は彼を投手だと見ている。まず今年はアーム・ストレングス(腕の強さ)をつけることに集中してもらい、来年は1年間投げられる状態にすることを目指している」

もちろんGMの説明通り、グリーン選手はあくまで先発投手として育成されることになる。だがGMの説明はさらに続く。

「その一方で彼に打席に立つチャンスも与えるだろう。自分の考えでは登板の合間にDHをやらせるつもりだ。ただ一番重要なことはプロ1年目から彼に無理をさせないことだ。なのでプロ1年目から遊撃手として守らせるのは求めすぎだろう」

GMの構想では、まず出だしは投手として調整させながらDHで打席にも立たせ、次第にプロ選手としてのルーティンが確立できた際には遊撃手としての起用も考えていることが理解できるだろう。

つまりグリーン選手はマイナーで、現在のような日本ハムの大谷翔平選手のような“先発投手兼DH”で出場を続け、将来的には遊撃も守る可能性があるということになるだろう。これが実現できれば、大谷投手をさらに上回る二刀流選手が誕生することになる。

とりあえずグリーン選手はキャンプ施設でトレーニングを行った後、ルーキーリーグに回ることになる。まずはグリーン選手の才能がどれ程のものなのか、注目が集まるところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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