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2017年ドラフトで注目を集める時速164キロを投げる米国版大谷翔平

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB公式サイトで特集記事が組まれるハンター・グリーン選手

グリーン選手は、昨年12月に発表されたMLB公式サイトの『Top 50 Draft Prospect list』(ドラフト有望選手トップ50)で堂々の1位にランクされるほど、以前から注目されていた選手だ。

カリフォルニア州のノートルダム高校に通う4年生で、すでに名門UCLAへの進学が内定している(日本と違ってドラフト指名されればプロ入りしても問題ない)。ポジションは投手と遊撃手の二刀流で、前述のトップ50リストの寸評でも投打ともに高い評価を受け、どちらでもドラフト上位指名の能力を備えているとしている。

なかでも注目されているのが投手としての才能だ。高校野球シーズンの開幕となった今年1月に行われた初登板で、なんと自己最高の102マイル(約164キロ)を記録し、関係者の度肝を抜いたのだ。日本の“元祖二刀流”大谷翔平選手も高校3年の夏に、高校生で初めて160キロを計測し話題を集めたが、グリーン選手は17歳で現在の大谷選手に近い球威を誇っている。

5月25日にアップされたMLB公式サイトの特集記事によれば、球速に「(ベンチに戻ってきた)自分をのぞき込んできた父が、102だと教えてくれたんだ。自分はまさに『本当に?あり得ないよ』って感じだったんだけど、父は『本当なんだ。クレージーだよ』と言っていたよ」と、当時の率直な心境を紹介している。

とはいえ、102マイルは決して偶然ではない。トップ50リストでも真っ直ぐの平均球速は97~101マイル(約156~163キロ)としているように、元々今でもMLBトップクラスの球威を誇っていた。しかもほとんど四球を与えないほど制球力もいいらしく、文句なしの“ダイヤモンドの原石”なのだ。

すでに米国の有力スポーツ誌『Sports Illustrated』で5月1日号の表紙を飾るなど、その注目度は増すばかり。ドラフト1位指名権はミネソタ・ツインズが保有しているのだが、すでにグリーン選手指名でほぼ固まっているとまで噂されている。もし高校生右腕投手が全体1位指名されるとなると、52年の歴史を誇るドラフト史上初の快挙となる。

近い将来MLB入りが有力視される大谷選手の出現で、MLBでも“二刀流”という言葉が広まっているのは間違いないが、まだまだその育成法が正当化されるまでには至っていない。たぶん特集記事を読む限り、仮にグリーン選手がMLB入りしても当面は投手として育成されることになるだろう。

あくまでチームの育成方針によるのだが、それこそ大谷選手が二刀流として最大限の力を発揮することで日本の常識を覆してしまったように、グリーン選手がMLBの常識を覆すような存在になれるような気がするのだが…。今後のグリーン選手の去就が気になるところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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