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黒田博樹や筒香嘉智らを指導したフィジカル強化コーチがバスケ男子日本代表スタッフに加わる

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
現役時代の黒田投手を指導する阿部勝彦氏(左)

Bリーグ元年を成功裡に終えることができ、国内で男子バスケットボールがにわかに盛り上がりをみせる中、更に人気を固定化するためにも重要になってくるのが、『AKATSUKI FIVE』男子日本代表の2020年東京五輪出場だろう。1976年のモントリオール五輪を最後に五輪から遠ざかっている男子代表にとって、母国開催の次回五輪出場は至上命題ともいえるものだ。

そんな男子代表が世界と渡り合えるよう、この4月から専任スポーツ・パフォーマンス・コーチとして選手のフィジカル強化を任せられた1人の男がいる。昨年3月まで米国屈指の有名トレーニング施設『EXOS(前Athletes Performance)』で専属コーチとして様々なアスリートを指導してきた阿部勝彦氏だ。担当したアスリートの中には黒田博樹投手、筒香嘉智選手、五十嵐亮太投手ら名だたる選手がいる通り、毎年オフには阿部氏のところに自主トレにやって来るプロ野球選手が後を絶たなかった。

今回日本代表スタッフ入りする契機となったのが、昨年9月に日本バスケット協会のスポーツ・パフォーマンス担当ディレクターに就任した佐藤晃一氏だった。同氏はNBAのミネソタ・ティンバーウルブズでコーチを務める前に阿部氏と同じ施設で働いていた過去があり、2人は旧知の知り合いだった。昨年10月に日本で再会した際に佐藤氏から男子代表スタッフ入りを打診され、熟考の末受諾したということだ。

「もちろん日本代表というかたちで仕事をさせて頂くにあたって責任を感じることはあります。現在の日本代表が置かれている状況がオリンピック出場権を得られていない状況なので、これからの国際対価はすべてオリンピックの出場権を獲得するための予選になってくるわけです。そういう意味でも1つも負けられない状態なので、責任は非常に重いと思っています」

佐藤氏はディレクターとして男女問わずすべてのカテゴリーの代表チームを統轄する一方で、阿部氏は男子フル代表をメインに担当することになる。それだけに本人も責任を痛感している。

これまで阿部氏はプロ野球選手の他にも、アイスホッケーの韓国代表チーム、カヤックの中国代表チームをはじめ様々な競技、チームを担当しており、バスケットに関してもNBAが毎年ドラフト指名有力候補を集めて行うショーケースの『NBA COMBINE』を担当するなど大学トップ選手の指導も行った実績を誇る。だが日本代表ではここまで本格的な始動まで着手できていないという。

NBA COMBINEでドラフト指名有力候補選手を指導する阿部氏(右)
NBA COMBINEでドラフト指名有力候補選手を指導する阿部氏(右)

「正直携わってまだ2、3ヶ月しか経っていないので、これまでのトレーニングはメンテナンス的なものばかりで強化という部分まではいかなかったんです。現在は6月の大会(東アジア選手権)が終わってから3週間のオフの状態です。7月から合宿が始まり代表監督(フリオ・ラマス新ヘッドコーチ)も7月から代わるので、そこから改めて新体制としてのチームづくりになってくるので、僕サイドもトレーニング指導がようやく地に足をつけて本格的な指導ができるかな、という感じです。

まだ(これまで指導してきたトップ大学選手と日本代表選手を)比較できない部分があります。これからそこに向けて世界レベルの選手に負けないようなフィジカルを上げていけるようにやっていきたいと思います。今は合宿に向けコーチと相談しながらプログラムを組んでいる最中です」

男子代表の合宿は7月3日にスタートし、8月8日に開幕するFIBA ASIAカップ2017出場への準備を整えていく。阿部氏は長期的な視野で選手たちのフィジカル強化を目指しながらも、わずか1ヶ月間で大会で結果を残すためのコンディショニングも整えていかねばならない。言うまでもないが、簡単な使命ではない。

「私の考えばかりではなく、監督、コーチ、境界の考えがうまく回ってくれればというのがあります。その中で自分が任されたところで責任を全うするのが自分の仕事だと思います。とにかくフル代表に関してはオリンピックにできることが課せられた課題なので、そこだけをフォーかくしてチームに尽くしていきたいです」

阿部氏の今後の活躍に期待したいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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