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知らないと損?「同じ宗派なのに準備が全然違う…」お盆で役に立つ知識3選

吉川美津子葬儀・お墓・終活コンサルタント/社会福祉士・介護福祉士
お盆の支度。地域によって、宗教・宗派によっても異なる(写真:アフロ)

今年もお盆の時期がやってきました。コロナ禍で迎える2度目のお盆。今年が新盆だという人は「病院に入院中は会うこともできなかった」「介護施設に入所していたが、許されたのはリモート面会のみ」というケースがほとんどではないでしょうか。

新型コロナで亡くなった多くの方は、最後の対面さえ叶うことなく火葬されました。そんな中で、特別な思いでお盆を迎える人も多いと思います。

地域の慣習や宗教・宗派で異なる

お盆は先祖や祖霊に思いを馳せる一大イベントです。もともと旧暦7月15日を中心に行われていたのですが、旧暦から新暦にこよみが切り替わって以来、東京では新暦の7月に、東京以外の多くの地域では8月に行われるようになりました。旧暦にお盆を行う沖縄のように、新暦とは少しずれる地域もあります。

祖霊をまつる魂祭と、仏教の盂蘭盆会や神道の要素が習合して、各地で盆おどりや祭りが実施されたり、各寺院では法要が行われています。

お盆は地域色の強い行事で、全国一律で語れるものではなく、「宗教・宗派は同じなのに、お互いの実家のお盆の準備が違う」ということも珍しくありません。

例えば、盆入りの日には、オガラなどで「迎え火」を焚き、その火を提灯に移して家に持ち帰ることによって先祖を迎えたりしますが、その迎え火を焚く場所も墓前、海、山、川など地域によって異なります。お盆の期間は先祖だけではなく無縁仏などの霊をまつるための餓鬼棚を軒下などに別に設ける家もあります。

墓地に一族が集まって宴会をするところもあれば、お盆だからといって特別に墓参をする習慣のない一帯もあります。

このように全国統一ルールはないのですが、盆月に入ると、先祖を迎えるための「盆棚(ぼんだな)」「精霊棚(しょうろうだな)」の準備をはじめるところは多いようです。

よく盆棚に置かれるキュウリの馬は、先祖の霊が馬に乗って一刻も早く戻ってきて欲しいという願いが込められたもの。ナスの牛は、帰るときは牛に乗ってゆっくりお帰りくださいという意味があるのですが、最近はそれらを模したものや小机に敷く「マコモ」等がお盆セット一式として販売されています。

白提灯は新盆の時に使用

亡くなってはじめて迎えるお盆は「新盆」「初盆」と言われ、通常のお盆とは違うおまつりをする慣習が全国で見られます。(地域によっては3年以内、7年以内を新盆とする場合もある)。亡くなってまもない故人は新仏(しんぼとけ、あらぼとけ、しんぶつ)、新精霊(あらしょうりょう)と言われ、先祖にあたる本仏より長く丁寧におまつりされる傾向があります。

お盆の時期が近づくと、仏壇・仏具店内には、色とりどりの美しい盆提灯が並び、店舗内が華やぎます。盆提灯は「道に迷わず、無事に帰ってくることができるように」という願いを込めて飾るもので、親戚が新盆を迎える家に贈ることもあります。最近はリビングに合うモダンな形やコンパクトなもの、また職人によって丹精込めて描かれた火袋など工芸品としての価値の高いものまで盆提灯の種類はバラエティーに富んでいます。

新盆の場合は、これとは別に、またはこれらと一緒に白紋天と言われる白い提灯を家族が準備する家も多いようです。火袋に透かし柄が入っているものもありますが、基本的には白木の口輪と和紙の火袋でできたシンプルなもの。

日本では白木製品は一度きり、塗製品は永きにわたって使用されることを表意し、使うシーンを区別しています。白木の位牌を使用するのは四十九日法要まで、その後仏壇におまつりするのは本位牌、というのがいい例でしょう。ほかにも結納品をのせる台は白木の片木盆(へぎぼん)を使用し、先方にそのまま差し上げるのが慣例となっているように、白木製品は使いまわしをすることを前提としていません。繊細な装飾や彫刻が施され、丁寧に塗り重ねられた漆製品が何世代にもわたって引き継がれているのとは対照的です。

「あの世から戻るのははじめてだから目印が必要だ」そんな思いで、本仏用とは違う目印が必要だったのでしょう。使用しない宗教・宗派もありますが、白紋天が新仏用の目印としてよく飾られるようになりました。

なお白紋天は一度しか使用しないため、使用後は処分することになります。「送り火でお焚き上げをする」「川に流す」などの慣習はあるものの、現代では難しいため自治体の方法にしたがって処分するのが現実的です。いきなり廃棄物として処分することに抵抗がある場合は、提灯の一部だけ送り火を入れてすぐに消し、丁寧に紙に包んで処分するという方もあります。

コロナ禍でのお盆はリモート法要もアリ

ウィズコロナ時代の新しい形として、法要をオンラインで行う寺院が増えています。2020年春頃、いち早く導入した寺院は奇異の目で見られることもありましたが、その風向きはわずか数か月で変わりました。遠方への移動や大人数で集まることが制限され、法要後の会食もままならない状況が続くと、オンラインもやむなしという風向きになりました。また、寺院だけではなくキリスト教の教会でもオンライン礼拝、オンラインミサを導入するところが増えました。神社でもオンライン御朱印、オンラインおみくじなど、宗教施設でのオンライン化の流れが加速しています。

「特に信仰心が厚いわけではないが、何もしないのは寂しい。四十九日法要もオンラインで実施したが、遠方に住む親戚も画面上で集まることができて良かった」と案外好評のようです。

新型コロナウイルスの感染者数が拡大する中で、今年は昨年以上にオンライン法要の実施を決めた寺院が増えているように感じます。

オンラインならではの良さもありますが、「やはりリアルも必要」と改めて実感する人も多く、宗教施設の中には、すでにアフターコロナに向けてオンラインとの共存を模索しているところもあるようです。

「菩提寺がオンラインに対応してくれるかわからない」という場合でも、緊急事態宣言下の地域もありますから、住職に相談してみてはいかがでしょうか。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

葬儀・お墓・終活コンサルタント/社会福祉士・介護福祉士

きっかわみつこ。約25年前より死の周辺や人生のエンディング関連の仕事に携わる。葬祭業者、仏壇墓石業者勤務を経て独立。終活&葬儀ビジネス研究所主宰。駿台トラベル&ホテル専門学校葬祭ビジネス学科運営、上智社会福祉専門学校介護福祉科非常勤講師などを歴任。終活・葬儀・お墓のコンサルティングや講演・セミナー等を行いながら、現役で福祉職としても従事。生と死の制度の隙間、業界の狭間を埋めていきたいと模索中。著書は「葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本」「お墓の大問題」「死後離婚」など。生き方、逝き方、活き方をテーマに現場目線を大切にした終活・葬儀情報を発信。メディア出演実績500本以上あり

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