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お台場舞台の「ラブライブ!」4月から2期放送 アニメで甦る「聖地」に期待

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
お台場たこ焼きミュージアムに貼られていた『虹ヶ咲』1年生組の等身大フィルム

 アニメが地方創生のモデルとなることが今や当たり前となり、数多くが地方を舞台にするようになっています。ただ一方で、近年では東京のある地域を舞台にして、実在する施設などと積極的にコラボする事例も増えてきています。その中の代表例と言えるのが、東京のお台場地区を舞台にした『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(『虹ヶ咲』)です。

 『虹ヶ咲』はテレビアニメ1期が2020年10月から12月にかけて放送。そして2期が22年4月2日から放送が開始されています。

『虹ヶ咲』2期のキービジュアル
『虹ヶ咲』2期のキービジュアル

『虹ヶ咲』とは

 『虹ヶ咲』は、2019年9月にリリースされたスマートフォンゲーム『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS』を原作とした作品群で、ゲームのほかにも音楽CDやライブイベント、テレビアニメ、漫画やドラマCDなど、多岐にわたるメディア展開をしています。

 初代の『ラブライブ!』は2013年から2度にわたりテレビアニメ放送され、これが社会的大ヒット。作中に登場するスクールアイドルグループ「μ’s」は、15年のNHK紅白歌合戦にも出場しました。『虹ヶ咲』は、この『ラブライブ!』と、静岡県沼津市を舞台にした『ラブライブ!サンシャイン!!』に続く作品になります。

 これまで「9人」というグループ単位に縛られていた作品の伝統を打破し、12人のスクールアイドルがそれぞれ基本ソロで活動する点、「ラブライブ!」という大会での優勝を目指す体育会系的な雰囲気ではなく、自分たちにしかできないイベント運営を目指す文科系的な雰囲気を前面に押し出していることから、幅広い独自のファン層を獲得しています。

 『虹ヶ咲』は2020年10月から12月にかけてテレビアニメ化がされ、丁寧な構成と、毎話のようにライブパートシーンが描かれているクォリティから高い評価を集めています。ブルーレイディスクの売上で見ても2020年放送のテレビアニメの中で2位となり、NHKでもこれまで複数回にわたり再放送されています。

お台場SKYツーリストインフォメーションに置かれていた主人公・高咲侑の等身大パネル(筆者撮影)
お台場SKYツーリストインフォメーションに置かれていた主人公・高咲侑の等身大パネル(筆者撮影)

アニメ化によりお台場で続々のコラボ

 『虹ヶ咲』は元々ゲームから始まったコンテンツで、一部のメンバーは2013年4月から続いているスマートフォンゲーム『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』にもさかのぼります。アニメ化する以前からゲーム中の背景などからファンが舞台を割り出し、早くも「聖地巡礼」する動きも見られました。

 20年10月にテレビアニメ化して以降は、お台場にある「ダイバーシティ東京」や「アクアシティお台場」、「ヴィーナスフォート」や「東京お台場 大江戸温泉物語」や「ヒルトン東京お台場」などといった商業施設や宿泊施設、「ゆりかもめ」、「りんかい線」などの公共交通機関と様々なコラボ企画を実施してきました。これまで一つのお台場の商業施設がある作品とコラボすることはありましたが、同時期に複数の商業施設で同時多発的にコラボするのは、あまり例がないことと言えそうです。

AnimeJapan 2022で催された『虹ヶ咲』のトークイベントの様子(バンダイナムコフィルムワークス提供)
AnimeJapan 2022で催された『虹ヶ咲』のトークイベントの様子(バンダイナムコフィルムワークス提供)

キャストが明かす2期の見どころ

 テレビアニメ化によってお台場地区とのコラボが本格的に始まった『虹ヶ咲』ですが、20年12月に1期のテレビアニメ放送が終わって以降も、断続的にコラボが実施されています。22年4月に2期の放送が開始されてからも、この動きが加速すると思われます。既にお台場に隣接する有明地区にある商業施設「有明ガーデン」でもコラボが始まっているほか、お台場にある「デックス東京ビーチ」でも2期放送に合わせてイベントが予定されています。

 4月2日の放送開始から1週間前にあたる3月26日、同じく有明にある展示施設・東京ビッグサイトで開かれたイベント「AnimeJapan 2022」で『虹ヶ咲』に出演するキャストが登壇し、2期放送を1週間前に控え、注目ポイントを語りました。

 登壇したキャストは、主人公・高咲侑役の矢野妃菜喜、上原歩夢役の大西亜玖璃、桜坂しずく役の前田佳織里、そして近江彼方役の鬼頭明里の4人です。

 2期の見どころについて、大西は「たくさんのスクールアイドル!」、前田は「新メンバー登場!!」、鬼頭は「アニメでも動く栞子ミアランジュ」とスケッチブックに書いて発表。ゲームでは既に13人の部員で活動しているもの、アニメでは現状の10人から3人の新メンバーがどのように加入するのかを注目ポイントにあげました。一方の矢野は、自ら演じる侑が、普通科から音楽科の転科試験を受けるところで1期が終了したことから、「転科試験の行方は?!」を掲げました。

 ちなみに、東京ビッグサイトは主人公たちが通う「虹ヶ咲学園」の校舎のモデルにもなっており、見方によっては、彼女たちは校内で自分たちの活動を報告しただけとも言えます。

3月27日で営業終了したヴィーナスフォートの教会広場。7話ではライブステージの舞台となった(筆者撮影)
3月27日で営業終了したヴィーナスフォートの教会広場。7話ではライブステージの舞台となった(筆者撮影)

現存しない舞台がどう描かれるか

 『虹ヶ咲』ではお台場や有明地区の数々の施設とコラボしていますが、1期の舞台として登場したものの、再開発などにより既に実在しない施設もあります。主なものとしては上述の「大江戸温泉物語」と「ヴィーナスフォート」です。「大江戸温泉物語」は2021年9月5日で閉館。ヴィーナスフォートも22年3月27日をもって営業を終了しました。

 リアルではこれらの施設は過去のものとなっていますが、アニメでもこの現実の動きに沿ってもう登場しないかというと、必ずそうなるとは限りません。実際に現地で撮影しないといけない実写のドラマや映画と異なり、アニメでは現地の資料さえ残っていれば、いくらでも舞台を再び創造することが可能だからです。

 ですので、筆者にとっての『虹ヶ咲』2期の見どころは、こうしたリアルでは既に過去のものとなってしまった風景がどのように甦るのかという点だと考えています。これはアニメだからこそなせる技でもあります。実際に4月2日に放送された2期第1話では、冒頭の作中PVでヴィーナスフォートが登場しました。

 一方で、リアルでは入れなかったけれども、新たに入れるようになった舞台もあります。お台場にある「潮風公園」です。潮風公園は作中で重要な舞台になっていたものの、現実には東京オリンピックの影響で長らく立ち入り禁止となっていました。ところがそれも終わり、22年4月1日からは舞台となっていた公園北側エリアが入れるようになりました。

 新型コロナウイルスが社会的に恐れる病気ではなくなりつつあり、「Go Toトラベルキャンペーン」や「県民割」など、観光の動きも本格的に再開しようとしています。東京に行きたくてもなかなか行けなかった人にとって、お台場が東京観光の端緒になればいいなと思います。

都内有数の観光地であるお台場(筆者撮影)
都内有数の観光地であるお台場(筆者撮影)

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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