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対馬・和多都美神社が鳥居再建CFで1500万円! 大成功なぜ 「ゴースト・オブ・ツシマ」効果は?

河村鳴紘サブカル専門ライター
和多都美神社のクラウドファンディングのページ

 長崎県対馬市の和多都美(わたづみ)神社が、台風10号の影響で崩壊した大鳥居の再建のためクラウドファンディング(CF)を11月27日から始めたところ、4日で目標の500万円を超えました。さらに1500万円に届きそうな勢いです。なぜ人気なのでしょうか。

◇目標の3倍の寄付集まる

 和多都美神社は、海幸山幸伝承と竜宮伝説で知られる、海の女神・豊玉姫を祭る古社で、鳥居が湾内にあります。時間によっては、鳥居が浮かぶような幻想的な光景が出現します。

 再建費用は全額で1500万円~2000万円を想定。神社の特性上海上での作業になり、さらに鳥居は島へチャーター便で輸送するため高額となるそうです。来夏に開かれる「古式大祭」(旧暦8月1日、2021年9月7日)までの竣工を目指す……としています。

【参考】対馬 和多都美神社の大鳥居再建プロジェクト(CAMPFIRE)

 CFは元々順調でしたが、11月30日にゲーム情報を扱うサイトにCFの記事が出ると12月1日午前5時までに目標額の500万円を突破するなど勢いがつきました。2日に1000万円を突破し、5日午前9時には四捨五入をすれば1500万円になるほどの寄付が集まっています。実に目標の3倍です。

 当初CFの目標金額は、再建費用全額の3分の1から4分の1を設定したわけですから驚きでしょう。ちなみに支援額が鳥居再建の費用を超えた場合は、境内建物や参道の修繕費として活用するそうです。

◇ゲームファンの支援ツイートも

 人気の理由ですが、神社はもともと対馬のシンボル的存在なので、地元や歴史ファンの支援もあるでしょう。とはいえゲームサイトに記事が出てからの急速に支援金が伸びた事実から、今年7月に発売されたゲーム「Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)」(PS4)の存在は大きいと言えます。

「ゴースト・オブ・ツシマ」のゲーム画面=SIE提供
「ゴースト・オブ・ツシマ」のゲーム画面=SIE提供

 「ゴースト・オブ・ツシマ」は鎌倉時代の「元寇」を題材にした和風アクションゲームです。対馬に侵攻した元の将軍を倒すため、武士の境井仁が民を救うため奮闘するという内容です。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の米国ゲーム開発子会社「サッカーパンチ・プロダクションズ」が制作しました。世界で500万本以上売れ、日本でもゲームの出来の良さが話題になりました。

【参考】ゴースト・オブ・ツシマ:米国発の侍ゲームが世界で人気 感じる“和の心”

 同作の開発にあたりクリエーターは対馬を訪れて取材をしています。ゲーム内には対馬を“再現”していますので、神社もゲームに登場します。11月21日に放送されたクイズ番組「日立 世界ふしぎ発見!」でも、対馬と共にゲームも大きく取り上げられたので、知っている人もいるのではないでしょうか。

 二つ目は、CFのリターン(支援者への報酬)でしょう。1万円以上の寄付をすると、石碑(金属板の可能性もあり)に名前を刻める特典があることです。同作には石碑(誉れの石碑)があり、ゲームファンの心をくすぐったのは間違いないでしょう。

 ゲームの主人公・境井仁や「冥人(くろうど)」などのワードを使い、寄付をしたと表明するツイートも見かけました。社寺仏閣の支援で名前を刻むというのは普通ですが、木の札などではなく石碑を選択肢に入れたところが「うまい」と思う次第です。

 最後は、CFのページの充実度です。元々ビジュアル映えする和多都美神社ですが、写真がふんだんに掲載されています。さらに解説が充実していますので、これまた支援希望者の心をくすぐるはずです。

 人気作のモデルになった地域に、愛着を持ったファンが訪れる「聖地巡礼」現象が知られています。今は新型コロナウイルスの感染拡大という脅威があるので、ゲームファンが対馬を訪れることは難しいかもしれませんが……。とはいえ「聖地巡礼」現象のポイントは、モデルとなった場所に愛着を持つわけで、こうした呼びかけにも反応するわけです。「ゴースト・オブ・ツシマ」は対馬にとって強力な“宣伝ツール”と言えそうですね。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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