ゴースト・オブ・ツシマ:米国発の侍ゲームが世界で人気 感じる“和の心”

「ゴースト・オブ・ツシマ」=SIE提供(記事内の画像全て)

 鎌倉時代の「元寇」を題材にした和風アクションゲーム「Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)」(PS4)の世界実売数が3日間で240万本を突破するなど人気を博しています。“和の心”を随所に感じる同作の魅力を紹介します。

◇黒澤作品の影響

 13世紀後半、モンゴル帝国の末裔(まつえい)である中国王朝「元」は、日本侵攻の過程で対馬に上陸。対馬の武士はわずかな手勢で戦いを挑みますが、元の将軍コトゥン・ハーンに敗北します。しかし、誇り高い武士の境井仁(さかい・じん)はかろうじて生き残り、民を守ろうと決意する……という内容です。恩義のあるおじを救うため、島の各地を転戦する場面からゲームが始まります。

 超本格派の和風ゲームですが、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の米国ゲーム開発子会社「サッカーパンチ・プロダクションズ」の制作で、黒澤明監督の作品に影響を受けたことを明言しています。SIEに問い合わせてみると、影響を受けた作品として、映画「七人の侍」や「用心棒」(黒澤監督)、「十三人の刺客」(三池崇史監督)を挙げています。映画のような雰囲気でゲームが楽しめる「黒澤モード」があり、黒澤プロダクションから許諾を得たそうです。それだけ力を入れたことがうかがえますし、“和の心”をひしひしと感じるところです。ですから映画ファンにも遊んでほしいといえるかもしれません。易しい難易度にすればゲーム初心者でも楽しめるでしょう。

◇誇りと実利 揺れ動く武士の心を表現

 ゲームをプレーすると、侍として正々堂々戦う「誇り」を説かれますが、同時に勝つために手段を選ばない「実利」の重要性も出てきます。その結果、武士としては卑怯ともいえる、背後から襲って相手の首を切る不意打ちもできます。ゲームでも、主人公が不意打ちを嫌がるようなせりふを口にするなど、揺れ動く心の動きが巧みに表現されているのですね。敵を頭上や背後から襲うのに慣れたころ、ストーリーでそのことをズバリと指摘されたりして、思わず背筋が伸びました。“和の心”へのこだわりを感じます。

島の探索だけでも一見の価値あり
島の探索だけでも一見の価値あり

 歴史好きとしてゾクゾクしたのは、冒頭のシーンです。モンゴル軍に名乗りをあげて一騎打ちを申し込みながら、敵将に火をつけられてひるみ、一撃で切られてしまう武士の姿です。名誉を重んじる武士の戦いの作法が、モンゴル軍には通用せずに命取りとなるわけで、価値観の違いを表現していました。日本の歴史をしっかり研究している証拠で「ここまでするのか」と驚かされました。

 またゲーム中には、歴史の教科書でおなじみの火薬兵器「てつはう」も使えます。爆音と閃光の効果は絶大で、ゲーム中でも実感できます。

◇中世対馬の探索に熱中

 同作では、メインストーリーが用意されていますが、脇道にそれて冒険してしまいます。島の景色も素晴らしく、馬で駆けまわる疾走感、自由度の高さがあるためですね。

島に散在する神社探しも魅力の一つ
島に散在する神社探しも魅力の一つ

 現在のゲームで、広大な世界を再現する「オープンワールド」は珍しくありませんが、中世の対馬というのが琴線に触れるのかもしれません。冒険というより馬に乗って旅行をしているような気分になるときもあります。

 島は敵もいますが、素朴な集落、絶壁にたたずむ神社、絶景の秘湯、隠されたアイテムなどもあり、寄り道に熱中してしまうのです。風がよそぐ草原、広がる棚田、うっそうと茂る森……、日本の古き良き時代の風景という感じで、“和の心”を感じずにはいられません。

 サブストーリーでも、各キャラクターの物語に加え、狂気じみた内容もあり、一つ一つが楽しめます。中には残酷な展開もあるのですが、それがリアリティーを持たせているのでしょう。島内をぐるっと探索するだけでも相当の時間がかかる上に、美しい風景を撮る「フォトモード」もあるので、時間がどんどん過ぎていきます。

 今後は、ゲームの舞台になった場所を訪れる“聖地巡礼”的な動きが、あるかもしれませんね。長崎県観光振興課も、ツイッターで情報発信をしているあたりもそつがありません。

 ゲームとして育成の要素も充実しています。能力を高めると「一騎討ち」や「闇討(やみうち)」で一気に3人まとめて仕留めたり、殺陣のような「見せる」戦い方もできます。弓で敵の頭を射抜いて一撃で仕留めたりもできます。ちなみに弓の的を狙う操作をオートにもできたりします。細かい配慮もうれしいところで、ここにも“和の心”を感じずにはいられません。

◇唯一の弱点は…

 3日間で実売数240万本という数ですが、先月発売された「The Last of Us Part 2(ラスト・オブ・アス パート2)」は同期間で400万本でしたから及びません。ただし「ラスト・オブ・アス パート2」は、前作が1700万本という大ヒット作の続編です。

 また出荷数なので参考に過ぎませんが、「ファイナルファンタジー7リメイク」は3日間で350万本でした。シリーズものに比べて、完全新規のソフトは、売り上げが伸び悩む傾向にあります。従って「ゴースト・オブ・ツシマ」の数字は見事と言えます。公式ツイッターでも、日本で予想以上の売れ行きでパッケージ版が品不足になっていると明かしています。

 同作の発売後ネットの感想を見て興味深い点は、日本のプレーヤーが同作の出来に違和感をほぼ抱いておらず、強く支持していることです。海外のクリエーターが日本をテーマにしたコンテンツを手掛けると、歴史に精通していない人でも「何か違う」と感じることも往々にしてあるのですが……。日本の協力があったにせよ、予想以上の「すさまじい」出来でした。もちろん、時代考証を突き詰めると、この考えに違う意見もあるようですが、いずれにせよ総合的に見るとプレーする価値のあるゲームの一つといえます。

【参考】「ゴーストオブツシマ」発売でネットがお祭り状態! 「敵の倒れ方が時代劇のそれで笑う」「想定していたレベルを超越している」など絶賛の嵐(ねとらぼ)

 米国の会社が手掛けたゲームながら“和の心”にあふれ、ネットで評価の高い同作ですが、唯一の「弱点」があります。CEROレーティング「Z」指定のゲームなので、「18歳以上のみ対象」となっており、年齢制限があることです。生々しいシーンがあるのは確かなので、こればかりは仕方のないところですが……。

 現実世界では、新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されていますが、18歳以上の人は、ぜひ中世の対馬に“タイムスリップ”して、侍の戦いを体験してください。

(C)2020 Sony Interactive Entertainment LLC.

ゲームを愛するものの、ゲームには愛されないヘタレなゲーマー。ゲーム好きが高じて、記者として兜倶楽部にも出入りし、決算やメーカーの各発表会、PS3の米国発表会、中古ゲーム訴訟、残虐ゲーム問題など約20年間ゲーム業界を中心に取材をする。合わせてアニメやマンガにも手を伸ばし、作品のモデルになった場所をファンが訪れる“聖地巡礼”現象も黎明期から現地に足を運ぶなどしている。マンガ大賞の選考員も担当しており、好きなジャンルはラブコメ、歴史もの。

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